審議検討に係る情報の公開(意思形成過程情報の情報公開について)
(最高裁平成6年3月25日第2小法廷判決・判例百選Ⅰ 38事件)
担当者 北村 浩嗣
事実の概要
京都市に事務所を置く市民運動団体(X)が、鴨川の河川管理者である京都府知事(Y)の設置した鴨川改修協議会に提出されたダムサイト候補地点選定位置図(以下、本件文書)の公開を京都府情報公開条例(以下、本件条例)に基づいて請求したところ、Yは本件文書について、本件条例5条6号に該当する公文書にあたるとしてこれを非公開とする旨の決定をしたため、Xは右非公開決定の取消を求める訴訟を起こした。
この本件文書はダム構想の検討資料として担当部課が25000分の1の地形図を元に鴨川流域において貯水可能な地形を選定し、当該地点20箇所を流域図に整理番号を付して示したものであり、「ダムサイト候補地点選定位置図」と称するものの、地質等の自然条件や用地確保の社会的条件についても全く考慮されておらず、ダムサイト候補地点としても未成熟な初期段階の資料である。
第1審判決(京都地判平3・3・27): 原告請求認容(本件不開示処分は違法)
「公開条例は・・・民主主義の根幹をなす、知る権利を具体化する立法であって、その重要性に照らすと、公開を原則とすべきものであり、・・・厳格に解釈しなければならない。そしてこの解釈基準に照らすと、公開条例5条6号前段が意思形成過程の情報であって、『公開することにより、当該若しくは同種の意思形成を公正かつ適切に行うことに著しい支障が生じるおそれのあるもの』につき非公開を決定し得る旨を規定しているのは、次の趣旨に解するべき」とし、本件公開条例5条6号前段の非公開の基準について、「行政における内部的な審議、検討調査研究等が円滑に行われることを確保する観点から情報公開の適用除外事項を定めたものであって、行政における意思決定は、・・・その間の行政における内部情報の中には、担当者レベルの検討素案や機関として未決定の検討案のように未成熟な情報や内部的な検討材料として外部から得た資料が多く含まれており、これを公開すると、府民に無用の混乱や誤解を生じさせたり、一部の情報利用者にのみ不当な利益、不利益を与えたり、行政内部の自由かつ率直な意見の交換が妨げられたり、内部的な検討のための必要な資料が得られなくなるので、これを阻止しようとするところに本号の趣旨がある。」とした。
そして、意思形成過程の公文書の公開除外には、「①行政内部で審議中の案件又は内容の正確性の確認を終了していない資料等で、公開することにより、府民に無用の誤解や混乱を招くおそれのある情報、②調査研究の結果等又は統一的に公にする必要のある計画、検討案等で、公開することにより、請求者等の特定のものに不当な利益を与えるおそれのある情報、③行政内部の会議、意見交換の記録等で、公開することにより、行政内部の自由な意見又は情報の交換が妨げられるおそれのある情報、④事務、事業の企画、検討等のために収集した資料等で、公開することにより、行政内部の審議等に必要な資料を得ることが困難になるおそれのある情報」の4つのパターンがあるとした。
他方、イ「情報公開の民主制社会における重要性」と、ロ「住民自治の理念」から「府政の意思形成過程への住民参加を保護すべきことが要請されている」という公開の必要性を2点提示し、これと公開の除外との比較衡量において、「ここにいう行政の適切な意思形成の『著しい支障』は、客観的にかつその著しい危険の高度の蓋然性が存在しなければならない」とした。
以上を規定したうえで本件文書が5条6号前段に該当するか否かを検討し、「本件文書は、・・・被告職員が、2万5000分の1の地形図を基に、・・・机上で貯水が可能な地形をダムサイト候補地点として、20か所を選定し、これを・・・概要図に整理番号を付して記載したものであって・・・これが協議会にダムサイト候補地点選定位置図として提出されたことが認めら」れるとして、本件文書は条例5条6号所定の意思形成過程文書であるとした。
しかし、「本件文書は、・・・ダムサイト候補地点を20箇所も概要図に整理番号で書き込んだものにすぎず、それ自体からして既に被告主張(*)のような誤解を生む蓋然性は乏しく、その高度の蓋然性があるとは認められないし、また、本件全証拠によっても、右の誤解による事実に基づかない議論が高まることが客観的かつ高度の蓋然性を持って認めるに足る的確な証拠がない」として、本件文書は本件条例5条6号前段に該当しないとした。
*被告の主張
ダムサイト候補地点を公表すれば・・・・
1:あたかもダム構想が決定されたかのように誤解され、住民の間に事実に基づかない議論が始まる
2:土地の投機的取引を助長する
