分子性導体は、無機半導体や強相関酸化物とならぶ、21 世紀を支える第3の伝導性物質である。近年、超高圧下における新しい有機超伝導の発見、強磁場下における新しい伝導現象や磁場誘起超伝導の発見、分子エレクトロニクスへの関心の高まりなど、分子性導体の研究が新局面を迎えている。
本領域では、(1) 超高圧、超強磁場下の新しい電子状態の創成、(2) 磁性と伝導の複合したπd 系、人工構造の導入による新機能の開拓、を柱に、構成要素が有機分子であることに由来するこの系の特質を最大限に活用して、分子性導体の新しい可能性を開拓する。このため、次の5つの研究項目を設定し、「計画研究」とこれを補完する「公募研究」によって研究を推進する。
研究課題 (A01) では、超高圧、超強磁場下における新しい電子状態の探索を、(A02) では、磁性と伝導の複合したπd系、人工構造の導入などによる新機能開発を行う。これらを、物性、物質、理論のそれぞれの側面から支えるために、(A03)
新機能探索では、分子性物質の多様性をパラメーターとした系統的な物性測定により、新しい機能を創造する研究を、(A04) 物質合成では、新しい機能開拓を積極的に意図した新しい物質群の設計、開発する研究を行う。さらに、(A05) 新物性の理論では、理論的な物性予測と解明を担当し、実験を支える。
公募研究 では、新しい課題の開拓に役立つ研究を積極的に採択する。特に、新規なアイデアに満ち溢れる若手研究者を拾い上げ、また、周辺領域における新しい成果にも目を配り、本領域の守備範囲を開拓することをめざす。年度あたりの研究費は200〜300万円程度とし、27件の採択を予定している。