荒川研究室 97-041-060 見嶽太朗
Ag(100)面に物理吸着したXe層の成長過程とその構造を、偏光解析法と極微小電流低速電子線回折法(XLEED)により観察した。偏光解析法は、入射光と反射光との偏光状態の変化から、表面の吸着量を測定する手法である。またXLEEDは、電子を結晶に入射させその構造を反映した回折スポットにより表面構造を観察する手段である。この発表では、Ag(100)上のXe層で発見された二種類の成長方位について報告する。
一つめのXe吸着層のXLEED像をFig. 1(a)に示す。外側の四回対称のスポットはAg(100)面によるもので、内側の十二回対称のスポットはXeによるものである。Xe吸着層は周期性が下地と一致していない不整合な構造をとるが、その方位は下地に揃う。Fig.
1(b)はその構造である。吸着層の六方格子は、その基本ベクトルの一つがAg(100)面の[011]又は[011]に沿う二通りの方位をとる。これはAg(100)面の段差がその方向に走っており、そこを核としてXe層が成長するためと考えられる。
また、この配列とは別にXe吸着層の基本ベクトルの一つが[010]又は[001]に沿った配列が現れることを発見した。そのXLEEDパターンがFig.
2(a)である。この構造をFig. 2(b)に示す。下地の基本ベクトルに対して吸着層の基本ベクトルの一つが15°回転している。この配列が現れる要因として、[1]成長初期の核形成時の温度や圧力に特定の条件がある、[2]下地の段差が隠された場合に起きる、[3]Type
Iの領域の境界部分で現れる、などが考えられる。現在これを実験的に明らかにすることを試みている。