東アジア海文明の歴史と環境(学習院大学・復旦大学・慶北大学校)

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第14回東アジア海文明フォーラム
2008年6月13日開催

  報告者:任大煕(慶北大学校師範大学教授)
  題目:「伝統中国における法律の特徴−その一:存留養親」

 「存留養親」とは、結審後、罪人に老人・子供等がいる場合、刑の軽減や処刑時期の延期などの措置がとられることを意味します。これは伝統中国独特の事例で、儒教の「孝」に基づく制度になります。任氏には唐代から清代に至るまでの事例を整理し、その変遷と特徴を論じていただきました。
 報告終了後、中国法制史上の問題を遊牧民の歴史や内陸アジア史との関わり、近代・現代の法制度との関わりから見た有意義な議論を展開できました。




第13回東アジア海文明フォーラム
写真 2008年5月20日開催

  報告者:菊池正浩(NHKエンタープライズ・プロデューサー)
  題目:「韓国新安沖・謎の沈船」

 菊池氏は1976年にNHKで放映されました「NHK特集 韓国新安沖・謎の沈没船」の撮影に関わられた経験を持ちます。当日報告では番組映像を流しつつ、菊池氏から撮影当時の裏話やエピソードをご報告いただきました。さらに撮影から30年経ったことで研究が進み、現在であればどのような方向で番組が制作できるかといった興味深いお話を伺うことが出来ました。




第12回東アジア海文明フォーラム
写真 2007年12月3日開催

  報告者:森 達也(愛知県陶磁資料館主任学芸員)
  題目:「中国陶磁から見た東西交流
            ―沈没船引き上げ資料を中心に―」

 中国陶磁は西アジア・東南アジアそして東アジアにおいて多数発見されています。ご報告は青磁・白磁などの実物資料を通じて、東西交流史を読み解く興味深い内容でした。とりわけ沈没船引き上げ品(インドネシア・黒石号、中国・南海1号、韓国・新安沈没船など)は、当時の様子をうかがう実物資料として注目されます。当日は森先生が遺跡や博物館を訪問された際に撮影された多数の写真をもとにご報告いただきました。




学習院大学
東アジア学交流講座(2007年度)
シラバス 第二期 9月12日〜14日

[1時間目]13:00〜14:30
[2時間目]14:40〜16:10
[3時間目]16:20〜17:50

テーマ: 区域歴史地理から見た中国伝統社会の変遷
講師: 安 介生氏
         中国・復旦大学歴史地理研究中心高級研究員
            /学習院大学客員研究員
教室: 学習院大学創立百周年記念会館4階 第4会議室

※ 講義は中国語でおこなわれます。
※ 参加費無料。事前申し込みは不要です。

  →詳細はこちら(PDFファイル、276KB)
  





学習院大学
東アジア学交流講座(2007年度)
シラバス 第一期 7月18日〜20日

[1時間目]13:00〜14:30
[2時間目]14:40〜16:10
[3時間目]16:20〜17:50

テーマ: 韓中関係史をどう理解すべきか?
講師: 洪 性鳩氏
         韓国・慶北大学校師範大学歴史教育科専任講師
            /学習院大学客員研究員
通訳: 李 英美氏 法政大学兼任講師
教室: 学習院大学北2号館10階大会議室

※ 参加費無料。事前申し込みは不要です。

  →詳細はこちら(PDFファイル、2,240KB)
  





第11回東アジア海文明フォーラム
写真 2007年4月11日開催

  報告者:李 相勳(慶北大学校博士後期課程)
  題目:「羅唐戦争の終結について」

 羅唐戦争(669-676)は、当時、最強大国であった唐と弱小国新羅との間の約8年余にわたって行なわれた戦争である。ところで、羅唐戦争について記録した韓国と中国の史書には互いに差異点があるため、学界の見解は分かれている。本報告では、羅唐戦争の主要戦場であった「買肖城戦闘」(陸戦)と「伎伐浦戦闘」(海戦)について言及したい。675年9月、薛仁貴の艦隊が漢江の河口を攻撃するや、買肖城に駐屯していた李謹行は臨津江戦線の突破を試図する。 676年11月、錦江河口の伎伐浦で薛仁貴の艦隊と新羅水軍との交戦が発生し, 伎伐浦戦闘を最後に羅唐戦争は終結することになる。(翻訳:呉吉煥)




