行政指導と価格カルテル
法学科3年 小島 奈津子
1.はじめに
独占禁止法は一条により「私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止」して「公正かつ自由な競争を促進」し、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進すること」を目的とする。つまり独占禁止法の固有の目的は公正かつ自由な競争の促進にある。それにより独占禁止法は事業者が価格、数量などについて共同して決定することをカルテルとして原則として禁止する。一方で行政指導は行政手続法2条6号により「行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう」ものとして用いられることが多い。私が今回問題として取り上げた事例(最高裁昭和57年3月9日第三小法廷判決)で行われた行政指導も、通商産業省設置法3条2号に根拠を求めて行われ、この意味での行政指導に該当する。行政指導は法律上の強制権限に基づくものではなく、相手方の任意の協力を前提として実現されるものであり、価格、数量など、本来各事業者が競争に基づき自主的に決定するべき事業活動において行政指導が行われると、事業者は共同して行政指導に従い競争を制限する傾向が促される。よって独占禁止法と行政指導との関係が問題となる。
2.事例の概要
石油連盟X(原告、上告人、被審人)は、昭和45年11月中旬及び同46年2月中旬、外国の原油供給業者から会員に対し、原油の販売価格を引き上げる旨の通知があったため、同46年2月22日、前記2回にわたる通知などによる原油1キロリットル当たりの平均値上げ額約1080円は製品換算すると1113円になるとして、これに基づく石油製品の品目別値上げ額を検討した結果、石油製品の販売価格を1キロリットル当たり、揮発油は2000円、灯油は2000円等を目標に引き上げることを決定した。(以下、本件決定とする)これに基づき、Xの会員元売業者はそれぞれ石油製品の値上げ額を定め、実施に移した。
そこで公正取引委員会(被告、以下Yとする)は、このようなXの行為は事業者団体による競争の実質的制限行為を禁止しているとして、独占禁止法8条1項1号に違反するものであると判断して本件決定の破棄等を求める審決を行った。
*石油連盟:石油の精製業者、石油製品の元売業者並びに精製業者及び元売業を兼業している者を会員とする事業者団体であり、昭和46年2月末現在の会員数30名のうち会員元売業者の数は14名であり、これら会員元売業者の石油製品のそれぞれの販売量の合計は、いずれもわが国における当該製品の総販売量の大部分を占めていた。
<審決要旨>
排除措置として
① 油製品の販売価格の引き上げ決定を破棄すること
② 今後、会員元売業者が石油製品をそれぞれの自主的決定価格で販売する旨を取引先及び需要者に周知徹底させること
③ 今後、会員元売業者の石油製品の販売価格の引き上げについて、目標価格及び実施時期を決定する等の方法により、会員元売業者の意思の統一を図る行為をしないこと
Xは「仮に本件決定が行われたとしても、その後、通商産業省からX及び会員元売業者に対し、原油値上がり額のうち1バーレル当たり10セント相当分(製品換算一キロリットル当たり235円)は石油業界が吸収することとし、石油製品の販売価格の引き上げは全油種平均一キロリットル当たり860円を限度とするよう行政指導が行われ、会員元売業者もそれぞれこれに従って石油製品の販売価格を定めているのであるから、本件決定に基づく違法状態は既に消滅したものである」と主張して争ったが、Yは「前記行政指導は何ら法律上の強制権限に基づいて行われたものではなく、X及び会員元売業者に対し、単に原油の値上がりに対応して石油製品の販売価格を引き上げる場合のガイドラインを示したものにすぎないから、これによって、本件決定に基づく違法状態が消滅するものではない」と判断し、Xの主張を認めなかった。Xはこれを不服として、東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起したが、同裁判所もYの審決を支持する判決を行ったために上告した。
