平成7年度重要判例解説 2002・6・6
内申書の開示請求
担当:北村・中村
≪大阪地裁平成6年12月20日判決≫
Ⅰ:事実の概要
市立中学3年に在学し公立中学校に進学を希望していたX(原告)は入学願書提出に先立ち志望校決定の参考資料にするため、高槻市個人保護条例(以下、本件条例)に基づき、平成3年1月7日に、平成3年度大阪府公立高校選抜実施要綱に基づく内申書(以下、本件内申書)が作成される以前に交付決定をして欲しい旨を書き添えて、市教育委員会Y(被告)に対して自己の本件内申書の開示を請求したところ、1月16日Yは、本件内申書はYの管理する文書の中には存在しない旨の通知を行った(本件不存在通知)。Xはこれに対して異議申し立てを行い、Yの諮問を受けた市個人情報保護審査会は2月28日本件条例13条2項2号、3号の非開示事由がないとして開示の答申を行った。にもかかわらずYは異議申し立てを6月7日に棄却した。Xはすでに志望校に合格し進学していたが、異議申し立ての棄却決定後、不存在通知の取消しと、精神的苦痛による慰謝料の請求を求めて提訴した。
Ⅱ:Xが本件内申書作成以前に交付決定を要求したことの意
大阪府では高校選抜実施要綱に基づき内申書の扱い方法が定められていた。内申書作成時期は2月下旬で、送付時期は3月9日正午までに志望校に送付としてある。では、なぜXは本件条例に基づいて開示請求したのだろうか?
本件条例18条1項には開示請求に対しての返答は[15日以内]にすると規定されている。つまり、15日間は返答しなくてもいいと解せるであろう。つまり、2月下旬の作成から3月9日の送付まで15日あれば終わってしまう事態になる。そうなってしまうと、志望校決定の際の参考資料にするという目的を達成できなくなってしまう。そこでXは本件条例13条によって早めに交付決定をして欲しいと請求したのである。
Ⅲ:開示請求に対する審査会と市教育委員会の意見の比較
審査会の意見:
① 作成されてから開示請求をしても送付前の開示はXの目的を達するには日数的に困難であるが、本件の場合は1月の段階で請求している。この場合においては、予め開示請求をすることを認めても良い。
②教師が確信と責任を持って評価したことだけが内申書に記載されるのであれば開示によって親と生徒と教師の信頼関係は崩れることはないから開示すべきである。
〓本件条例13条2項の適用除外事項に該当せず
市教委の意見:
①内申書は3月上旬には高校に送付されるため、仮に本件不存在通知が実質的には通知があったが開示しなかったという非開示決定処分であったとしても、内申書は適用除外事項を定めた本件条例13条2項に該当する
〓非開示決定は適法
Ⅳ:当事者の主張
X側:
①憲法13条がプライバシー権を認めていることは判例も認めているこれにより生徒が自分の内申書を見る権利も導き出せる
②教育情報を生徒本人が見る権利は憲法26条の教育を受ける権利でも認められている。
③内申書を本人が見てただちに信頼関係が崩れるなどの弊害は生じるとはいえない。
〓内申書は条例が例外的に認める非開示文書には含まれない。よって非開示は違法
Y側:
①プライバシー権は実定法上で定められた権利でない。本件のような個人情報の開示請求権は条例で創設された権利である
② 内申書を本人に開示すれば内容の公平さを守ることができなくなるなどの弊害が生じる。
〓内申書は条例が非開示と定める文書に含まれるから、開示拒否決定は違法でない。
Ⅴ:内申書の様式
① 身分事項欄(姓名etc)
② 各教科の学習の記録
③ 身体の記録
④ 総合所見:要綱によれば、学習・活動・性格・行動などについて、その特質を明らか にすると思われる事項・指導上必要な事項を記入
Ⅵ:大阪地裁平成6年12月20日判決 不存在通知取消し請求につき訴え却下・慰謝料請求につき請求認容
本件不存在通知の行政処分性について、本件調査書の開示請求に対するYの拒否処分であるとしてその行政処分性を認めた。本件不存在通知の取消しを求める訴えの利益の点については、高校入試の終了やXの高校進学によっては取消しを求める法律上の利益が失われないとしたが、開示段階において現に実施機関において管理する文書に限られるとして、本件調査書がYの管理の下に存在していない以上、取消しを求める利益がないとして、Yに対する本件不存在通知取消しの訴えを却下した。本件調査書の非開示事由該当性については、情報開示請求権が憲法13条、26条から直接発生する権利ではなく、条例により創設的に認められた権利であるとした上で、本件調査書の総合所見欄については非開示事由の該当性を認め、それ以外の欄についてはこれを否定し、総合所見欄以外の欄を開示しなかった本件不存在通知の違法性を認めた。また、被告市教育委員会が原告の出願期限までに本件調査書を開示するとの決定をしなかったことを違法とし、これにより原告が被った精神的苦痛について、被告高槻市に対する慰謝料5万円の請求を認容した。
一審で訴えが却下された部分のみ、X控訴。
① 本件条例13条1項の対象は開示段階で実施機関において管理する文書等に限られる。本件内申書が既にYの下に存在していない現在、本件処分が取り消されてもXは、同項により本件内申書の開示を受けることはできなくなっている。そのため、原告には本件不存在通知の取消しを求めることは利益をなさない。
② 本件条例の開示の対象としているのは「公文書」でなく[個人情報]とXは主張するが、どのように解するのか?