第10回 東アジア海文明フォーラム
写真 2007年1月15日開催

  報告者:洪 性鳩(慶北大学校師範大学専任講師)
  題目:「清代の海禁政策の性格」

 洪性鳩氏は明代に比して手薄な感のある清代の海禁政策を取り上げました。
 報告では康煕32年(台湾平定にともなう海禁緩和)以後の清朝海禁政策の性格について、民間貿易の許可と海洋秩序の維持という原則を指摘しました。また清朝は国内米穀流出の防止と移民禁止という方針を取りますが、朝貢体制維持手段としての海禁の意味は、あきらかに明朝と比べれば弱化していた、とも述べました。
 報告後、井上徹(大阪市立大学教授)によるコメントと会場からの活発な質疑応答がなされました。




第9回 東アジア海文明フォーラム
写真 2007年1月12日開催

  報告者:阿子島 功(山形大学人文学部教授)
  題目:「災害の考古学・環境の考古学」

 阿子島功氏は自然地理学の専門家で、日本国内外の地域を対象に、とくに環境地理学・応用地形学の分野でご活躍されています。当日の報告では、過去に発生した地震・地滑り・洪水などの自然災害が、考古遺跡にどのような痕跡を刻むのかをご紹介いただきました。また地図や衛星画像を用いた地理情報のよみ取り方
についても説明していただきました。




第8回 東アジア海文明フォーラム
写真 2006年11月15日開催

  報告者:劉 序楓
      (台湾・中央研究院人文社会科学研究中心副研究員)
  題目:「近世東アジア海域における漂流問題」

 劉序楓氏は中国海洋発展史・日中関係史を専門とし、近世東アジア海域の交流を研究されています。当日の報告では近年の東アジア諸国間の海難・漂流研究の動向をご紹介いただきました。
 漂流問題は国家間の対処にとどまらず、異文化認識や海外情報に至る多様な問題に展開する内容を持っています。今後は自国の漂流民を中心とする研究から東アジア全体の漂流民救助・送還システムの究明に向けて、一国史の枠組みを超えた視点、共同研究の必要性を提起されました。




第7回 東アジア海文明フォーラム
写真 2006年10月27日開催

  報告者:林 裕己(山九株式会社)
  題目:「中国古代の青銅鏡―鏡の中の詩人達―」

 林氏は漢代の青銅鏡を中心に戦国、遼、金、高麗、日本(江戸時代)の青銅鏡150枚ほどの収蔵家であり、銅鏡の銘文を研究されています。現在、同氏のコレクションは学習院大学東洋文化研究所にて保管し、デジタル撮影などの調査をすすめ、将来的には東洋文化研究所のHPにて写真データの公開を考えています。
 当日の報告では中国銅鏡研究の研究史にはじまり、樋口康隆氏の編年案提出以後の現状と課題について言及し、データベース作成とその意義について、報告されました。報告後、銅鏡に実際に触れる機会を設けていただき、参加者は貴重な体験を持つことができました。