<上告理由>
① 本件判決は、その後行われた通商産業省の行政指導によりその効力を失い、各元売業者は右行政指導の枠内で自主的に価格の引き上げ額を決定することが可能になったのであって、これは行政指導の枠内で価格競争が回復されたことに他ならないから、本件決定による競争の実質的制限はなくなったものと解すべきである
② 現実の市場において各事業者が、その製品価格や希望価格(交渉値)を決定するに当たっては各事業者によって異なるいわゆる油種構成比を考慮する必要があり、他方、事業者団体の示す油種別構成とは関係なく決められるものであるため、各事業者の具体的販売価格を拘束する意味に乏しい
(②の主張に関して、本件決定自体は所論の油種構成比とは関係がなく、採用することができない。)
<判決>
上告棄却
独占禁止法8条1項1号にいう競争の実質的制限が成立するための要件としては、事業者団体の行動を通じ事業者間の競争に実質的制限をもたらすこと、これを本件に即していえば、Xの機関決定によりX所属の事業者らの価格行動の一致をもたらすことがあれば足りるものと解するのを相当とする。よって事業者団体がその構成員である事業者の発意に基づき各事業者の従うべき基準価格を団体の意思として協議決定した場合においては、たとえ、その後これに関する行政指導があったとしても、当該事業者団体がその行った基準価格の決定を明瞭に破棄したと認められるような特段の事情がない限り、右行政指導があったことにより当然に前記独占禁止法8条1項1号にいう競争の実質的制限が消滅したものとすることは許されないものというべきである。
これを本件についてみるのに、…Xの行った本件決定後、その実施過程において、主務官庁の通商産業省当局が本件決定における引き上げ幅圧縮のガイドラインを示したところ元売業者が事実上これに従ったにすぎず、本件決定がいかなる形式であれ明瞭に破棄されたと認めるに足りる特段の事情は何ら見当たらないというのであるから、前記競争の実質的制限が成立するための要件は十分みたしているものとみるのを相当とする。仮に本件においてXにより決定された原油の製品換算1キロリットル当たり1113円の引き上げが行政指導なるものに従った結果860円の引き上げにとどめられたとしても、行政指導なるものは価格引き上げの限度を示したにすぎないのであるから、これによってさきに行われたXの価格引き上げの決定の効力に影響を及ぼすものとみることはできない。
3.事例の問題点について
以下二つが考えられる。ⅰ行政指導の係わりにおいてカルテルが成立・存続しているとみるか。ⅱカルテルが成立・存続している場合に行政指導によってカルテルの違法性が阻却されることになるか。本件判決はⅰの問題に係わる。本件判決は、競争の実質的制限の存続の用件は事業者団体の決定により会員元売業者の価格行動の一致をもたらすことがあれば満たされる。その後価格に関する行政指導があっても、当該決定を明瞭に破棄したと認められる特段の事情がない限り、競争の実質的制限が消滅したものとすることはできず、カルテルは存続しているものとみている。
4.論点について
以下三点が考えられる。
Ⅰ.カルテル後の行政指導はカルテルを消滅させるか
Ⅱ.カルテル後の行政指導によってむしろカルテルの更新ないし新たなカルテルの締結が行われたとみなせないか
Ⅲ.カルテルの成立要件にはその実行が必要か
5.行政指導とカルテルについて
<カルテル>
カルテルは、典型的には同業者が会合を開き、ある日付から価格をいくらにする、ということを合意ないし協定する形で行われる。独占禁止法(以下独禁法)上「不当な取引制限」という概念でとらえられ、(2条6項)禁止されるものが違法なカルテルである(3条)。不当な取引制限は、事業者が他の事業者と共同して行う行為であり、不当な取引制限が成立するには、共同行為が「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」という効果を有する必要がある。これは実施されれば競争の実質的制限をもたらすような内容の合意の形成・協定の締結があれば、この要件はみたされる。
行政指導が関与する場合に事業者や事業者団体の行為がカルテルと認定される態様には