⇒高槻市情報公開条例2条において『公文書』の規定がある。公文書とは『実施機関の職員が職務上作成又は取得した文書等で実施機関において管理するもの』と規定。Xのように本件条例での開示の対象は公文書そのものでなく、記録されている『個人情報』と解する余地はない。
③ 内申書の開示―とりわけ総合所見の記載の内容は抽象的・概括的で広範囲に及びこれを開示することで様々な弊害が起きうる。もし開示してしまうならば、弊害を恐れて「総合所見」の記載を抑制することにつながる。結果、形骸化してしまい客観性、公平さがなくなる恐れ。
結論:「総合所見」以外の内申書の内容は本件条例13条2項1号の非開示事由に該当しないとし、「総合所見」以外は開示の義務があった。しかし、開示しなかったことは違法であり慰謝料請求の方は認めた。
⇒これに対しXは一審で却下された部分について控訴した。(尚、控訴審は一審とは争点は違うので参考に載せてある)
Ⅶ:大阪地裁判決事件の争点
1:本件不存在通知には処分性があるか?Xはその取り消しを求め
る法律上の利益があるか?
2:Yのした本件不存在通知は適法か?すなわち本件調査書には条
例で定める非開示事由があるか?
3:Xからの異議申し立てに対しYは大阪府公立高校の入学願書受
けつけ期限である平成3年3月7日の前日までに決定をすべきだっ
たか?また、それまでしなかったことに対して慰謝料支払いはある
か?
Ⅷ:控訴審 大阪高裁平成8年9月27日判決
<控訴理由> 控訴理由として主に次の3点が挙げられる。①本件不存在通知の処分性、②本件不存在通知の取消しを求める訴えの利益、③本件不存在通知の違法性…についてである。
1 内申書はその性質上、作成前に開示請求をし、被控訴人による事前決定がなければ開示の目的を達することができないものであるが、本件調査書は、被控訴人が開示するか否かの判断を調査書作成前に行うことが可能であった。控訴人としては、文書が存在していない段階で事前に開示請求をするほかなく、被控訴人の事前決定を得ることができなければ、本件調査書について、本件条例の定める自己情報コントロール権を確保することができない。条例18条5項は同条1項の期間内に開示等をしないこととする処分があったものとみなすと規定しており、実施機関の沈黙を非開示処分とみなしている。本件不存在通知はこの沈黙を確定する行為に当たるとも言えるのである。
2 控訴人が志望先高等学校に合格して進学したことは、法律上の利益の存在を否定するものではない。 また、本件条例19条2項は「自己情報の開示は、実施機関が前条第3項に規定する通知において指定する日時及び場所において、当該自己情報が記録された公文書を閲覧に供し、又はその写しを交付する方法により行うものとする。」と規定している。本件で非控訴人は、本件調査書の写しを作成して保管しているから、本件不存在通知が取り消された場合には、本件調査書の写しを開示することが可能であり、訴えの利益がないとすることは出来ない。
3 本件調査書は入学者選抜に絡むものなので、その憲法上の保護を制限するには相当厳格な理由・必要性が求められるが、本件不存在通知は合理的な理由がなく、憲法13条に違反する。また、教育情報の開示請求権は教育を受ける権利に内在しており、本件調査書を本人に開示しないのは憲法26条違反となる。内申書総合所見欄の開示の必要性については、これが開示されていないために、バラツキが生じ学生生活全般を萎縮させる効果を持つなどの弊害が発生している。そして総合所見欄の開示によって学校教育活動や高校入試に障害が発生するものではなく、開示を望む者に対して、信頼関係が損なわれるとの理由で開示を拒むことは不合理である。
<控訴審> 控訴棄却
争点(1)本件不存在通知は行政処分にあたるか。(2)本件不存在通知の取消しを求める法律上の利益があるか(3)被控訴人のした本件不存在通知は適法か。
・本件不存在通知の行政処分性について 一審判決と同様、本件不存在通知をXの本件調査書の開示請求に対する拒否処分と認め、個人の地位、利益、権利関係に影響を及ぼすものとして行政処分性を肯定した。
・本件不存在通知の取消しを求める訴えの利益の点について 基本的には一審判決と同様に高校入試の終了によっては法律上の利益が失われないとしたが、本件調査書が既に公立高等学校長に送付ずみでたまたま本件調査書の写しを作成保管しているというだけでは、Yが本件調査書を保管も管理もしているということにはならないとして取消しを求める訴えを却下した。したがって、控訴審判決は、本件調査書の開示請求の当否については判断をしなかった。
Ⅸ:補足~内申書を公開することのメリット・デメリット
