東京都銀行税条例無効確認等請求事件
法学科四年 志賀 和敬
1.はじめに
常岡ゼミに入り、約二年間多くのことを学んだ思い、その成果としての論文がかけたらすばらしいとは思ったが、就活中に興味を持って読んでみたいと思ったということもあり、自分の興味を優先させ、本件を取り上げてみることにした。
地方分権が進む中で、地方自治体の税収入確保は重要な問題となっており、東京都の銀行に対する外形標準課税導入はその一方法としての可能性が検討されたものであり、大いに評価できるものと考えていたため、興味を持ったというのが本件を取り上げた理由である。
憲法、行政法、租税法など、論点は多岐に渡るが、できる限り行政法に焦点をあわせて判決を紹介していこうと思う。
2.事件当事者
原告:銀行法4条1項に基づく免許を受けた銀行
三井住友銀行(住友銀行+さくら銀行)、三菱信託銀行(日本信託銀行+東京信託銀行)、UFJ銀行(三和銀行+東海銀行)※みずほ銀行(日本興業銀行+富士銀行+第一勧業銀行…判決時は未合併)東京三菱銀行、あさひ銀行、大和銀行、横浜銀行、八十二銀行、北陸銀行、福岡銀行、安田信託銀行、※UFJ信託銀行(当時は東洋信託銀行)、中央三井信託銀行、住友信託銀行
長期信用銀行法4条1項に基づく長期信用銀行
※日本興業銀行
被告:東京都、東京都知事(石原慎太郎)
3.事実の概要
本条例施行後、原告らは、本件訴えをおこした後、それぞれ平成12年事業年度分につき、「本件条例が違憲・違法であることを主張して係争中であり、今回の納付申告により本件条例の合憲性・適法性を認めるものではない旨を念のため付記する。」との留保文言を付して、本件条例に基づき事業税額を被告東京都に申告納付した。
被告である東京都は平成12年2月7日の記者会見にて「東京都における銀行業等に対する事業税の課税標準等の特例に関する条例」の条例案を都議会に提案する旨を公表し、同月23日に東京都知事は議会に提出、2月29日~同年3月2日まで本会議にて審議され、3月22日に東京都議会財政委員会において集中審議がおこなわれ、23日に同委員全員の賛成で可決し、平成12年3月30日東京都議会本会議にて、反対者一人を除く賛成多数で可決された。本条例は平成12年4月1日に公布、施行された。
原告らは上記各申告納付後直ちに、平成12年4月1日から開始する事業年度に関わる事業税が過大申告であったとして、被告東京都知事に対し更正の請求をおこなった。
これに対して、被告東京都知事派平成13年8月30日付けで「理由がないと認め、更正しないことにした」旨の通知処分(以下、本件通知処分)を行なった。
4.本件条例の概要
本件条例は地方税である法人事業税の課税標準について地方税法72条の19に基づき同法72条の12とは異なる特例を定めることが趣旨である。
これにより事業税の課税標準を各事業年度の「所得」ではなく、「業務粗利益」という外形標準課税に変更するべく制定したものである。
本件条例は、銀行業等に対する法人事業税の課税標準を業務粗利益等とする外形標準課税を規定しており、その対象を各事業年度の終了の日における資金の量が五兆円以上である銀行業等を行なう法人に限定し、平成12年4月1日以後五年以内開始する事業年度分の法人事業税についてのみ適用することとしている。
本件による法人事業税の税率は原則として3%となっている。
法人事業税の確定手続きとしては確定申告納付制度が採用されており、事業年度の終了日から二ヶ月以内に申告書を提出の上、被告知事に対して納付しなければならないとされ、申告書未提出の場合には、知事の権限により調査し業務粗利益等及び事業税額を決定し、申告書提出の場合においても調査と異なる場合には東京都知事がこれを更正する権限を有する。
5.当事者の求めた裁判
原告らは、以下のような請求を行なっている。
第一に行政事件訴訟法3条4項の無効等確認の訴えとして、東京都(請求1)及び東京都知事(請求2)に対し、本件条例の無効確認を請求し、第二点として、無名抗告訴訟として被告東京都知事に対し条例に基づく更正処分及び決定処分の差し止めを求める請求(請求3)をし、公法上の当事者訴訟又は民事訴訟として被告東京都に対しては本件条例に基づく租税債務不存在確認を請求し(請求4)(以上、本案前請求)、留保文言を付した上で申告納付した事業税額を誤納金として還付し、条例制定に基づく行為及び公布行為が違法であるとして国家賠償及び遅延損害金を請求し(請求5)予備的に、都知事が「理由がないと認め更正しないことにした」旨の処分の取り消しと過納金の還付及び遅延損害金の請求(請求6)を提起した。
6.本件における争点
本件での争点は、数点あるが、全てについて検討するわけではないが、提示しておこうと思う。