ⅰ.行政指導以前に事業者間の協定が成立しており、その実効性を確保するために行政指導を要請し、行政指導が実施される場合。
ⅱ.行政指導があった後にそれを実施するために事業者間の協定が行われる場合。
ⅲ.事業者間の協定の成立または実施の過程に行政庁が関与し、その内容を指導・調整する場合。
ⅳ.行政指導が策定・実施される過程での事業者の関与を通じて事業者間に協定が成立する場合。
がある。本件はⅲにあたる。
<行政指導>
行政指導とは、行政が行政目的の達成のために一定の作為または不作為を国民に要請・誘導することであり、法的な拘束力をもたない。ゆえ、相手方の協力が期待される。さまざまな目的達成のために実施されるが、カルテルの助成のために用いられることがあり、このような場合には独禁法との関係が問題となる。(以下、このように市場における競争を制限するような行政指導を競争制限的行政指導という。)これには2つのタイプが挙げられる。
一つは、行政機関が個々の事業者に個別に生産の削除や新規事業への進出の抑制などを指導する場合(利害対立の調整)。もう一つは行政機関が事業者や事業者団体に対して、生産量の調整や価格の維持・引き上げを共同して行うよう指導する場合(協調促進効果)である。
<事業者の関与>
競争制限的行政指導は本来事業者間の行為の一致を促進する効果を持っている。行政指導の目的達成のためには事業者側の協力が不可欠であるが協力を得るためには
a.行政指導の内容が事業者側の意向を取り入れたもので事業者が協力できること
b.他の事業者も当該指導に協力することがある程度確実に予想できること
が前提となる。行政指導が実施されるためには、行政指導の内容及び行政指導の遵守について何らかの事業者の関与がある。
これまでの事業者の関与をとらえて違法とされた事例では、行政指導の本来的な協調促進効果を増幅する事業者の側での自発的な行為がある場合に独禁法違反とされている。それは
(1) 行政指導以前に事業者間の協定が成立しており、その実効性を確保するために行政指導を要請し行政指導が実施された場合。(行政指導が事業者側の自発的な共同行為に、その補強手段として利用される場合)
(2) 行政指導があった後に当該行政指導の実施のために事業者間の共同行為が行われる場合。これには(a)行政指導に従うか否かについて事業者間に連絡行為があり、その結果形成された事業者間の合意にもとづいて事業者が一致して行政指導に従った場合、(b)行政指導の内容を事業者団体が具体化した場合。(行政指導に対する協力行為として事業者間の共同行為が成立している場合)
(3) 事業者間の協定の成立・実施の過程に行政庁が関与し、その内容を指導・調整する場合。(事業者の共同行為が主体で、行政庁の関与により事業者の協定の内容を修正した場合)
が挙げられる。
<違法の範囲>
事業者側の行為が行政指導に対する協力の範囲内に止まっていれば違法ではないのかという点があるが、事業者が行政指導の内容(値上げ幅・減産量など)をさらに強化する(例えばそれ以上の値上げなど)場合には事業者の市場操作があることを根拠として違法になるが、行政指導の内容をそのまま実施する場合でも、それを一致して遵守するとの協定(黙示でよい)があえば違法となる。このほか、ⅰ事業者の一致した希望が行政指導に反映した場合、ⅱ行政指導の伝達の態様が事業者間の協調を促進するものであった場合、は独禁法違反が成立する。
6.行政官庁の行政指導に基づきカルテルが行われた場合について
行政官庁の行政指導に基づきカルテルが行われた場合には、カルテルは違法になるのであろうか。事例でみていくことにする。
審決例:野田醤油株式会社等事件判決
(公取委昭和27年4月4日審決 審決集4巻1頁)
<事実の概要>
物価庁の指導に基づいて醤油業界の事業者団体が醤油の最高価格を定め、醤油醸造業者に対し、この最高価格を遵守するように要望したことが独禁法旧4条及び3条に違反するとして、公正取引委員会(以下、公取委)が審判を行った。
<事件の問題点>
この最高価格の遵守の要望は物価庁の指導に基づくものであるという理由により、独禁法の免責を与えられるべきであるか
<審決>
