1.はじめに

Rは、主として統計解析に利用されているソフトウェアです。

Muenchen(2016)によると、2016年時点で最もユーザー数が増加しているのがRです。Rが広く使用されるようになった長所として無償ソフトであることが挙げられ(Muenchen, 2011)、学生の家庭での自己学習が可能となります(山田・村井・杉澤・寺尾, 2009)。SPSSやStataといった他の統計解析ソフトウェアは高価な有償ソフトであり,学生が個人で所有するのは簡単でありませんでした。教育機関として導入する場合にも、多数のユーザーをカバーするライセンス契約が非常に高額になることが障害となり(鈴木・松本, 2005)、全学的な導入が見直しも検討されました。

図1-1 年度ごとの統計解析ソフトウェア別検索件数

平成28年度学習院大学シラバスによると、授業における統計解析ソフト1の使用数に大きな差はありません(図1-1参照)。ただし主要な統計解析ソフトを更新するにあたっては、教職員の授業運営・研究活動を支援するにあたって環境を整えることが必要になります。とくにRは基本的な操作にコマンド入力が求められ、初学者にとっては難しいことも指摘されています(徳永・国里・蔵永・深瀬・宮谷, 2008)。Rに関する書籍はこれまでにも多数発行されており(e.g., 山田・杉澤・村井, 2008; 青木, 2009),Webサイト上の情報も豊富です。それでもRをはじめようとするとき、テキストの見本とPC環境が異なることで、はじめの導入部分でつまずくケースもあります。そこで、2017年度計算機センター特別研究プロジェクト『GCS環境における統計解析ソフトRのマニュアル開発』の助成を受けて、このテキストは作成されました。

本テキストの内容は、主に計算機センターより発行されているSPSSのマニュアル「SPSS for Windows Guide Book」と「SPSSによるデータ分析の手順」に準じています。いずれのマニュアルも学習院大学の教員、学生のニーズに応えてマイナーチェンジを加えながら2017年4月までに第7版まで発行されてきました。本テキストでは内容をより充実させるために、教員2と学生3を対象にした以下のアンケート結果も考慮し、編集しています。


  1. 学習院の環境においては統計解析ソフトとしてIBM SPSS Statistics Version 22、Stata /IC 13.1 for Windows、R version 3.1.3(以下SPSS, Stata, R)が実装されています。このテキストは、Rの使用法に特化したテキストです。

  2. 支援組織では設立された平成11年度から毎年,学習院大学及び学習院女子大学で授業を実施している教員を対象としてアンケート調査を実施してきました。アンケートの主な調査内容は各種マルチメディア機器の使用状況、授業教材の作成状況、教員からの要望などで、支援業務や設備の改善を図ることを目的としています。今回はアンケートに統計解析ソフトウェアに関わる調査を含め、「授業または研究で使用した統計解析ソフト」、「授業または研究で使用した統計手法」について尋ねました。

  3. 統計解析を主に使用する心理学科の4年生を対象としました。アンケートでは、「卒業論文の執筆にあたって使用した統計解析ソフト」、「卒業論文の執筆にあたって使用した統計手法」などを尋ねました。