2011年タイ洪水の日本企業へのインパクト
1. 使用データ:東証1部220社株価日次終値,起点日:2011年9月30日, 起点企業:精密機械会社
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2. 使用データ:東証1部220社株価日次終値,起点日:2011年9月30日, 起点企業:食品会社
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山口健二,白田由香利:「自然災害による経済的被害伝搬の可視化」,オペレーションズ・
マネジメント&ストラテジー学会(JOMSA)全国大会予稿集,2019年9月4日から6日,東京.
要旨:
自然災害によりサプライチェーンネットワークが分断されると多大な被害が発生する.2011年3月の東日本大震災,同年10月のタイのアユタヤ地域の洪水により日本企業は多大な被害を受けた.大規模な海外での自然災害はその被害の伝搬,拡散の状況を把握することが急務であるが,国内の災害に比較して状況把握はさらに困難となる.本論文では,こうした海外での大規模自然災害が日本企業へ与える影響を分析し可視化する手法を提案する.提案する手法では,日本企業の株価データをランダム行列理論によって,被害を受けた企業を抽出し類似パターンごとに分ける.タイ洪水の場合では,ハードディスク製造等の電子機器の他,飲食産業,紡績産業,金融産業,医療産業等,その業種は多岐に渡った.我々は東証上場全社のように網羅的なデータに対して分析を行い,日本企業全体の動きを時々刻々と表示してくれる可視化ツールを開発した.サプライチェーンネットワークの分断の影響は,オリジンとなる企業から被害が伝搬・拡散していく.しかし,企業の部品調達ネットワーク等の内部情報を入手することは難しい.そこで我々は代わりに株価データを用いて,株価の下落から企業間の関係を抽出することを試みた.オリジンとなる企業の株価の下落が時々刻々と関係企業の株価へ伝搬・拡散していく様子を可視化ツールで見ることができるようにした.平常時には,業種ごとに企業グループは安定した動きを見せるため,隠れた関係性の抽出は困難である.しかし,災害時にはそのグループ系列会社だけが株価を下げるなど,企業間の関係性が顕著になる.こうした企業の関係性の抽出が目的の1番目である.2番目の目的としては,被害規模及び回復期間の数値化がある.サプライチェーンが分断されてもバイパスを用意している企業は回復が早い.
企業の特性として,飲食関連企業の回復は一般的に,電子機器産業企業に比較して早いことも,本可視化により分かった.