第6回東アジア海文明フォーラム
写真 2006年8月7日開催

  報告者:張 暁虹(復旦大学歴史地理研究中心副教授)
  題 目:「都市化と郷村聚落の空間過程
           −近百年上海東北部の聚落変遷」

  報告者:傅 林祥(復旦大学歴史地理研究中心副教授)
  題 目:「志丹苑遺址と呉淞江の変遷」

 道光二十三年(1843)上海は正式に対外貿易港として開港する。結果、上海は外向型経済によって発展し、極東第一の大都市へと成長した。張暁虹報告では、上海東北地区の個別研究から、開港後の当該地域の聚落体系や空間構成の変化を検討した。
 2001年5月に発見された上海志丹苑遺跡は元代の水利遺跡とされている。傅林祥氏は遺跡の概況を述べ、あわせて任仁発が呉淞江治水にあたり構想した地方志に見る所の「趙浦閘」と志丹苑遺跡の関係、呉淞江変遷との関連について報告した。




学習院大学
東アジア学交流講座(2006年度)
シラバス 第一期 7月18日〜20日 〔韓国史〕

[1時間目]13:00〜14:30
[2時間目]14:40〜16:10
[3時間目]16:20〜17:50

テーマ: 朝鮮時代の社会と文化
講師: 禹 仁秀氏 韓国・慶北大学校師範大学歴史教育科助教授
                /学習院大学客員研究員
教室: 学習院百周年記念会館3階第1・2会議室

第二期 7月25日〜27日 〔中国史〕

[1時間目]13:00〜14:30
[2時間目]14:40〜16:10
[3時間目]16:20〜17:50

テーマ: 近世江南民間信仰−祭祀政策と民間信仰の変遷を中心に−
講師: 朱 海濱氏 中国・復旦大学歴史地理研究所副教授
                /学習院大学客員研究員
教室: 学習院百周年記念会館4階第4会議室

  →詳細はこちら(PDFファイル、2.2MB)
  


第4回・第5回東アジア海文明フォーラム
写真 第4回東アジア海文明フォーラム
3月22日(水)9:00〜11:30 「譚其驤歴史地理講座」
    於復旦大学文科楼八楼歴史地理中心会議室
  司 会:葛剣雄氏(復旦大学歴史地理中心教授)
  報告者:下記参照。

第5回東アジア海文明フォーラム
3月25日(土)14:00〜17:00 「東アジア海文明Forum」
     於慶北大学校師範大学 愚学堂201号第1セミナー室
  司 会:洪性鳩氏(慶北大学校師範大学講師)
  報告者:下記*マークを付した者。

鶴間和幸氏(学習院大学文学部教授)
 「海の環境から歴史を読み解く
     〜東アジア海文明史の構築に向けて」*
浜川栄氏(共立女子大学非常勤講師)
 「東アジア海文明史における運河の意義」*
市来弘志氏(学習院大学非常勤講師)
 「4〜6世紀の華北平原と遼東・遼西の諸民族」
森部豊氏(関西大学文学部助教授)
 「東アジア海域におけるソグドネットワーク研究計画」
村松弘一氏(学習院大学東洋文化研究所助手)
 「東アジア海文明と水利技術」*
菅野恵美氏(文教大学非常勤講師)
 「黄河下流域に対する研究の視点について」
中村威也氏(大江戸高校非常勤講師)
 「3〜6世紀における中国・朝鮮半島・日本の文化交流」*
水野卓氏(慶応大学大学院博士後期課程)
 「東アジア海文明の形成と河川の影響―春秋戦国期の大河に対する認識から―」*
大多和朋子氏(学習院大学大学院博士後期課程)
 「遊女の様相を通じて見る東アジア海」*
長谷川順二氏(学習院大学大学院博士後期課程)
 「衛星画像を利用した前漢期黄河故河道の復元」*
福島恵氏(学習院大学人文科学研究所博士後期課程)
 「東アジア海とソグド人の商業ネットワーク」*
下田誠氏(東京学芸大学非常勤講師)
「東アジア海域における国家形成と青銅兵器研究」*




第3回東アジア海文明フォーラム
写真 2006年3月17日 開催

司  会:鐘江宏之氏(学習院大学文学部助教授)
はじめに:諏訪哲郎氏(学習院大学文学部教授)
報  告:福寛美氏(学習院大学非常勤講師)
報告題目:「『おもろさうし』にみられる北方的文化要素」
会  場:琉球大学
              