3:ダム建設反対運動などにより鴨川改修協議会員に心理的圧迫を与えるおそれがある
4:たとえ、ダムサイト建築が放棄された後でも、意思形成過程の情報が公開され得るとすれば、同種の協議会での忌憚のない議論に支障が生じる
第2審判決(大阪高判平5・3・23): 原判決取消(本件処分は相当。Xの請求棄却。)
判旨は、①協議会について、「鴨川の改修に関して、忌憚(きたん)のない意見の交換・積み重ねを通じて公正かつ適切な提言の取りまとめを図る趣旨から、その会議を非公開として、・・・第一回開催時、各回の会議終了後審議内容の概略を発表することを決めた」こと、②協議会において、「鴨川の治水対策の基本となる安全度については、大都市を流れる川であることから、100年に一度起こりうるとされる豪雨を対象とすることとし・・・土地利用の現状や都市景観の保全、治水事業の効果などを総合的に考慮して・・・ダム構想、分水路構想、二階河川構想等の方式が検討なされた」こと、③本件文書が、「ダムサイト候補地選定の重要な要素となる地質・環境等の自然条件や用地確保の可能性等の社会的条件についての考慮を全く払うことなく、作られたものである」こと、④ダム構想のあること、その図面が協議会に提出されたことが発表された結果、 「協議会委員に対し、ダム建設について、交渉を申し入れる団体や面談を強要する者があり、また、協議会委員宅に無言電話があり、また、電話で種々強い調子で申し入れをする者が現れ、委員の中には、その職を辞任したい意向を示す者がいた。河川課に対しても、ダム建設について交渉を申し入れる者がいた」こと、等の事実認定をしたうえで、本件文書は、「協議会の意思形成過程における未成熟な情報であり、公開することにより、府民に無用の誤解や混乱を招き、協議会の意思形成を公正かつ適切に行うことに著しい支障が生じるおそれのあるものといえる」とし、控訴人(被告府知事)が本件文書を公開条例5条6号前段該当の文書として非公開の決定をしたのは相当であるとした。
最高裁判決: 上告棄却
第2審判決をそのまま是認したため、省略。
関連判例
安威川(あいがわ)ダム訴訟
事実の概要
大阪府の住民(X)が、大阪府が茨木市に建設計画中の安威川ダムのダムサイト調査資料の公開を大阪府公文書公開条例(本件条例)に基づき請求したところ、同条例所定の実施機関である大阪府知事(Y)が、本件条例8条4号に基づいて調査の担当者名および調査の実質的内容を記載した部分を非公開とする部分公開決定をしたため、Xが非公開部分にかかる決定の取消を求めて訴訟を起こした。
この資料は1971年度から1983年度に地質調査専門会社に委託して実施した安威川ダムサイト地質調査報告書のことである。
第1審判決(大阪地判平4・6・25): 原告請求棄却
まず、ダム建設事業において、「事業推進に当たっては、一般の公共事業以上より一層地元の意向を尊重しなければならないという特殊性が存する」とダム建設事業の特殊性を述べた上で、本件文書には「本件地質調査についての担当者名のほか、調査地域の地形、地質状況、ボーリングコアの観察結果、・・・各調査に基づく調査地域のダムサイト予定地としての適格性についての比較検討・・・」等が記録されており、「本件非公開情報はいずれも本件条例8条4号の『府の機関・・・が行う調査研究、企画、調整等に関する情報』に該当すると認められる」と8条4号前段に該当するとした。
次に同号後段部分については、①「地元住民は一貫して本件ダム建設反対の立場を維持しており、地質調査に対する協力を得ることも非常に難しい状況が存していた」こと、②「本件処分の時点では地質総合解析が行われていたが、・・・新たなボーリング等の追加調査が必要とされる」こと、③「本件公開請求について、・・・各自治会は、本件公開請求に係る文書の公開に反対し、・・・大阪府からの協議申し入れにも応じなくなった」ことなどの事実から、「本件非公開部分を公開すれば、地元住民の強い反発を招き、その後の調査や生活再建対策、地域整備事業等についての地元の理解、協力を得られなくなるおそれがあっものということができ、・・・本件処分時点においては、実施済みの地質調査は、十分なものではなく、情報そのものが限定されているため、同時点で、本件予定地全体の地質状況について、一応の判断を下すことは格別、最終的判断を下すには、いまだ必ずしも十分ではない段階にあったものと認められる」とした。さらに、公開されると、「それが必ずしも最終的判断とみなすことができるものではないにもかかわらず、一人歩きし、地元住民等の関係者の間に不安を引き起こし、今後の地質調査や各種協議等への非協力につながるおそれがあった」といえ、ダム建設事業の遂行が困難になるから、本件非公開部分を、「『公にすることにより、当該又は同種の調査研究、企画、調整等を公正かつ適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれ』が存した」といえるとした。
