経済学においては,各種の経済に関する状況(例えば,景気の動向,市 場価格の変動等)を数学的に表現しようとします.これを「数学モデル」 と呼びます.モデルと言っても,ファッションモデルや車のニューモデル 等とは全然異なり,その中身は数式の集まりです.そしてその数学モデルを 使って現状分析や将来予測を行なうときに,数学が役に立ちます.高校の時, 皆さんは方程式や微分積分を学びながら,「こんなことを勉強しても社会で 役に立つのだろうか?」と疑問をもったことがあるかもしれません.しかし 経営では本当に役に立つのです.例えば,皆さんが経営者になった場合「こ の製品を高く売りたいのだけれど,いくらまでなら消費者は値上げしても買っ てくれるかしら」,「工場を拡張しようと思うが,拡張して総利益は上がるだ ろうか」等といろいろな経営判断が必要なことが出てくるかと思います.そう いう時に,自分を取り巻く状況を数式で表し,その方程式を解いたり,式を微分したりすることによって,情報を分析することができます.数学の公式を覚えたことが,そこで真価を発揮します.また,経営数学を学んで「数学的な論理的な思考法を習得する」ことで,皆さんの経営センスも必ずや向上するはずです.
次にコンピュータですが,コンピュータの得意なことは,膨大なデータを記憶できること,そして,計算が速いことです.コンピュータを使うことにより,膨大な量の経営情報をコンピュータのデータベースに蓄積し,その情報を使って各種の分析や予測のための計算(方程式を解いたり,シミュレーションを行なったり)を高速で行なうことができるようになります.これは経営判断に大変役に立ちます.サイズは大から小までいろいろですが,企業にはこのようなデータベースが必ず存在していて,企業の情報マネジメントに活用されています.さらに,データベースはインターネットのWebシステムを支える重要な役割も果たしています.例えば,eコマースでショッピングをする際,商品カタログが多数表示されますが,これは,商品のカタログデータベースが予め用意されていて,それを皆さんの希望条件に合わせて検索して,その検索結果を表示しているのです.また,顧客情報を管理するために,顧客データベースというものも存在しています.その他にも各種のデータベースが裏で動いています.
また,従来のデータベースの定義とは少し違いますが,インターネット上の多様なWeb情報自体もデータベースの一種とみなすことができます.最近は,Web情報を,検索ロボットを使って機械的に集めてきて,自分のほしい情報だけを抽出し,それを自分の見やすいように整形して表示する,という技術の研究が盛んに行われています.こうしたデータベース・システムの活用法については,「情報マネジメント」で講義します.大学院向けのデータベースの講義としては,「経営科学特殊研究I」があります.この講義では「eコマースのためにどのようなデータベース・システムが必要であるか」というテーマの元,データベース・システム論のさらに進んだ内容を論じていきます.どちらも実習付です.また,白田ゼミ(2年生〜4年生)では,eコマース経営者として必要な知識,主に技術的知識をゼミ生に習得して頂けるよう,コースを用意しています.
とにかく数学もコンピュータも慣れると経営学を学ぶ際に大変役に立つ道具です.皆さん,頑張って習得してください.