争点の第一点としては東京都や都知事に対して、条例の無効確認を求める請求において、条例が抗告訴訟の対象としての処分性及び原告適格があるのか、第二点として条例に基づく更正処分及び決定処分の差し止めを求める無名抗告訴訟としての予防的不作為訴訟が、無名抗告訴訟としての適法要件を満たしているか、第三点として、租税債務の不存在確認請求につき原告に訴えの利益があるのか、第四点として、本件条例がそもそも適法かつ有効なのか、第五点として、本件通知処分の有効性及び誤納金還付の支払い金額について、第六点については本件条例の公布行為及び制定に関する一連の行為をした東京都知事及び東京都の責任、第七点として国家賠償請求に関する損害の有無
以上のような争点が本件では争われている。
7.請求に対する東京地裁判決
原告らの本件条例無効確認請求、更正処分及び決定処分差止請求、租税債務不存在請求は、いずれも不適法として却下。本件条例は無効であり、その条例に基づき納付した金員は誤納金となり、原告らが請求する理由はある。条例制定によって銀行の信頼が低下したことによる銀行が受けた損害は一行当たり一億円とし請求する理由がある。
予備的請求については、条例が無効である以上検討する必要はない
8.争点に対する検討
これ以降は争点について検討をしたいと思うが、基本的には私の興味を持った行政法の分野を中心に検討していきたい。
(1) 本件条例の無効確認請求に係る訴えの適法性
Ⅰ.条例について処分性があるか
原告の主張をまとめると次のようである。本件条例による納税義務者の要件は具体的かつ限定的に規定されており、原告らは平成12年事業年度にかかわる事業税について現にその納付が強いられ平成13年事業年度の末日に原告らを含む特定のものが本件外形標準課税の対象となることは明らかである。本件条例が大手銀行という特定のものに対する課税処分そのものである。
本件条例の制定により原告らに対し、税効果会計手続きに基づき繰延税金資産及び当期利益が減少した結果、莫大な損害が直ちに発生しており、この変動は行政庁の処分により発生したものではなく、条例制定自体の結果として生じているのであるから本件条例は「処分性」を有するものであり、抗告訴訟の対象となる。
それに対して被告の主張は以下である。
租税に関する法律及び条例はそれが施行されただけでは具体的な納税義務が生ずるものではない。従って条例自体が有効か無効か、ということは法律上の争訟に該当するわけではなく、無効確認を求める対象ともなり得ない。
外形標準課税を資金量が五兆円以上の銀行業等に適用するとしているが、これは一般的、抽象的に定めたに過ぎず、各事業年度末日において五兆円あるかどうかは明らかとは言えず、可能性はあっても納税義務が形成されていないのみならず範囲も未確定である。
企業会計における繰延税金資産及び法人税等調整額について条例では何も規定しておらず、本件条例制定の直接の効果といえない。
以上のことより、条例が直接的に権利義務その他法的利益に影響を及ぼす処分に当たるとはいえない。
東京地裁は、最高裁判所昭和27年10月8日大法廷判決民集6巻9号738頁等より、裁判所法3条1項にいう法律上の争訟として裁判所の審判と対象となるのは当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に限られ、具体的争訟性を欠く訴えは不適法といわざるを得ないと論じたうえで、処分性については、被告東京都や東京都知事と同様の論をしめし、処分性を否定している。
(2) 本件本案前請求に関する訴えの利益について
Ⅰ.予防的不作為訴訟の適法要件について
原告は、札幌高裁判決をあげ義務付け訴訟の三要件をあげつつ、予防的不作為訴訟の現状悪化を防ぎ、違法な公権力の行使からの防衛であり国家からの権利利益の侵害を限定するという市民的法治原理に馴染むものとして義務付け訴訟の三要件についても緩やかに解釈すべきとして、三要件についての検討をおこなっている。
明白性の要件について、本件条例に基づく更正処分及び決定処分の処分要件が、銀行等の各事業年度末における資金量及び課税標準である業務粗利益等の金額等を含め、一義的に明らかになる数値的データその他明確な事実により認定されるものであり、加えて東京都知事は更正処分又は決定処分をおこなうについては本件条例上覊束されており、裁量権はない。また、当事者間に事実に関しての争いがなく法解釈適用につき争いがありこの点に対する判断によって争いが解決されるというような場合には、行政庁に第一次的判断権を留保する必要はそもそもないというべきであり、本件においては、条例が憲法や地方税法に違反するか否かという問題点がすでに具体的に明らかになっており、更正処分または決定処分を経る前においてもすでに本件争いは十分高度に成熟しているといえるので、行政庁に一次的判断権を留保させる理由は全くないため、明白性は明らかである、と主張している。
