生物物理化学1 |
複雑な生物の成り立ちや生体内現象を理解する上で、物理化学の基礎知識と考え方を取得することは不可欠になっている。本講義では、熱力学の基本法則をはじめとして、エネルギーやエントロピーといった普遍的な概念・知識について解説する。また、生命活動を構成する様々なレベルでの形態反応や平衡過程においても熱力学が応用されることを説明するとともに、分子運動・分子間相互作用・輸送現象等における物理化学的な理解について説明する。 |
生物物理化学2 |
生命活動を担う機能ユニットである高分子、特にタンパク質及び核酸の構造・性質を物理化学的な側面から説明する。これらの分子自体の多様な構造形態及びその変化に関する知識をはじめとして、様々な溶媒環境などの物理化学的要因が及ぼす効果についても講義する。更に、実際にこれらの機能体を分子レベルで研究する場合に用いられる分光法などの物理化学的な技術・手法に関する基礎的な原理や実例についても講義する。 |
基礎科学実験1
(生命科学) |
生命科学の基本的な実験を行い、細胞、生物個体の成り立ちと活動を学ぶ。最初に器具の洗浄法、廃棄物の処理法、怪我の処置について徹底させ、顕微鏡の使い方、ミクロメーターの使い方を習得させる。オオカナダモの葉を用いた原形質流動、葉緑体、核の観察、ゾウリムシ等の原生動物を用いた単細胞生物の構造と細胞小器官の観察、食作用の観察、繊毛運動の観察、タマネギの根端細胞を用いた体細胞分裂の観察、ムラサキツユクサのおしべを用いた減数分裂の観察を行う。被子植物の花粉管成長、被子植物の維管束構造を調べる。ウニあるいはアフリカツメガエルを用いた動物の受精と初期発生を学ぶ。プラナリアの再生実験を行う。動物の諸器官の構造:ザリガニとカエルの解剖により、無脊椎動物と脊椎動物の組織・器官の構造を理解させる。 |
基礎科学実験2
(物理・化学) |
物理学と化学に関連する実験を実際に体験することで、基礎的な実験技術の習得とこれらの分野に対する理解を深めることを目的とする。物理学分野においては、基礎的な物理実験を通して、回路や光学等に関する基礎技術の訓練、熱学や原子論等の基礎的物理概念の形成、精密測定実験の体験を行うことを目的とする。また、化学分野においては、無機化学、有機化学、物理化学に関する様々な実験を通して、今後研究を行う上で有用な基本操作や化学的な考え方を習得させる。 |
生化学1 |
生物には、簡単な単細胞生物から複雑な脊椎動物や高等植物に至まで、化学構造や反応機構に非常に多くの共通点が見られる。この全ての生物が持つ化学的レベルでの共通の基盤を理解することが生化学の大きな目標の一つである。本講義では、生体を構成する主要な物質である炭水化物、タンパク質、核酸、および脂質について、その構造と性質をわかりやすく解説する。さらに、生体にエネルギーを供給したり、反対にエネルギーを利用して細胞活動に必要な化学反応を触媒する酵素の働きについて解説する。 |
生化学2 |
細胞あるいは生物体内では、小分子から高分子の合成あるいはその逆反応である分解など、酵素が触媒する実に多くの反応が起きており、その結果として生命活動を維持するために必要なエネルギーなども生み出されている。これらは「代謝」と呼ばれ、糖、脂質、アミノ酸の分解および合成、電子伝達、ATPの合成などを含む。これらの「代謝反応」について、主に化学的観点から講義を行い、細胞あるいは生物体内での物質の相互変換について理解を深めさせる。さらにこれら代謝を制御する仕組みについても簡単に触れる。 |
分子細胞生物学1 |
遺伝子は細胞の構造を築き、細胞の活動を進め、自分自身をさらに増やすためのプログラムである。遺伝子の化学的本体はDNAであり、その構造自体が遺伝という現象を見事に説明している。しかしDNAの分子構造は遺伝情報の変化(突然変異)を許容し、それによって個体の間に多様性が生じ、生物が進化する基盤が与えられている。本講義では、遺伝子の本体がどのようにして発見されたか、また遺伝子DNAの複製とその損傷の修復はどのように行われているのかなどについて講義する。 |
分子細胞生物学2 |
