稲熊研究室は、1999年にスタートして以来、ユニークな学生たちに支えられてきました。 研究室では、固体化学の立場から新規無機化合物の合成、結晶構造、物性に関する研究を行っています。合成を主としますが、
機能性化合物を設計するためには、自ら構造解析、物性解明にも取り組む必要があると考えています。 自ら解析を行うことにより迅速に合成にフィードバックできるだけでなく、
ものづくりの楽しさを十分に味わうことができます。この合成と解析の両方をおこなうという研究姿勢は、将来社会に出て、材料開発等に携わる場合において、重要かつ有用な経験となっていくでしょう。新物質の発見によって、既存の物質より優れた性質や未知の性質が見出されることがあり、いつもわくわくしながら研究に励んでいます。それらの研究の中から、代表的な3つのテーマについて紹介します。
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1. リチウムイオン伝導性酸化物の合成とイオン伝導機構の解明
現在、リチウムイオン電池には液体の電解質が使われていますが、可燃性のため、ショートなどにより発火する恐れがあり、安全性の高い固体の電解質が求められています。そこで今次世代のリチウム固体電池の固体電解質に応用できるような新たなリチウムイオン伝導性酸化物の開発を目指し、稲熊研究室では、ペロブスカイト型リチウムイオン伝導性酸化物をはじめとするリチウムイオン伝導性酸化物の探索合成に取り組み、その結晶構造やイオン伝導機構を解明しています。また、溶融塩 / リチウムイオン伝導体間のイオン交換反応により、マグネシウムイオン、亜鉛イオン伝導体の合成や磁性などの機能修飾についても検討しています。2. 高圧を用いた機能性酸化物および酸フッ化物の合成
ダイヤモンドとグラファイトのように、高圧下では高密度相が安定化し、常圧相とは異なる新たな化学結合が形成される物質があります。この準安定相を取り出すことができれば、新たな化学結合に基づくユニークな物性を持つ化合物が得られる可能性があります。3. 新規酸化物蛍光体の合成と発光機構の解明
次世代の照明やテレビなどの表示機器のための蛍光体開発の基礎を築くことを目指し、新しい酸化物蛍光体の合成と発光機構の解明を行っています。