レポートについてのページへ

「現代物理学」2013年度

物理と情報

レポートについての情報は、別の「レポートについてのページ」にまとめました。

今回のテーマは「物理と情報」にした。ただし、「情報」というのは日常的な意味ではなく「情報理論」のこと。統計力学や熱力学といった物理学に情報理論がどう関わってくるかをじっくりと見ていこう。フィードバック制御系についての最近の進展についても可能な範囲で解説するつもりだ。

情報理論とは、(たとえば、0 と 1 の文字列の中に含まれている)「情報」を定量的に扱うための学問である。20 世紀に生まれた新しい学問分野だが、コンピューターやインターネットが身のまわりにあふれている今日の社会ではとてつもなく重要な役割を果たしている。

一方、物理学は、私たちのまわりの世界にひそむ普遍的な規則性をできるかぎり厳密に理解し体系化していく営みである。物理学では「もの」が研究の対象になるのが一般的だ。

「もの」の世界の普遍性を究める物理学に「情報」が関わってくるのは意外に思えるかもしれない。しかし、情報理論は誕生当時から(主に数学的な理由で)統計物理学と密接につながっていたのだ。その後も物理学と情報理論の深い関係が明らかにされてきた。この講義では、そのような物理と情報理論の交流の一側面を見ていこうと思う。

具体的には、情報理論的エントロピーと平衡統計力学や熱力学第二法則の関連、相互情報量とフィードバック制御系の拡張された第二法則の関わりなどを取り上げる。

なお、今回の内容の一部は 2010 年度の現代物理学「エントロピーをめぐって」と重なるだろうことをお断りしておく(といっても、ストーリーは違うし、私自身の理解も 3 年前よりはずっと進んだと思うので、同じ講義にはなりません)。


もちろん、情報理論についても、統計力学についても、予備知識はいっさい仮定しない。新しい物理的概念や数学的道具は丁寧に解説していこうと思う。ただし、それでも、1 年生にはやや敷居の高い講義になるだろうことは承知しておいていただきたい(と言われても迷わす受講するのが「四月病」なんだろうけど・・(←いいことだと思います))。

さらに、この講義では、必修の物理や数学に飽きたらず、それらを越えて物理学(や関連する分野)を学びたい学生さんを想定していることを強調しておきたい。講義の内容を含むような教科書や参考書は(おそらく)存在しないので、しっかりと出席して学習する必要がある。レポート問題も自分で理解してしっかりと考えなければ解けないはずだ(そもそも大学で「調べれば解ける」ようなレポートを出題することが問題なのだが)。


単に「レポートだけで単位が取れる」というつもりで履修すると後で後悔する可能性がきわめて高いことを注意しておきたい(実際、以前の履修者で「ひどい目にあった」という率直な感想を書いてくれた学生さんもいた)。

また、この講義ではレポートだけで評価を行なうので、いわゆるレポートの「丸写し」については厳しく対応したい。「丸写し」を行なうことはもちろんだが、その原因を作る行為(たとえば、解答を配布したり、ネット上に公開すること)にも同様に対応する。


言うまでもないことかもしれませんが、私の書いたページの内容に興味を持って下さった方がご自分のページから私のページのいずれかへリンクして下さる際には、特に私にお断りいただく必要はありません。
田崎晴明
学習院大学理学部物理学教室
田崎晴明ホームページ

hal.tasaki@gakushuin.ac.jp