政府機関の持つ自己情報の開示請求は、それにより本人に不利益がある場合・他のプライバシーを害する場合を除く情報をみるのみできることである。
デメリットはマイナス評価は信頼関係を崩す危険性がある
⇒つまり、マイナス評価は見せ辛い。また、見せなければ見せないで生徒の疑心を生む可能性もある。
⇒一定の客観水準を作成し生徒に示すのはどうか?
=教師がマイナス評価を書きづらくなる。結果形骸化の恐れ
ただ、その評価には普段において指導すれば、生徒もある程度把握可能であろう。
(隠す意味での内申書の問題ではない)
⇒開示可能にしてしまうと、入試時期に請求が集中する恐れ。つまり、事務的作業に支障をきたす恐れがある。しかしこれによる非開示決定は不当。理由にならない
学説
・ 市川説(教育自己情報開示請求積極説)
①教育個人情報不開示制は根拠となる条文は存在せず、戦前から続いている教育界の慣行に基づくものである。
②国連の「子どもの権利条約」で確認された子どもの自己情報コントロール権としてのプライバシー権(16条、さらには28条1項dの教育情報へのアクセス権)と、学校と共に子どもの発達に働きかけていく第1次的な親の教育権(5条18条)の保障と、学校側が作成した資料にアクセスできない仕組みは両立しない。
③「開示することにより子ども・父母とのトラブルを回避するために無難な評価をして、教育制度の形骸化・空洞化になる」と、不開示派は主張するが、評価情報の当事者である子どもや父母に批判に耐えうる、開かれた教育専門性が目指されるべきであり、本人に伝達されないのは不条理であろう。
④内申書などの重要な教育評価記録が秘密になっていることが、子ども・親と教師間の信頼関係の阻害要因になっている。
⑤不開示制度のの元であっても、子ども本人の発達に悪影響を与えるような評価記載は、違法の疑いが強い。マイナス評価も、本人に反省と自覚を促す指導性のあるものであってこそ、教育的に公正であろう。
・ 下村説(教育自己情報開示請求消極説)
① 教育情報本人開示を全面否定する説ではない。当面必要なことは、開示の対象にできる情報とできない情報との線引きをして、学校側の動揺を押さえ、事務量の急増を軽減すべきである。
② 通知表は、専ら子どもにやる気を出させるものなので表現には十分気を使う。指導要録には、本人や親に知らせると必要以上に気にするかもしれないが、次の担任には心得ておいてもらいたいことは、指導要録に記載する。こちらは教師間のやり取りだから、表現にはさほど気を使わない。
進学先に送る内申書には、なるべく子どもの長所を選んで書くのだが、人見知りの多い子などには面接で不利にならないよう、一筆加えたくなるし、家庭の理由で欠席の多かった子については、その理由にも触れておきたいというのが担任の気持ちであろう。しかし、これが親の耳に入って、余計なことを書いたとか、家庭のプライバシーに触れたという抗議を受けた例もある。
前述のとおり、通知表・指導要録・内申書はそれぞれ機能が違い、教師はそれに応じて書き分けている。これが、全面開示となると当たり障りの無い、通知表としても、指導要録としても、内申書としても舌足らずの一遍のものになってしまうのではないか。(事実、指導要録や内申書の「模範文例集」が数多く刊行されている)
・平松説
①
・通知表・指導要録・内申書
・通知表(票)
各学期における児童生徒の教育評価(学習の様子や行動の様子)、出席状況や健康状態および総合所見等を必要に応じ記したもので家庭(本人と親権者)に通知する文書。
・指導要録
児童生徒の在籍・卒業者の「学習及び健康の状況を記録した書類」(学校教育法施行令31条)で、校長の責任で作成・保管する学校文書である。(同法施行規則12条の3)。また、同法施行規則15条で学籍に関するものは20年間保存し、他表は特別の定めがなければ5年間保存するとある。作成は年次ごとに学級担任が行い、校長および学級担任が連名する。内容は、学籍に関する記録と指導に関する記録に分かれている。また、調査書の原簿的性格も持つ。
・調査書(内申書)
指導要録を基に作成された高校入学選抜資料のひとつ(学校教育法施行規則54条の3及び、59条の1)。調査書は、生徒が受験する高校に送付され中学には残らない。
調査書は、生徒や世間からは内申書として知られ、中学での教師と生徒の信頼関係を崩している元凶と指摘する教育関係者や当事者たる生徒、教師の声も大きい。生徒は、学業面ばかりか生活面(最近ではボランティア活動まで)まで評価されることに閉塞感を覚え、また心ない一部の教師の「内心に響く」発言によって学校や教師全体への不信を抱くようになる。
