極微少電流低速電子線回折法による
希ガス物理吸着層の成長過程の観察
荒川研究室
93-041-009 入江泰雄
原子的に均一かつ平坦な表面上に物理吸着した気体分子の系は,表面上に束縛されていることから,擬二次元的な振る舞いを示すことが知られている.物理吸着層の吸着量は,吸着系と平衡状態にある気相の圧力と吸着系の温度の関数となる.温度一定で,吸着量と圧力の関係をグラフにしたものを吸着等温線という.温度一定のもと圧力をあげていくと,吸着分子同士の引力相互作用による二次元凝縮を繰り返し起こしながら層状の成長をし,バルクの状態に漸近していく.有限の厚さでバルクに転移する系では,その転移点で平衡蒸気圧は飽和蒸気圧にジャンプする.
本研究で対象としているAg(111)単結晶表面上のXeの吸着層について,単原子層では,図1のように下地と配向はそろっているが,格子間隔の周期性は下地と合っていない不整合構造をとることがわかっている[1].そこからさらに吸着量が増え,二層,三層と形成されていく中で,層はどのような構造変化をしながら,図2のようなバルクの構造に近づいていくのかを知ることが,今回の研究課題である.
発表では,偏光解析法により測定した,二次元凝縮や飽和蒸気圧での発散が見られる吸着等温線を示し,同時に極微少電流低速電子線回折法(XLEED)により観察された回折像から吸着層がどのような構造変化をするかについて明らかにしていく.
[1] J. Unguris, L. W. Bruch, E. R. Moog, and M. B. Webb, Surf. Sci. 87, 415 (1979)