また、原告の、本件条例8条4号の「著しいおそれ」は、具体的かつ客観的に存するべき、という主張に対して、府の条例の精神から見ても、「単に実施機関が自らの立場で主観的に判断したところに従うべきでなく、客観的、具体的に存在していることが必要である」が、非公開による弊害や公開による有用性等を総合的に検討することまでは必要でない、とした。
第2審判決(大阪高判平6・6・29): 原判決取消
本件の非公開情報は本件条例8条4号前段に該当する、とした上で、8条4号該当性
について、まず、「本件非公開情報は、専門家が調査した自然界の客観的、科学的な事実、及びその分析であると推認されるのであり、その情報自体において、安威川ダム建設に伴う調査研究、企画などを遂行するのに誤解が生じるものとは考えられない。・・・本件非公開情報は、外部の地質調査専門会社に外注して得られたものであって、それ自体としては完結した地質調査結果であり、大阪府の純粋な内部文書ではない。・・・そのことを前提として評価されるべきものであるし、またそのようにしか評価できないものである。・・・本件非公開情報を公開することによる誤解が生じるものとは、認め難い」とし、その結果、「本件非公開情報を公開することにより、安威川ダム建設の調査研究、企画などを公正かつ適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれがあったものとは認められず・・・本件条例8条4号後段の要件を充足するものではない」とした。
最高裁判決: 上告棄却
第2審判決をそのまま是認したため、省略。
この2つの事例で最高裁の判断が分かれたポイント
◎ 請求対象となった公文書の性格の違い
鴨川―専門的検討を経ていない情報
安威川―専門的検討を経た科学的事実に関する情報
◎ 著しい支障が生じるおそれの判断
鴨川1審―未成熟な資料だからこそ、ダム構想が決定されたかのような誤解などは生まないだろう。
協議会委員への心理的圧迫などは、情報公開理念と住民参加の重要性から、あえて排斥する。
鴨川2審・最高裁―ダム構想公表後の反対運動の広がりから本件処分時では、いまだ無用の誤解や混乱を招き、協議会の意思形成を阻害するおそれがあった。
安威川1審―調査資料は客観的かつ科学的な分析である。しかし地元住民は一貫して建設に反対であり、もし調査資料を公開したならば情報が独り歩きし、今後の調査や協議等への非協力につながるおそれがあった。
安威川2審・最高裁―当該資料自体は誤解を生むような性質のものではないことに重点を置き、地元住民の反対は、右資料の公開に直接起因するものとは認めがたいと判断した。
関連判例2
逗子市住民監査請求記録の情報公開
事実の概要
逗子市民Aは昭和59年3月17日、同市池子(いけご)弾薬庫跡地内に所在した町道等の管理に関し住民監査請求を行った。また昭和60年2月14日、同様の監査請求が行われた。しかし、いずれについても請求に理由がないとの監査結果が出された。このため監査請求人は国に対し住民訴訟を提起したが、横浜地裁は平成3年8月28日請求棄却判決を下した。逗子市民Xは平成4年3月31日、逗子市情報公開条例8条に基づき、実施機関たる逗子市監査委員Yに対し、前期昭和59年および60年の住民監査請求に係る一件記録の公開を請求した。Yは、横浜地方法務局横須賀支局職員、大蔵省関東財務局横浜事務所横須賀出張所職員、および横浜防衛施設局施設部職員等から監査の判断資料にするため聴取した発言内容等に関する記録等について非公開とする公開拒否処分を行った。当時、本件別訴は東京高裁に継続中であったため、Yは、本件各文書が条例5条2号ウの非公開自由に該当すると理由を付した。そこでXは本件各文書が条例の非公開自由に該当しないとして本件処分の取消を請求した。Yは訴訟において、本件各文書が条例5条2号アにも該当すると追加主張した。
*この判例は多くの問題を含んでおり、意思決定過程情報に関して判断した最高裁判例の部分をここでは紹介します。(これこそ情報不開示!?)
最高裁判決: 破棄差し戻し
「本件各文書は、逗子市監査委員が59年監査請求又は60年監査請求につき監査を行い、これらに理由があるか否かなどを決定するための資料とする目的で収集した情報であるから、逗子市の機関内部における意思決定過程における情報に当たるものと解される。したがって、これが本件条例5条(2)アの規定に該当するか否かは、これを公開することにより公正又は適正な意思決定を著しく妨げるか否かにより決定されることになる。」として、まず、意思決定過程情報に当たるとし、次に、「右規定にいう『意思決定を妨げる』とは、当該意思決定それ自体を妨げることのほか、将来における同種の意思決定の障害となることも含まれるものと解するのが相当である。そして、当該情報を公開することにより、今後行われることのあるべき同種の意思決定のための資料の収集に支障を生ずることも、これに含まれると解される。」として、条例の解釈を示した。
