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XLEEDによるAg(111)上のXeの圧縮についての観察

荒川研究室 95-041-038 戸坂 亜希


 原子的に十分均一かつ平坦な表面上では、物理吸着した分子の系は多くの場合、擬似的に二次元的なふるまいをすることが知られている。吸着量が少ないときは、物理吸着した分子は下地の表面上を自由に動きまわり、二次元気相とみなせる。やがて吸着量が増えると吸着分子同士が凝縮し、一定の間隔を持つ二次元固相の島をつくり、やがて一分子層ができる。この二次元の気相から二次元の固相への相転移を繰り返しながら一層、二層、…と成長しバルクに近づく。
 荒川研究室ではAg(111)表面上にXeを吸着させ、その成長の様子をXLEED(極微少電流低速電子線回折法)と偏光解析法を用い観察している。本研究では主にXLEEDにより得られた結果を報告する。XLEEDとは表面を観察するLEEDの入射電子電流を極限までおさえ、試料への影響を極力少なくした方法である。Fig. 1 にXLEEDパターンを示す。Ag(111)上のXeは、下地に対して不整合だが配向のそろった構造をとることがわかった。Fig. 2 にXLEEDパターンのXeのスポットの位置の変化より求めたXe原子間距離を示す。一層目の凝縮が起こった直後では、Xe原子間距離はバルクに比べて大きい。これはXeの二次元配列の凝集エネルギーを考えると妥当である。また、二層目直前に圧縮が確認できた。これは圧力の上昇による化学ポテンシャルの増加に伴うものだと考えられるが、化学ポテンシャルだけでは圧縮の増加を説明できない。他にも一層目の上に存在する二次元気相や、XeとAgの距離の変化により生じる誘起双極子モーメントの変化などの影響などが考えられる。二層目形成直前の圧縮以後Xeの原子間距離は、ほぼバルクの値を保っているようにみえるが、この時のバルクの値からのずれが、測定の系統的な誤差か、あるいは意味のあるずれかどうかは現在検討中である。
 この研究では吸着Xe原子同士の圧縮の様子が得られたが、今後はXLEEDをさらに活用し、XeとAgの距離がどう変化するかという点も明らかにし、圧縮の原動力を明らかにしたい。また偏光解析法で得られた結果も利用し、層の成長機構を解明したい。