他の公共団体での対処
A 卒業生への指導要録全面開示
1992 大阪府箕面市(みのお)・川崎市
1993 福岡県・中野区
1994 神奈川県・東京都・西宮市・那覇市
1995 茨木市
1996 渋谷区
B 在校生を含む指導要録全面開示
1994 高槻市・吹田市
1995 千葉県・堺市・足立区
1997 目黒区
1998 小金井市
C 調査書(内申書)の全面開示
1994 逗子市・新潟市
1995 川崎市・ひたちなか市・千葉県
1996 大阪府
私見
この問題においては諸事情を考慮する必要がある。Xは普段私服で登校しておりそれにより学校が自分にどれくらいの評価をしているのかが知りたかったと思われる。従って、「信頼関係が崩れる」危険性というのは、自らが望んでいることなので問題にはならないと思う。また、「総合所見」を見るのが目的だと思われる。それらを考えると開示しても良かったと思う。また不存在通知は妥当性に欠く。
状況に応じて判断する
関連条文
高槻市情報公開条例
昭和61年10月3日条例第40号
目次
第1章 総則(第1条―第4条)
第2章 情報の公開(第5条―第13条)
第3章 雑則(第14条―第17条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、市の保有する情報の公開を請求する権利を保障することにより、市民の市政への参加を促進し、市政の公正で効率的な執行を確保するとともに、市民と市の信頼関係を強化し、市民生活の利便を増進し、もって地方自治の本旨に即した市政の発展と市民の知る権利の保障に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)情報 実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真、フイルム、スライド及び電子計算組織に係る磁気ファイルで、実施機関において管理しているもの(以下「公文書」という。)に記録されたものをいう。
(2)実施機関 市長、教育委員会、選挙管理委員会、公平委員会、監査委員、農業委員会、固定資産評価審査委員会、公営企業管理者、消防長及び議会をいう。
(公開しないことができる情報等)
第6条 実施機関は、次の各号のいずれかに該当する情報については、公開しないことができる。
(1)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
ア 何人でも法令の規定により閲覧することができる情報
イ 公表することを目的として作成し、又は取得した情報
ウ 法令の規定により行われた許可、認可、届出その他これらに相当する行為に際して作成し、又は取得した情報であって、公開することが公益上必要と認められるもの
(公開請求に対する決定等)
第8条 実施機関は、前条の規定により情報の公開の請求があったときは、当該請求を受理した日から起算して15日以内に、当該請求に係る情報の公開の可否を決定しなければならない。
2 実施機関は、前項に規定する期間内に同項に規定する決定を行うことができないことにつき正当な理由があるときは、その期間を15日を限度として延長することができる。この場合において、実施機関は、速やかに、その旨を同項に規定する請求をしたもの(以下「請求者」という。)に通知しなければならない。
(情報の公開の実施)
第10条 実施機関は、第8条第1項の規定により、請求に係る情報を公開することと決定したときは、速やかに、請求者に対し当該情報の公開をしなければならない。
2 情報の公開は、実施機関が第8条第3項に規定する通知において指定する日時及び場所において、当該情報が記録された公文書を閲覧に供し、又はその写しを交付する方法により行うものとする。
3 前項の規定にかかわらず、実施機関は、情報を公開することにより当該情報が記録された公文書が汚損し、又は破損するおそれがあるとき、第6条第4項の規定による情報の公開をするときその他相当の理由があるときは、当該公文書を複写したものを閲覧させ、又はその写しを交付することができる。
附則
1 この条例は、昭和62年4月1日から施行する。
2 この条例は、昭和62年4月1日以後に作成し、又は取得した情報について適用し、同年3月31日以前に作成し、又は取得した情報については、整理の完了したものから適用する。
高槻市個人情報保護条例
昭和61年10月3日条例第41号
目次
第1章 総則(第1条―第6条)
第2章 個人情報の収集等の制限(第7条―第12条)
第3章 自己情報の開示請求等の権利(第13条―第22条)