そして、「右のような観点から検討すると、上告人の主張に照らせば、逗子市監査委員が監査を行うための資料として関係行政機関の職員から事情を聴取した結果を記載した文書の中には、地方自治法242条が監査記録を公開することを予定していないため、同監査委員限りで参考にするにとどめ公開しないことを前提として提供された機密にわたる情報が含まれている可能性があり、仮にそのような情報が含まれているとするなら、これを無条件に公開することは、関係行政機関との間の信頼関係を損ない、将来の同様の事情聴取に重大な支障を及ぼし、公正又は適正な監査を行うことができなくなるおそれがあるものというべきである。したがって、そのような情報は、本件条例5条(2)アに該当するとして、これを非公開とすることが許されるものというべきである。」
「ところが、原審は、本件各文書が当該監査の意思決定を妨げることがなく、監査委員の調査の結果を公開することが一般的に公正適正な監査の意思決定を妨げることになるとも認められないとの理由をもって、本件各文書に将来の監査における意思決定を著しく妨げるおそれのある情報が含まれているか否かを具体的に検討することなく、これらが右規定に該当しないと断じたものであるから、右判断には、本件条例の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。」
「以上によれば、前記のとおり理由付記に関する本件条例の解釈適用を誤り、また、右のとおり本件条例5条(2)アの解釈適用を誤った結果、本件各文書には右条項に規定する非公開事由があるという上告人の主張を排斥した原審の判断には、違法があり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるというべきである。」と判断した。
行政情報の非公開事由
1:事務事業執行情報
2:意思形成過程情報
3:国際協力関係情報
4:社会的障害防止情報
5:合議制機関情報
そして行政情報ではないものとして
1:個人に関する情報
2:法人に関する情報
がある。
私見
各判例の最高裁の意見に賛成。
鴨川の事件のようなものであれば、行政としても責任をもてない資料だと思うので、ああいった判断で良いと思うが、あの程度の資料で何年も争うのであれば、きちんと説明をつけて公開するという手段もあるのではないかとも考える。
関連条文
京都府情報公開条例
第5条(公開しないことができる公文書)
実施機関は、次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については、公文書の公開をしないことができる。
(1)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、個人が特定され得るもののうち、通常他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの
(2)法令、条例又は法律若しくはこれに基づく政令の規定に基づく明示の指示に基づき公開することができないとされている情報
(3)法人(国、地方公共団体その他これらに類する団体を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の財産若しくは生活に対して重大な影響を及ぼす違法若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)
(4)府が国、他の地方公共団体その他これらに類する団体(以下「国等」という。)と協力して行う事務又は府が国等から依頼、協議等を受けた事務に関して作成し、又は取得した情報であって、公開することにより、国等との協力関係又は信頼関係を著しく害すると認められるもの
(5)実施機関(知事を除く。)、府の執行機関の附属機関その他これらに類するもの(以下「合議制機関等」という。)の会議に係る情報であって、公開することにより当該合議制機関等の公正若しくは円滑な運営が損なわれるため議事運営に関する規程若しくは議決によりその全部若しくは一部について公開しない旨を定めているもの又は公開することにより当該合議制機関等の公正若しくは円滑な運営が著しく損なわれると認められるもの
