科研B報告:機械学習による企業行動構造の分析の研究(2020-2023:20H01537)

1. 研究の概要

近年のAI手法は目覚しい進歩を遂げ、多くは既に実用化されている。 膨大なデータを予測や判定に用いるわけであるが、背後にはコンピュータの計算能力の飛躍的進歩がある。 本研究は、このような計算手法の有力な一つである機械学習手法の経営における企業分析への適用を推進するために既存の分析手法、特に決定樹木系アルゴリズムの改良とその可視化を行う。
そして回帰等の伝統的な手法の限界の克服のための一助となることを目指す。
経営学では物理の法則のような再現可能な理論はまだ確立されていない。経営学では実地調査などの仮説形成のための帰納法的アプローチと、仮説検証型統計手法が主流である。
それが政策立案、事前的経営努力などの領域で曖昧さを残したままの状況での意思決定や実践を強いることになっている。 本研究は、企業行動構造の分析における、データに裏付けられたより意味のある仮説の形成とその立証を支援する機械学習手法の援用を高めることを目的とする。

代表者:白田由香利(学習院大学経済学部経営学科教授)
研究分担者: 永島正康(立命館大学)、バサビ・チャクラボルティ(岩手県立大学)、山口健二(日本大学経済学部)、吉浦裕(電気通信大学 名誉教授)
研究協力者:森田道也(学習院大学経済学部名誉教授)、村上朱音('20-'21白田研院生)、松橋誠治('22-白田研院生)


2. ここまでの成果報告

本研究の第1の目的は、機械学習における説明変数の重要度の測度の改善を図ることである。データ工学の分野のサーベイからSHAPという測度を知り、企業分析に適応し、その有効性を検証することができた。成果論文も発表した。また、各種の製造業における企業分析を行うことで、我々自身もSHAPの理論を深く理解することができた。また、SHAPによる分析結果を多数可視化したことで、それを教材として回帰分析結果をさらに分かりやすく説明可能となった。2022年2月27日のDEIMチュートリアル「機械学習回帰における Shapley 値の理論説明と事例紹介」で多くの日本若手研究者にSHAPアプローチを広めることができたことで、第1の目的は達成できたと考える。 第2の目的「回帰分析結果を決定樹木構造により可視化」であるが、これに関しては2022年度に多くの描画を行っていく。目標は、通常言われているハイパフォーマンス企業への分類とは異なる意外な分岐経路another approachを発見することである。これを実際の企業データセットを用いて実践していきたい。 第3の目的「実際の経営関連データセットに基づく分析による検証を行う」ことである。世界のトップ製造企業において、売上高成長率、サプライチェーン的要素が株価上昇率及び株価回復率に重要であることを示したことは、十分な成果が出せた、考える。


3. 重要な論文