第4章 個人情報保護運営審議会(第23条)
第5章 個人情報処理受託者の義務及び事業者に対する指導、勧告等(第24条・第25条)
第6章 雑則(第26条―第29条)
第7章 罰則(第30条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、個人情報の保護に関する市、事業者及び市民の責務を明らかにするとともに、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定め、かつ、自己の個人情報に対する開示請求等の権利を保障することにより、公正な市政と個人の尊厳を確保し、もって市民の基本的人権の擁護に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)個人情報 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るものをいう。
(2)個人情報の収集等 個人情報の収集、保管及び利用をいう。
(3)実施機関 高槻市情報公開条例(昭和61年高槻市条例第40号。以下「情報公開条例」という。)第2条第2号に規定する実施機関をいう。
第3章 自己情報の開示請求等の権利
(開示の請求)
第13条 何人も、実施機関に対して、公文書(情報公開条例第2条第1号に規定する公文書をいう。以下同じ。)に記録されている自己に係る個人情報(以下「自己情報」という。)の開示を請求することができる。
2 実施機関は、次の各号のいずれかに該当する自己情報については、開示しないことができる。
(1)法令又は条例の規定により開示することができないもの
(2)個人の評価、診断、判定等に関する情報であって、本人に知らせないことが正当であると認められるもの
(3)開示することにより、公正かつ適切な行政執行の妨げになるもの
(4)公益上必要があると実施機関が審議会の意見を聴いて認めたもの
3 実施機関は、前項に規定する自己情報であっても、期間の経過により同項各号のいずれにも該当しなくなったものは、これを開示しなければならない。
4 実施機関は、公文書に第2項各号のいずれかに該当する自己情報とそれ以外の自己情報とが併せて記録されている場合において、当該該当する自己情報とそれ以外の自己情報とを容易に、かつ、開示の請求の趣旨を損なわない程度に分離できるときは、当該該当する自己情報が記録されている部分を除いて、自己情報を開示しなければならない。
(開示請求等に対する決定等)
第18条 実施機関は、前条の規定により自己情報の開示等の請求があったときは、当該請求を受理した日から起算して、開示の請求にあっては15日以内に、訂正、削除又は中止の請求にあっては30日以内に、当該請求に対する可否の決定を行わなければならない。
2 実施機関は、前項に規定する期間内に同項に規定する決定を行うことができないことにつき正当な理由があるときは、その期間を15日を限度として延長することができる。この場合において、実施機関は、速やかに、その旨を同項に規定する請求をした者(以下「請求者」という。)に通知しなければならない。
3 実施機関は、第1項に規定する決定を行ったときは、速やかに、当該決定の内容を請求者に通知しなければならない。
4 前項の場合において、実施機関は、請求に係る自己情報の全部又は一部の開示、訂正、削除又は目的外利用等の中止をしないことの決定を行ったときは、その理由を記載した書面により、同項に規定する通知を行わなければならない。この場合において、開示しないことと決定した自己情報が第13条第2項各号に規定する自己情報に該当しなくなる期日をあらかじめ明示することができるときは、併せてその期日を記載しなければならない。
5 第1項に規定する期間(第2項の規定により当該期間が延長された場合にあっては、当該延長後の期間)内に、実施機関が請求に係る自己情報の開示等の可否を決定しないときは、請求者は、自己情報の開示等をしないこととする処分があったものとみなすことができる。
(開示等の実施)
第19条 実施機関は、前条第1項の規定により、請求に係る自己情報を開示することと決定したときは、速やかに、請求者に対し当該自己情報の開示をしなければならない。
2 自己情報の開示は、実施機関が前条第3項に規定する通知において指定する日時及び場所において、当該自己情報が記録された公文書を閲覧に供し、又はその写しを交付する方法により行うものとする。
3 前項の規定にかかわらず、実施機関は、自己情報を開示することにより当該自己情報が記録された公文書が汚損し、又は破損するおそれがあるとき、第13条第4項の規定による自己情報の開示をするときその他相当の理由があるときは、当該公文書を複写したものを閲覧させ、又はその写しを交付することができる。
