SUWA HARUO 通信4


 アジア文化研究プロジェクトへようこそ。私たちのホームぺージをご覧になる皆さんへ、定期的に最新の研究情報をお届けするコーナーです。

 前回、東アジアの王権の問題についてお話することをお約束しましたが、先日、7月8日(日曜日)に、「アジア民族舞踊交流会と研究会・シンポジウム」が開催されましたので、その報告を、先にさせていただきます。

「アジア民族舞踊交流会」は、黛民族舞踊文化財団が、隔年に、中国の雲南省から少数民族の舞踊団を日本へ招待し、韓国、琉球、アイヌなどの舞踊団をくわえて、黛舞踊団と共演する会です。 

黛民族舞踊文化財団の創設者である故黛節子さんが、アジア文化研究プロジェクトの最初からの参加者であったご縁で、私たちは、東京公演のさいの共催者となってきました。ことに、最近は、舞踊公演のまえに、アジアの舞踊についての研究会・シンポジウムをひらき、アジアの舞踊に共通する本質についてかんがえてきました。

 黛節子さんが、雲南省を提携先にえらんだ理由は、日本と稲作の文化を共通にするからは、舞踊の振りや所作にも共通性があるはずだとおかんがえになったことにあります。そのころ、黛さんは、しばしば私の研究室にお見えになり、情熱をこめて、その夢をかたっておられました。そのお顔と声が、つい昨日のことのように眼前にうかんできます。

 今回、雲南省の舞踊団は、イ族、ラフ族、ナシ族、チベット族の四つの民族舞踊をもってきました。韓国からは、創舞芸術院の金梅子さんの一行が出演しました。対応して、黛舞踊団は、日本の民俗舞踊を中心に演目をそろえました。

 民族舞踊が生みだされる母胎には、シャーマニズム、労働、日常所作、動物をはじめとする自然の動きなどがかんがえられます。中国、韓国、日本の、東アジア三国のあいだに、この母胎の共通性があれば、そこから誕生する舞踊にも共通性があるはずです。

 当日の三国の舞踊をみていますと、たしかに、中国の演目を韓国の踊り手が、韓国の演目を日本の踊り手が、日本の演目を中国の踊り手が、演じてもそれほど違和感はないだろうという、振りや所作、テーマの共通性を感じることができました。

 舞踊は、踊り手が身体でかたりかける言語です。その言語の意味が、当日、会場につめかけた多数の観客−日本人、韓国人、中国人−に、確実につたわっていました。一人一人が、自国の舞踊だけではなく、はじめて接した異国の舞踊の意味をもかなり正確に理解していました。

 舞踊は、意味をつたえる身体言語であるだけではなく、意味をこえた情緒や感動をつたえる芸術言語でもあります。

 芸術言語は、アジアの共通性という、地域の枠を超えて、人類の共通感覚にはたらきかけることができます。訓練された三国の踊り手たちは、民族舞踊の枠内にありながら、しばしば、人類の言語をかたりかけてきました。

 

 

 交流会が終了したあとで、私たちが関係者全員を招待して、歓迎会が開催されました。

 すばらしい舞踊の公演と鑑賞という、共通の感動体験をもったあとの出席者のあいだには、国やことばの違いを超えた連体感がありました。飲むほどに、酔うほどに、三国いりまじった交流の輪がいくつも、いくつも、会場一杯にできていました。

 この連帯感の共有も、また、私たちのプロジェクトが、当初から目指してきた目標の一つです。

 自画自賛になりますが、大成功裡におわった三国民族舞踊交流の会でした。準備にあたられた事務局の皆さん、ありがとう。

 ビバ、アジア!

 では、今回はこの辺で。


 

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