経営史講義 第6回 2004年11月11日

ドイツ経営の発達:組織された資本主義

1)後進国のドイツはいかにして短期間に工業化に成功したのか。

2)またその工業化のプロセスの中には、矛盾、問題は含まれていなかったか。

①ナポレオン戦争による近代化の圧力。ドイツ経済の後進性。とくに多くの領邦国家に分かれる。一番大きな領邦国家がプロイセン。ここでの「上からの改革」の試み。それがのちに他の領邦国家に波及。例えば、プロイセンにおける「農民解放」。(イギリスは農業の資本主義化、フランスでは革命の結果、解放の徹底化による小土地所有者の創出。それに対して、プロイセンでは封建的な色彩を残存させた農民解放が行われた。特にエルベ川以東の地域において。ここにユンカ-層が成立する。エルベ川以西においてはエルベ以東よりも近代的とはいえ、零細農業経営、借金経営が行われていた)

② ドイツ経済の発展とユンカー層の役割。政治的経済的にも先頭にたって近代化を進める。「関税同盟」の成立。営業の自由の進展(しかし国家の強い監督・干渉が見られる。イギリスはまさに小さな政府、「夜警国家」であった)。

③ ドイツの「産業革命」。鉄道の発達。関連の機械工業、重化学工業の発達。大規模な設備資金の必要性。株式会社の利用。しかし民間資本の零細性。そこで重要な役割を担うのが、銀行であった。「特殊ドイツ型銀行」の登場。(イギリスでは短期資金の企業への融資を中心とする商業銀行、フランスではペレール兄弟などによる投資銀行)。このドイツ型銀行は、総合銀行の機能をもっていた。短期資金および長期資金の融資を行った。そして、次第に銀行が融資先の大企業を支配するようになる。金融資本の成立。また、製造業も混合企業として発展。すなわち、垂直的統合による原料→完成品までの生産体制を確立。それを可能にしたのが、株式会社制度であり、また銀行であった。この意味で、製造業、金融、そしてそれらを後押しする国家が一体となって、組織された資本主義体制が誕生していた。

1871年 「ドイツ帝国」の成立とその経済的特長。ビスマルク的政治経済体制。労働者管理(アメとムチの政策)。家父長的労使関係。企業内福利政策。第2次産業革命を指導。電機産業、化学産業、鉄鋼産業、機械産業などの発展。産学協同の推進。

⑤第1次世界大戦とワイマール共和国の成立。ハイパー・インフレーション(物価が年に数百、数千倍に上昇すること)。政治的、経済的、社会的不安定。ヒットラー-によるナチス政権の誕生。

⑥ドイツ産業の発達。化学産業の事例。IGファルベン。電気産業の事例。ジーメンス。合同製鋼の成立(1926年)

⑦ 第2次世界大戦と戦後の発展。戦前・戦時中の統制経済。経済復興の基盤。人的資源の利用。輸出増大。労使関係の安定。東西ドイツの分割から統一へ(1990年)。EUの中心国としての役割。

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