4 実施機関は、前条第1項の規定により、訂正、削除又は中止をする旨の決定をしたときは、速やかに、当該自己情報の記載の訂正、記録の削除又は目的外利用等の中止をしなければならない。
(不服申立ての処置)
第21条 実施機関は、第18条第1項に規定する決定について、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)の規定に基づく不服申立てがあった場合は、当該不服申立てが明らかに不適法であるときを除き、遅滞なく、高槻市個人情報保護審査会(次条第1項を除き、以下「審査会」という。)に当該不服申立てに対する決定又は裁決について諮問しなければならない。
2 実施機関は、審査会が前項の規定による諮問に対する答申をしたときは、これを尊重して速やかに、当該不服申立てに対する決定又は裁決を行わなければならない。
(個人情報保護審査会)
第22条 前条第1項に規定する実施機関の諮問に応じて審査するため、高槻市個人情報保護審査会を設置する。
2 審査会は、前条第1項の規定による諮問があったときは、速やかに、答申するよう努めなければならない。
3 審査会の委員は、職務上知り得た個人的秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
第4章 個人情報保護運営審議会
(個人情報保護運営審議会)
第23条 この条例によりその権限に属することとされた事項を行うとともに、個人情報保護制度の運営に関する重要事項について実施機関の諮問に応じて審議するため、高槻市個人情報保護運営審議会を設置する。
2 審議会の委員は、職務上知り得た個人的秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
第5章 個人情報処理受託者の義務及び事業者に対する指導、勧告等
(個人情報処理受託者の義務)
第24条 実施機関から個人情報の処理業務の委託を受けた者(以下「受託者」という。)は、当該受託した処理業務の範囲内で、個人情報の保護について実施機関と同様の義務を負うものとする。
2 実施機関は、個人情報の処理業務を委託しようとするときは、当該受託者に対し、個人情報の保護を図るため、当該処理業務を行う場合における個人情報の漏えいを防止する等の個人情報の適正な維持管理について必要な措置を講じさせなければならない。
3 受託者又は受託者であった者は、当該処理業務に関して知り得た個人的秘密を漏らしてはならない。
(事業者に対する指導、勧告等)
第25条 市長は、事業者が第4条の規定に違反する行為を行っていると認めるときは、当該事業者に対し、当該行為の是正又は中止を指導し、これに従わないときは、当該行為の是正又は中止を勧告することができる。
2 市長は、事業者が前項の規定による勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
附則
1
この条例は、昭和62年4月1日から施行する。
2 この条例の施行の際、現に実施機関が行っている個人情報の収集等及び個人情報ファイルの作成については、この条例の相当規定により行った個人情報の収集等及び個人情報ファイルの作成とみなす。
参考文献
・ 「内申書を考える」今橋盛勝
・ 「憲法フィールドノート」棟居快行
・ ジュリスト増刊・情報公開・個人情報保護76・254・257項
・ 自治研究69巻4号81項
・ 判例時報1534号3頁
・ 判タno935号
・ 棟居快行『基本的人権の事件簿』有斐閣選書
私見の補足(中村)
Xとしては内申書の中でも総合所見のみに焦点を合わせて開示を求めていたと思われる。そのことが目的ならば教師との信頼関係を壊すというのはXの普段の状況からないといえるだろう。(最もすでに壊れているかもしれないが…)しかし、暗に開示してしまうことは好ましくない。個人的には下村説か?やはり、総合所見を開示してしまうと不都合が生じるケースも多いといえる。はっきり言って総合所見は効果をなさない代物であろう。というのもどんなに問題児であっても合格していることからわかるように、やはり、自分の生徒を外部に良く見せるのは一般的だろう。従って、開示されてもあまり、意味をなさないであろう。このように、今回のケースでは開示が妥当かと思われるが、他の場合においては開示しないのが良いだろう。
また今回不存在通知処分であるが、教育委員会の対応の悪さから、対応の意図から不当であると思う。