月曜日 5 時限(16:50 〜 18:35) 駒場キャンパス 723 教室(第 1 回は 9 月 14 日) 時限を変更しました!!(9月3日)
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「時間に向きがあること」も、知識が増えたことによって生じてくる深遠な謎の一つだ。
われわれにとって時間に向きがあることは自明の経験事実である。ところが、ミクロな世界の時間発展を(かなり高い精度で)記述していると考えられている(量子)力学は時間反転について対称なのである。つまり、力学の世界に「時間の向き」はないのだ。力学法則が時間反転について対称であることと、われわれが「時間の向き」を感じるという事実は、一見すると矛盾している。これが「時間の矢の問題」であり、今のところ完全には解決されていないと考えられている。
私を含む多くの人が、「時間の向き」は力学法則の時間反転対称性と矛盾しないと信じている。そして、自由度のきわめて大きい系では自然に「時間の向き」が発生すると考えている。
この講義では「時間の向き」の問題を丁寧に検討し、とくに「大自由度の系では自然に時間の向きが生じる」という上述のシナリオを主に数理的な立場から議論する。多粒子系の力学、確率論、統計力学などの知識を必要とする場面も出てくるが、標準的な一年生が学んでいない内容は講義の中で解説するつもりである。
さらに、この講義では、必修の物理や数学に飽きたらず、それらを越えて物理学(や関連する分野)を学びたい学生を想定していることを強調しておきたい。講義の内容を含むような教科書や参考書は(おそらく)存在しないので、しっかりと出席して学習する必要がある。レポート問題も自分で理解してしっかりと考えなければ解けないはずだ(そもそも大学で「調べれば解ける」ようなレポートを出題することが問題なのだが)。
また、この講義ではレポートだけで評価を行なうので、いわゆるレポートの「丸写し」には厳しく対応する。「丸写し」を行なうことはもちろんだが、その原因を作る行為(たとえば、解答を配布したり、ネットに公開すること)にも同様に対応する。