ゲノムDNA上の遺伝子として蓄えられた遺伝情報が、どのようにして細胞機能に用いられるのかを知るためには、遺伝子発現の機構とその制御について理解することが重要である。本講義では、遺伝子がmRNAへ転写され、さらにタンパク質へ翻訳される機構やそれらの制御機構について、原核生物と真核生物の類似点や相違点に着目しながら解説する。さらに、遺伝子発現の制御に関して、染色体構造や細胞核構造が果たす役割についても解説する。 |
分子細胞生物学3 |
細胞は生物の基本的な構造単位であり、近年、その活動が分子のレベルで理解されるようになってきた。細胞は細胞膜によって細胞質を外界から隔てているが、膜タンパク質によって適宜、外界と連絡している。外界からの刺激はシグナル伝達系を通して細胞内部に伝わり、細胞の運動や増殖を引き起す。この講義では細胞膜の構造と機能、ミトコンドリアや小胞体などの細胞小器官の構造と働き、細胞膜を通したシグナル伝達機構、シグナル伝達を受けて細胞を動かす細胞骨格の構造と機能、細胞周期と細胞分裂について解説する。 |
分子細胞生物学4 |
1) 細胞とその環境との相互作用、2) 細胞質内膜系、3)がん、4) 免疫応答について講義する。単細胞生物は外界の環境情報を直接取り込むが、多細胞生物においても細胞は周囲の細胞と情報交換して適切な応答を行う。細胞間に存在する基質や、細胞と細胞の間をとりもつ分子、そして細胞内で働く内膜系などは、物質の移動を手助けすることによって、情報の産生から応答までに貢献している。その結果ひき起こされる生命現象の例として、病原体に対する「免疫応答」、また情報の異常がもたらす「がん」をとり上げ、その基礎をわかりやすく解説する。 |
動物科学 |
細胞・遺伝・生殖・情報発現・進化など、生命のもつ基本的性質に加えて、個体・臓器・組織・細胞・分子などの階層性、細胞間シグナルによるそれらの統合、細胞死による恒常性維持など、動物において特に発達している機能と構造について講義する。またこれらの動物研究のために特別に開発されてきた新旧の遺伝学・細胞学的諸技術や、様々なヒトの疾患モデルとして位置づけられる動物研究の意義について、解説する。本講義は1年生の最初の段階を対象とするので、各項目の詳細よりも、全体像の把握と基礎知識の習得を目標とする。 |
植物科学 |
本講義では、大学で初めて「植物」を学ぶ学生を対象に、植物の形態、代謝、生理に関する重要な基礎項目について解説する。また、近年急速に発展した植物の分子生物学、分子遺伝学、バイオテクノロジーによってもたらされた最新の知識、成果についても概説する。知的探求をめざす基礎科学としての「植物科学」と、深刻化する世界的な食糧、エネルギー、環境問題を解決するための応用科学としての「植物科学」について、その魅力と重要性を伝える。 |
発生生物学 |
地球上に現存する殆ど全ての生物種は、配偶子の結合(受精)から発生を開始し、多数の細胞分裂また多様な細胞分化を経て個体を形成する。生物の個体発生のメカニズムは長い間謎に包まれていたが、近年分子細胞生物学的手法の導入により解明の糸口が得られてきた。本講義では配偶子形成から個体形成に到る発生・分化過程のダイナミズムについて、ハエ、カエル、マウスなど様々なモデル生物を用いて得られた細胞、分子、遺伝子各レベルにおける知見を解説し、発生事象の基礎的理解を目指す。 |
生命科学研究法1 |
生命科学では生化学、分子生物学、細胞生物学、生物物理学、遺伝学など様々の分野の研究法を用いて研究を行う。この講義では、これらのうち特に重要な研究法についてそれらの原理と実際を講義する。
(オムニバス形式)
(5 小島修一/3回)「電気泳動、各種クロマトグラフィー」「タンパク質の一次および二次構造解析」「人工変異タンパク質の作成法」
(2 岡田哲二)「タンパク質の高次構造解析(X線結晶解析およびNMR)」
(8 菱田卓/2回)「様々な遺伝子操作技術」「モデル生物の形質転換法ならびに細胞培養法(酵母)」
(7 花岡文雄/2回)「DNAの塩基配列決定法」「トランスジェニックアニマル・ノックアウトマウス作製法」