(6)府若しくは国等が行う審議、検討、調査研究その他の意思形成の過程における情報であって、公開することにより、当該若しくは同種の意思形成を公正かつ適切に行うことに著しい支障が生ずるおそれのあるもの又は府若しくは国等が行う取締り、監督、立入検査、試験、入札、交渉、渉外、争訟、許認可その他の事務事業に関する情報であって、公開することにより、当該若しくは同種の事務事業の目的が達成できなくなり、若しくはこれらの事務事業の公正かつ適切な執行に著しい支障が生じるおそれのあるもの
(7)公開することにより、個人の生命、身体、財産等の保護又は犯罪の予防、犯罪の捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生じると認められる情報
(8)公開しないことを条件として任意に個人又は法人等から府に提供された情報であって、承諾なく公開することにより、府と当該個人又は法人等との協力関係又は信頼関係を害すると認められるもの
大阪府公文書公開条例
第8条 (公開しないことができる公文書)
実施機関は、次の各号のいずれかに該当する情報か記録されている公文書については、公文書の公開をしないことができる。
(1) 法人(国及び地方公共団体その他の公共団体(以下「国等」という。)を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の財産若しくは生活に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)
(2) 公にしないことを条件として任意に個人又は法人等から府の機関に提供された情報であって、当該個人又は法人等の承諾なく公にすることにより、当該個人又は法人等の協力を得ることか著しく困難 になると認められるもの
(3) 府の機関が国等の機関と協力して行う事務又は府の機関が国等の機関から依頼、協議等を受けた事務に関する情報であって、公にすることが当該協力して行う事務又は当該依頼、協議等の条件及び趣旨に反すると認められるもの
(4) 府の機関又は国等の機関が行う調査研究、企画、調整等に関する情報であって、公にすることにより、当該又は同種の調査研究、企画、調整等を公正かつ適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれのあるもの
(5) 府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、交渉、渉外、争訟等の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成てきなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの
(6) 公にすることにより、個人の生命、身体、財産等の保護、犯罪の予防又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすと認められる情報
逗子市情報公開条例(平13・4・1施行)
* この条例は改正前のものが見つからなかったため、改正後のものを載せました。
本文と条文番号が違い、参考にならないかと思いますが御容赦ください。
第5条(情報の公開義務)
実施機関は、第9条の手続による公開請求のあったときは当該情報を公開しなければならない。
2 実施機関は、前項の規定にかかわらず公開請求に係る情報に次の各号のいずれかに該当する情報(以下「非公開情報」という。)が記録されている場合には、これを非公開とすることができる。
(1) 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの。ただし、次に掲げる情報は除く。
ア 何人でも法令の定めにより閲覧することができるとされているもの
イ 本人が公表することを目的として作成し、又は取得したもの
ウ 公表することを目的として作成し、又は取得したもの
エ 公務員(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員及び地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員をいう。)の職務の遂行に関する情報のうち、当該公務員の職及び職務遂行の内容に係るもの
オ 人の生命、身体、健康、財産、生活又は地位を保護するため、公開することが必要であると認められるもの
(2) 法人(国及び地方公共団体は除く。)その他の団体
以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することによ
