Xe固体表面上に形成したH2Oクラスターの研究

荒川研究室 97-041-042  立花 隆行


水は大気中に多く存在しており,雲などを形成する水,氷の微粒子は大気中で様々な化学反応に大きな役割を果たしていると考えられる.この研究の目的は,H2Oクラスターの電子的性質や構造を解明することである. これまでの荒川研究室の研究で,希ガス固体上にH2Oを吸着させるとH2Oクラスターが形成されることがわかった.本研究は,Xe固体上にH2Oクラスターを形成し,それに電子を当てることによって脱離してくるクラスターイオンを検出し,電子的性質と構造を解明することが目的である.この卒業研究では,そのための実験装置を,荒川研究室の仙洞田と共に製作した.装置は,測定系,冷却器系,排気系,ガス導入系からなる.これらのうち,測定系と冷却器系について報告する.

主真空容器の概略図を下図に示す.試料であるH2Oクラスターは,Xe固体上にH2Oを吹き付けて形成する.パルス管冷却器の底に,銅製のサンプルホルダーを取り付け,絶縁用のサファイア単結晶を介して試料を作成するための銅製の基盤を取り付けた.到達温度は約50Kである.これらを熱の輻射を防ぐために,銅製の筒で覆った.また,基盤にはニクロシルニシル熱電対を取り付け,試料温度を測定した.脱離してきたH2Oクラスターイオンはチャンネルトロンでパルス検出し,飛行時間測定によって質量分析をおこなう.電子源には,市販のブラウン管用電子銃を用いた.電子ビームの向きを調整するために上下左右方向の偏向電極を取り付けた.装置内の圧力はleyboldt社のエキストラクターゲージで測定した.試料を清浄に保つための超高真空が必要なので,装置全体を約140℃で加熱し,脱ガスした後2×10-8 Paの到達圧力を得た.