(9 馬渕一誠/2回)「電子顕微鏡による生体高分子・細胞・組織の観察」「蛍光抗体法、発光タンパク質との融合タンパク質発現と観察法」
(3 岡本治正/2回)「光学顕微鏡による細胞・組織の観察」「免疫学的手法,単クローン抗体作成法」
(4 清末知宏/2回)「オルガネラ分画法」「モデル生物の形質転換法ならびに細胞培養法(植物)」
(1 安達卓)「モデル生物の形質転換法ならびに細胞培養法(動物)」 |
生命科学演習1 |
生命科学では原著(英語)論文を読みこなす能力が必要で、しかもいずれは自分の研究についても英語論文を執筆できるようになる必要がある。このような力をつけさせるため、生命科学のさまざまな分野における優れた原著論文を学生に読ませ、その内容を発表させるという演習を行う。聞き手の学生は予め予習をし、発表時に活発な議論ができるようにする。この授業では主に「生化学」の論文を選択する。 |
生命科学演習2 |
「生命科学演習1」の続きとして、主に「分子生物学」の英語の論文について、優れた原著論文を学生に読ませ、その内容を発表させるという演習を行う。聞き手の学生は予め予習をし、発表時に活発な議論ができるようにするように指導を行う。 |
生命科学演習3 |
さらに「生命科学演習2」の続きとして、主に「細胞生物学ならびに発生生物学」の英語の論文について、優れた原著論文を学生に読ませ、その内容を発表させるという演習を行う。聞き手の学生は予め予習をし、発表時に活発な議論ができるように指導を行う。 |
生命科学実験1 |
生化学、分子生物学の実験の基本操作を学ぶ。ガラス細工、滅菌操作を習得する。ピペットマン、天秤、pHメーター、分光光度計、蛍光光度計、遠心機の使用法を習得する。その上で、タンパク質のSDS電気泳動、DNA, RNAの電期泳動、タンパク質とDNAの分光学的性質、大腸菌培地の作製と大腸菌の培養、酵母培地の作製と酵母の培養、増殖曲線の作製、顕微鏡による増殖の観察を行う。 |
生命科学実験2 |
生化学、分子生物学を基盤とし、タンパク質科学、分子遺伝学に関する実験を行う。具体的には、コンピューターグラフィックスにより生体分子の構造を学び、X線解析等によるタンパク質構造解析の基礎を行う。生体試料あるいは遺伝子工学的に発現させたタンパク質を各種クロマトグラフィーの技術により精製し、電気泳動・活性測定などによる特徴付けを行う。DNAの調製、細胞の形質転換とそこでのタンパク質発現を行う。酵母の遺伝子組換え技術を用いた分子遺伝学に関する実験を行う。 |
生命科学実験3 |
細胞生物学、遺伝学、発生学に関する実験を行う。具体的には、細胞の蛍光抗体法によるタンパク質の局在観察、細胞骨格のダイナミクスの観察を行う。アフリカツメガエル卵の受精から胚形成に至る発生過程を、種々の実験的(化学的、物理的)環境下で観察し、正常な胚発生に必要な条件を考察する。ショウジョウバエの複眼発生系を用いた、遺伝学的な交配実験と細胞標識実験を行う。植物の組織培養と植物ホルモンの役割に関する実験を行う。 |
生命科学輪講 |
専任教員による個人的指導として行う。研究テーマの基礎及び実際の進行に関わる既存の方法及び知識の修得法の指導、テーマに関連する文献の理解・評価の指導、研究結果のまとめ方・発表の仕方の指導を行う。一定の研究成果が得られたら、国内及び国際学会での発表の指導、国際誌への投稿論文作成の指導などを行う。週内の特定の時限を定めて研究室セミナーとして行うものと、時限を定めず必要に応じて個人的に行う指導の2本立てとする。既存論文および発表論文は殆どの場合英文なので、英語科学論文の理解・作成の指導に時間を割く。 |
生命科学特別研究 |
専任教員による個人的指導として行う。学生一人に原則として一人の指導教員を定める。学生は指導教員の研究室で自ら研究活動(主として実験研究)を行い、指導を受ける。研究テーマに直接関わる指導は、4年生の1年間を通して、時限を定めず必要に応じて個人的に行う指導が中心となる。研究テーマは学生一人ずつ異なるが、生命科学分野の基礎的素養を涵養し、生命科学分野の研究の進め方に習熟し、知的および応用的能力を展開させるために必須な訓練を受けるという意味で共通している。 |