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レーザープラズマ光源から射出された光の
標的金属によるスペクトルの違い

理学部 物理学科 荒川研究室 4年
94041021 栗山大人

 現在、我々の研究室ではレーザープラズマ真空紫外光源を製作中である。出力の強いレーザーをレンズを用いて金属表面に集光する(1011W/cm2程度)と高温(数百万度)のプラズマが生成され、そのプラズマからは赤外線からX線領域にいたる光が射出される。この現象を利用したのがレーザープラズマ光源である。プラズマから得られる光の波長は、レーザーを当てる金属の種類やレーザーの強度・密度によって違うことが知られている。
 プラズマからの発光の機構はプラズマ内の原子やイオンと、自由電子の衝突による励起による輻射、再結合による輻射、あるいはプラズマ内の電界による電子、イオンの制動輻射と様々であるが、励起原子または励起イオンが光を吸収または放出してその電子の束縛状態間に遷移を起こす、束縛・束縛遷移での輻射の影響が一番大きい。原子番号の小さい原子の試料にレーザーを当てたときに生じるプラズマからの光には、K殻への遷移によるスペクトルが見られる。このスペクトルは鋭い線スペクトルである。原子番号が大きくなるとL殻、M殻、N殻への遷移によるスペクトルも見られるようになる。L殻、M殻、N殻になるに従いスペクトルの間隔が狭まり波長領域が広くなる。そのためM殻、N殻にいたると、スペクトルはほぼ連続と見なせるようになる。加えてプラズマ内のイオンと自由電子との再結合による輻射や、制動輻射の場合には連続スペクトルが得られる。このように線スペクトルから連続スペクトルまで使用選択に幅があること、波長が広く選択ができるということがレーザープラズマ光源の特長である。
 図にターゲット付近の概略図を示す。ホルダー部を回転、上下左右に移動させることにより複数の金属にレーザーを当てることを可能とした。金属の種類を変えることにより、発生した光の波長分布の違いを測定し、10eVから300eVの真空紫外光を発生させるのに適切な試料の条件を求めるのが本研究の目的である。具体的にはNd:YAGレーザーの2倍高調波(波長532nm、出力30W、パルス幅10nsec、繰り返し周波数50Hz)をAl、Cu、Mo、WおよびTaなどの金属表面に集光し、プラズマを発生させる。AlやCuからは主に線スペクトルが、MoやTa、Wからは連続スペクトルが得られると期待している。