たとえ物価庁の指導に基づくものであっても、カルテルは違法である。「私的独占禁止法及び事業者団体の運用のためには公取委なる独立の官庁が設けられているのであり、これを裁判所の再審査を条件として唯一の公権的解釈及び運用の機関をなしている。たとえ政府の機関といえども、その他の行政官庁がほしいままに本法を解釈することは許されない。ゆえに、多数行政官庁中たまたま本法の精神を理解せず誤った指導をなすものがあったとしても、事業者またはその団体は各自法の命ずるところがなんであるかを判断してこれに従う責任があるものであることは言をまたない。官庁の指導の有無はあるいは罰則適用の際しんしゃくすべき情状となりうることはありうるかも知れないが違法の状態を排除するために必要な措置をとるべき事業者または団体の責任を軽減するものではない」
<類似の審決>
化繊協会勧告操短事件(公取委昭和28年8月6日審決 審決集5巻17頁)では、たとえカルテルが行政官庁の行政指導に基づくものであっても、それが独禁法3条6項または8条1項の各号の構成要件を満たすものである場合には違法となるとしている。
判例;石油カルテル事件
(生産調整;東京高裁昭和55年9月26日判決)
(価格協定;最高裁昭和59年2月24日判決)
<生産調整事件>
事件の概要:通産省が石油業法に基づいて石油行政を展開していた。この法律は石油製品の需給調整を目的とするものであり、とくに生産制限を目的にするもので、同省はこの法律を実施する方法として行政指導を行っていた。一方、石油業界は事業者団体(石油連盟)の場において生産制限を決定し、これを実施していた。そこで通産省は業界に存在していたカルテルを活用し、生産調整の目的を実現しようとした。(通産省の石油に関する産業政策と業界のカルテルとは相互補完的関係にあった。)公取委はこの石油連盟の行った生産調整が独禁法違反であるとして勧告審決によってこれを違法とした。
<価格協定事件>
事件の概要:石油危機時にOPECの原油値上げに伴い、日本国内における石油製品の大幅な値上げが予想されたので、通産省は行政指導により石油製品の価格の最高限を指定し、石油会社にこれを守らせることにした。石油会社側は話し合いを行い、通産省に対して望ましい価格の最高限を要望すること、通産省が価格の最高限を設定した場合にはこの価格まで一斉に引き上げることで合意した。公取委がこのカルテルについて刑事告発、公訴は提起され、上告された。最高裁は石油会社が通産省の定めた上限価格まで一斉に価格を引き上げることに合意したことは不当な取引制限に該当して違法である、この合意は通産省の行政指導に基づくものではないと判決した。
<公取委と通産省の見解について>
この両事件に関する判決の後、公取委と通産省はそれぞれ行政指導と独禁法の関係について見解を発表している。公取委と通産省の関係についてだが、通産省は石油を安定的に日本に供給することを目的にし、公取委は独禁法の実体的規定を執行する。規定違反、もしくは独占状態が認められた場合には公取委によって排除措置命令、競争回復命令が出される。以下は、両者の見解である。
公取委昭和56年3月「独占禁止法と行政指導との関係についての考え方」(一部引用)
各省庁設置法以外に具体的な法的根拠が定められていない行政指導により、事業者の自主的な事業活動が制限され、価格、数量等の市場条件に影響が及ぶ場合には、次のように独占禁止法との関係において問題がある。
(1)事業者団体に対する行政指導
事業者団体に対する行政指導はカルテルを最も誘発しやすい。
(2)個別事業者に対する行政指導
個別事業者に対する行政指導であってもカルテルを誘発する場合がある。例えば、一律に数量を制限する等の画一的基準を定め、又は個々の事業者の数量を指示した割当表を示す等の行政指導は、各事業者が他の事業者もこれに従うことを前提としてのみ従おうとする場合が多いので、カルテルを招く危険性がある。
通産省昭和56年3月「行政指導についての考え方」
産業政策実施の上で行政指導は重要な役割を果たしているとした後、公取委の見解に対して以下のように述べている。