次に緊急性の要件について、大きく以下四点から主張している。
第一点目として既に発生した損害として、本件条例制定による当期利益等の減少により現に損害をこうむっており、その法的利益に対して重大な影響が生じているだけでなく、自己資本比率の悪化など同時に原告らの金融機関としての信用が大きく低下しており、これは回復し難い重大な損害であるという点、第二点として、将来の更正処分又は決定処分に伴う損害として、東京都知事が違法な更正処分ないし決定処分をおこなう場合、追加して事業税額に加え延滞金や加算金までが課されさらに正当な理由なく申告書を提出期限内に提出しなかった場故意不親告罪が成立し、原告代表や代理人使用人その他の従業者は刑事責任を負わされることになり、かつ銀行自体も金融再生委員会による免許取り消しなども考えられ、これにより重大な回復し難い損害が発生するのは確実である。第三点目として、更なる信用の低下による損害として、信用は銀行の基礎となっており、信用を気づくには数十年かかるが失うには時間は必要としない。五年間に原告らの財務状況に与える重大な悪影響により短時間にいっそう低下するのは確実である。第四点として、損害の回復の困難性を挙げている。原告が新基準税額の申告納付をおこなったうえで従来の税率で計算した事業税額と新基準税額の差額について攻勢の請求を行いそれに対して被告らより理由がない旨の通知処分があった度に原告らが毎年処分取消訴訟及び過誤納付金還付請求等の訴訟を提起しなければならないとした場合には、最後の課税処分があってからさらに年月を要することになる。毎年不本意にも新基準税額の納付をおこなうために必要な莫大な資金を調達しなければならないことになる、その結果としてキャッシュフローは大きく減少し本件条例が原告らに莫大な資金調達を余儀なくさせ企業活動にとって大きな制約となる。しかし本件訴訟により救済されたとしても現に被っている甚大かつ広範な損害を填補するには十分でなく、事前救済の必要性緊急性が切迫している。
最後に補充性の要件について、原告らの被る回復し難い重大な損害の発生を事前に回避するためには、損害の発生から一年以上経過した段階で違法な更正処分や決定処分に対して取消訴訟を提起させるのでは救済手段として全く十分ではなく、信用失墜後では救済はもはや手遅れであり本件請求が認められる場合でない限り他に十分な救済手段が存しない以上この要件をも充足するのは当然のことである、としている。
以上により訴えの利益がある旨を主張しているが、これに対して東京地裁は以下のように請求を棄却している。
現行訴訟制度は、具体的現実的な争訟の解決を目的としており、法廷の抗告訴訟、無名抗告訴訟、公法上の当事者訴訟、民事訴訟のいずれであるかを問わず、法令違反の結果として将来何らかの不利益処分を受けるおそれがあるというだけで、その処分権限の発動を差し止めるため事前にその前提となる法令の効力の有無の確定を求めたり当該処分権限の発動をしないことを命令したりするために当該関係の不存在の確認を求めることが当然に許されるわけではなく、事前救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合以外、あらかじめ当該法令の効力の有無の確定を求める法律上の利益を認めることはできないものと解すべきであり、本件において検討するに、本件条例の適用される五年間につき、昨今の銀行の厳しい経済状況にかんがみて、原告にどのような具体的租税法律関係が生ずるかについては必ずしも定かではなく、原告いずれも条例の適用更には不利益処分としての更正処分又は決定処分等がおこなわれることが確実であるとは必ずしもいえない。また本件条例の効力を問題とするならば、条例に基づく東京都知事による事業税の更正処分及び加算税の賦課決定処分又は原告らが申し出た更正の請求に理由がないとの通知処分の効力を争う中で問題とすれば足りることである。原告らは、本件条例による加算金や故意不親告罪の成立等による損害は回復し難い重大な損害である旨の主張をしているが、原告は平成12年事業年度に関する事業税を、留保文言を付した上で申告納付をしているのであって、原告らは同様にすることにより上記のような行政処分を回避し、処分を争い条例無効を主張することは可能であり、重大な回復し難い損害を被る恐れがあるとは特段の事情の存在は認められない。事業税額の納付のための資金調達コストが営業活動に及ぼす影響の実態を個別具体的に原告らは立証していない。よって、本案前請求についてはいずれも不適法なものであり却下は免れられないとしている。
