2014/06/10
出題者: 学習院大学 楳本氏

Quiz #05

\(\zeta (2)\) の値を求める。

\begin{equation} \zeta (s) = \sum_{k=1}^{\infty} \frac{1}{k^s} \end{equation} で定義されるリーマンのゼータ関数について、\(\zeta (2)\) の値を求める方法はいくつかある様です。\(\sin\) 関数の因数分解を利用した方法は前に問題として出題しました。今回は違ったアプローチで \(\zeta (2)\) の値を求めてみようと思います。

級数に展開した \(\zeta (2)\) の第 \(k\) 項に \(x^k\) をかけた関数 \begin{equation} f(x) = \sum_{k=1}^\infty \frac{1}{k^2} x^k \end{equation} を定義します。明らかに、 \begin{equation} f(1) = \sum_{k=1}^\infty \frac{1}{k^2} = \zeta (2) \end{equation} です。

問題 1

\begin{equation} \frac{d}{dx} f(x) = g(x) \end{equation} となる \(g(x)\) を求めてください。ただし、\(g(x)\) は \(x\) について閉じた式 (無限和ではない形) とします。

ヒント: \(\log\) の冪級数展開を考えてみてください。

問題 2

あとは、この右辺を積分し、\(x=1\) の場合を考えることができれば \(\zeta(2)\) の値を得ることができそうなのですが、 実際にこの積分を実行することは簡単ではありません。なので、このような \(f(x)\) についてもう少し探りを入れてみようと思います。実はこの \(f(x)\) は複素数にまで拡張することができ、より一般の形として \begin{equation} \textrm{Li}_s (z) = \sum_{k=1}^\infty \frac{1}{k^s} z^k \end{equation} という多重対数関数 (polylogarithm) が知られています。今回扱うのは \begin{equation} \textrm{Li}_2 (z) = \sum_{k=1}^\infty \frac{1}{k^2} z^k \end{equation} で、二重対数関数 (dilogarithm) と言います。

\(\textrm{Li}_2 (-1)\)と \(\zeta(2)\) の関係式を求めてください。

ヒント: \(\textrm{Li}_2 (1)\) と \(\textrm{Li}_2 (-1)\) の無限和を実際に書いてみるといいです。

問題 3

第二種の Euler の反転公式 \begin{equation} \textrm{Li}_2 (z) - \left \{ \textrm{Li}_1 (z) - \textrm{Li}_1 \left (\frac{1}{z} \right ) \right \} \log z - \frac{1}{2} \log^2 z + \textrm{Li}_2 \left (\frac{1}{z} \right ) = 2 \zeta(2) \end{equation} を利用して \(\zeta(2)\) の値を求めてください。ただし、 \begin{equation} \log (-1) = i \pi \end{equation} とします。