り、当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が明らかに損なわれる
と認められるもの。
(3) 市が実施する事業又は事業に関する情報であって、公開することにより当該事務又は事業の公正又は円滑な執行に著しい支障を来す情報で次に掲げるもの
ア 市の機関内部若しくは機関相互又は市の機関と国等(国又は他の地方公共団体をいう。以下「国等」という。)の機関との間における調査、研究、検討、審議等の意思決定過程における情報であって、公開することにより公正又は適正な意思決定を著しく妨げるもの
イ 市又は国等の機関との間における照会、回答、依頼、委任、協議等に基づいて作成し、又は取得した情報であって、公開することにより国等との協力関係を著しく損なうもの
ウ 市又は国等の機関が行う監査、検査、取締り、徴税等の計画又は実施要領、渉外、争訟及び交渉の方針、試験問題、採点基準、用地売買収計画その他市等の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、公開することにより当該事務若しくは事業又は将来の同種の事務若しくは事業の目的を失わせるもの又は公正かつ円滑な執行を著しく妨げるもの
エ 公開することにより、公共の安全及び秩序の維持並びに人の生命、身体、健康、財産、生活又は地位の保護に支障が生じるもの
(4) 法令若しくは条例の規定又は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第2項及び第3項の規定による基準その他実施機関が法律上従う義務を有する国又は都道府県の機関の指示により公開することができないとさ れているもの
情報公開法
第五条 (行政文書の開示義務)
行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
一 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
イ 法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報
ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報
ハ 当該個人が公務員等(国家公務員法 (昭和二十二年法律第百二十号)第二条第一項 に規定する国家公務員(独立行政法人通則法 (平成十一年法律第百三号)第二条第二項 に規定する特定独立行政法人の役員及び職員を除く。)、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律 (平成十三年法律第百四十号。以下「独立行政法人等情報公開法」という。)第二条第一項 に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)の役員及び職員並びに地方公務員法 (昭和二十五年法律第二百六十一号)第二条 に規定する地方公務員をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分
二 法人その他の団体(国、独立行政法人等及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。
イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
ロ 行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの
三 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
四 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
五 国の機関、独立行政法人等及び地方公共団体の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
六 国の機関、独立行政法人等又は地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
イ 監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
ホ 国若しくは地方公共団体が経営する企業又は独立行政法人等に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ
参考文献
情報公開法制 藤原静雄
情報公開法の理論 宇賀克也
情報公開法 右崎正博・田島康彦・三宅弘
判例時報1463号
法学教室201号
法律時報69巻1号
判例タイムズ890・828・775号