 『おもろそうし』は16世紀から17世紀にかけて編纂された琉球の官撰歌謡集であります。福報告では、おもろに三機能体系を読み取ります。三機能体系とは、第一機能=神聖性・主権性、第二機能=戦闘性・力強さ、第三機能=生産性・豊饒性をそれぞれあらわすものとされます。その体系は朝鮮半島系の人々がもたらしたもの(十二世紀に朝鮮半島において成立した『三国史記』には、三機能体系が生きているとされる)、実際には倭寇と呼ばれる集団によって伝えられたということです。
 福氏は琉球民俗を北方的文化要素・ヤマト的要素・中国的要素・南方的要素などの複合として捉えました。そして朝鮮半島に代表される文化要素を北方的文化要素とし、おもろにそれを多数見出しました(三機能体系から、ソウル・察度・高麗瓦など)。
 報告は次の言葉で結ばれます。「おもろは論理を語らないが、当時の人々にとっての真実を語ります。琉球王国が残した最初の文字資料『おもろさうし』は、琉球王国の出自と王国成立期の躍動、そして琉球王国の真実を今に伝えます。そしてその世界の豊饒の源のひとつは、朝鮮半島につながっているのです。」
 報告後、張東翼氏(慶北大学校師範大学教授)・禹仁秀氏(慶北大学校師範大学助教授)より有益なコメントをいただきました。





第2回東アジア海文明フォーラム
写真 2006年3月3日 開催

報  告:イディリス・アブドゥラスル氏
             (新疆文物考古研究所所長)
報告題目:「東アジアにムギをもたらした人びと
                〜小河墓地の発掘〜」
コメント:井上隆史氏
     (NHKエグゼグティブプロデューサー・
              総合地球環境学研究所客員教授)
通  訳:黄暁芬氏(東亜大学総合人間・文化学部教授)

              
 イディリス氏が携わった、2002〜05年までの小河墓遺跡発掘調査に関してお話いただきました。貴重な未発表写真を含む膨大な写真資料を使用し、特にミイラや墓前の木製品(コヨウやタマリクスでできており、その形態から、男性墓か女性墓か判断できる)の写真は何度もくり返し登場し、見るものに強い印象を与えたといえます。
 講演内容と東アジア海文明との関わりでいえば、次の点に注目できました。ミイラの腰付近から、草で編まれたかごが見つかり、その中から小麦が発見されたことであります。井上氏のコメントによれば、小河墓遺跡の存在は黄河流域における小麦の栽培より千年近くも前のことであるとのことです。この点をふまえると、小河墓遺跡に眠る人々(ミイラ)が黄河流域に小麦を伝えた可能性を推測させるということとなります。これは小河墓遺跡と黄河流域にとどまらず、ユーラシア大陸の東西における小麦の伝播を考えるうえでの大きなキーワードにまで発展します。




第1回東アジア海文明フォーラム
写真 2006年1月18日 開催

鶴間和幸氏(学習院大学文学部教授)
鐘江宏之氏(学習院大学文学部助教授)

 第1回東アジア海文明フォーラムは、事業の開始を学部生・院生・市民の皆様に伝えることを目的に開催されました。
 鶴間報告では、事業採択までの流れを説明した後、事業の特徴として、ユーラシア大陸と日本列島を囲む海を「東アジア海」と命名すること、そして海だけではなく、黄河と長江の下流をつなぐ「東方大平原」を取り上げることを述べ、「東アジア海文明」として新しい文明史を築いていく必要性を報告しました。
 セクションIIの代表である鐘江氏は、東アジア海おける「ネットワーク」に注目し、セクションIIとして人間同士・文化の交流に関する事例を検討していくことを報告しました。
 日本律令を研究する上で、中国に加え、朝鮮の視点を加えていくことや末松保和教授以来の研究蓄積の継承など、事業の今後について抱負を述べました。






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