(1) 公取委見解は具体的な法的根拠が定められている行政指導と定められていない行政指導とを区別して独禁法との関係を述べているが、内閣法局及び学会における通説によれば、行政指導は、相手方の任意の協力を得て、設置法に定められた所轄事務の範囲で行うことができるとされており、この点について当省と公取委との見解に違いはないと理解している。
(2) 公取委は、見解のなかに引用してはいないが、個別事業者に対する行政指導については、石油カルテル判決においても、『個々の事業者に対し、個別に指導を行う限り、独禁法の禁止規定に形式的に違反する行為ではありえない』と明確に示されており、これは当省の考え方と同様である。
公取委と通産省の見解は必ずしも噛み合っていないが、公取委の見解は行政指導がカルテルを招きやすい点を指摘している。
<学説について>
多数説は、たとえカルテルが行政指導に基づくものであっても、それが独禁法上の違法の構成要件に該当していれば違法とすべきとしている。これは公取委審決の立場を支持しているものである。この理由として、独禁法は経済の基本を決める法秩序であり、行政指導という行政庁の行う事実行為によってこれの例外を認めることはできないこと。この理由で独禁法の例外を認めてしまうと行政指導によっていくらでも独禁法の例外を創設することになり、不合理で
あるいう点が挙げられている。
7.カルテル後の行政指導は新たなカルテルとみなせるか
論点のⅠにも関わるが、カルテル後の行政指導がカルテルとなるのかどうかについて以下の視点で検討してみたい。行政指導が行われ、それに対応する企業の反応は3つに分けられると思う。①行政指導が全く機能していない場合、②行政指導自体に効果はあるが企業が従わない方向であるものが主流である場合、③行政指導は有効であり、企業も従う方向であるものが主流である場合。このうちのどれを採るかによって判断は変わってくるであろうか。①は最高裁の主張に準じてくるものであろう。しかし③を採用したらXの主張が採用されることになる。これはゼミ発表において議論となったが、結論としては値上げ額の幅が変化するに留まるのでは、ということになった。
8.私見
本件判決について、最高裁に賛成したいと思う。カルテル後の行政指導はカルテルを消滅させるものではないであろう。そして、行政指導が行われ、事業者が内容を遵守させるなら、ほぼ必然的に事業者団体のカルテルが成立してしまうゆえ、カルテルを招きやすいという公取委の考えに同調したい。独禁法の目的が健全な国民経済の発展であり、石油業法の目的が石油精製業等の事業活動を調整することによって、石油の安定的な確保を図るものであるならば、石油危機の緊急対策として行政指導が行われるのは物価抑制のためには必要であろうと思われる。この場合の行政指導が適法となるかについても問題となるかもしれない。財産権による侵害には法律の留保が必要としてこれを違法とみる意見も無視できないと思うが、私は緊急対策であるのならやむをえないと考えるし、企業に調整を促す程度の拘束力の範囲内では意味をもつのではないかと考える。
9.おわりに
行政指導とカルテルの関わりという問題は経済法学者からも、行政指導であることを理由にカルテルが成立するのはおかしいということで論じられているという。経済法や独占禁止法、石油業法という触れたことのない法律にたくさん触れられたことはとても興味深かった。審決はいきなり高裁で扱われるということも初めて知った。
また、本件を考える上で持ち出した石油カルテル生産調整事件、価格協定事件の2つの事件は石油カルテルに関する判例のなかでかなり重要な価値を持つと同時に、刑事事件の側面からも非常に研究がなされている興味深い判例であった。次の機会にはこの判例自体を扱ってみてもいいのではないかと思えるくらい、様々な意見が論じられていた。カルテルという経済に関わる問題と法律の関係という、私の中では挑戦に値するこの問題に取り組んでみて、視野が広がったように思え、とてもよかったと思う。
(参考文献)
判例 →本文中に示したもの
今村成和 私的独占禁止法の研究
松下満雄 経済法概説
実方謙二 独占禁止法
金井貴嗣 独占禁止法
中川丈久 行政手続と行政指導
特集「石油カルテル最高裁刑事判決」経済法学会年報6号
独禁法審決判例百選 第二版
第三版
第四版