以下では、本案について検討していくが、条例自体の違憲・違法性の争点については、地方税法が大きく関わる問題であり、大変大きな問題なので今回は最後に簡単に自分の見解を述べるにとどめることにする。なお、以下では判決に従い、当該条例が無効であるということを前提として判決を検討する。
(3) 本件通知処分の有効性について
まず、判決は一般論として、更正の請求に対する拒否処分が無効となる場合について、最高裁昭和48年4月26日第一小法廷判決民集27巻3号629頁を引用し課税処分に課税要件の根幹に関する内容上の過誤が存し、徴税行政の安定とその円滑な運営の要請を斟酌してもなお、非課税者へのどう処分による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的事情のある場合には、過誤が明白なものか否かに関わらず当該処分は当然向こうと解するのが相当であるとし、本件通知処分の効力については、本件条例が無効であることは租税法律主義にかんがみれば課税処分においてその根拠法が無効であることは課税処分につききわめて重大な瑕疵があるというべきである。その結果、誤納金返還請求については、本件通知処分が公定力を生じていない無効な処分であるからして、旧基準税額と機能税額との差額は損失であり、還付を請求することができる、としている。この争点についての原告の見解はほぼ上記と同様であり、被告は、条例は合憲・合法・有効であることを前提に論じているためここでは省略することにした。
9.争点についての私の見解
本判決に対する私個人の私見及び、条例の有効性については後で述べることにして、ここでは上記で判決の検討を加えたものにつき私の見解を述べてみたいと思う。
(1) 本件条例の無効確認請求に係る訴えの適法性について
まず、私は本条例に対する無効確認請求に処分性があるかについては、本件については処分性を認めても良いのではないかと考えている。
その理由としては、条例によると外形標準課税の対象となる基準について被告は抽象的なものであると主張しているが、具体的に資金量についての記載がある以上、これを抽象的なものとは思えず、また本案で経済的な状況をかんがみれば納税義務が形成されているとはいえないと判決や被告は主張するが、五兆円もの資金量を考えるとそれが唐突に激減するとは考えにくく原告からすれば当然に自分たちに対するものだと考えるのは当然であり、直接的に権利義務その他法的利益に影響を及ぼしているのは明らかであり、処分性を認めて条例の有効性について争うことは、具体的な争訟といえるため現行訴訟制度上でも認められるものと解しても良いと考える。
(2) 本件本案前請求に関する訴えの利益について
この点については、三つの要件を検討しているが、この点の検討については原告の主張でよいものと思う。しかし緊急性の点については説得力に欠くものと感じる。これは判決も言っていることだが、破産するほどの緊急性を立証していない以上、これを認めるべきとは思わない。少し論からは離れるが、判決添付の資料によれば旧基準税額は一部の銀行を除いて0円なのである。もちろんこれは会計上の処理をおこなった結果利益が出ないからなのではあるが、現実の処理ではなく帳簿上の処理であり、業務粗利益を上げているという点からも外形標準課税を導入することにより問題となるような緊急性までは考えにくい。
10.本件に関する私見
以上、本件についての判決に関し検討をしてきたつもりではあるが、学説の紹介等をしているわけではなく、判決の立場をできるだけわかりやすくまとめてみただけに過ぎない点が自分自身気になる点ではあるが、本件に関し私見を述べてみたいと思う。
本判決について、まず私自身は結論としては反対の意見である。
上記にあげた争点についての判決の採っている見解について、本案前判決の見解については概ね賛成といえるが、やはり条例の無効確認請求については処分性を認めても良いのではないかと思う。
私が判決について反対しているのはやはり条例に有効性についてである。
上記では検討していないが、本件では、地方税法、憲法の解釈として租税法律主義を前提とするか、本来的租税条例主義なのか、そして法人事業税の性質についての検討をしている。前者については私自身読んでも全く書いてある内容が理解できない点も多かったので私見も避けさせていただきたい。法人事業税の性質についてだが、判決はこの法人事業税について所得に応じた応納税と考えており、法人の所得は業務粗利益から貸し倒れ引当金等や営業上の経費を差し引いたものを所得と考えているため、銀行は実質的に行政サービスを多々受けているにもかかわらず、一銭も法人事業税を納めていないというのが現状だったのである。個人と法人を比較するのはおかしいという意見があるというのを聞いたことはあるが、法人も法律上人である以上同様に考えても良い点はあると思うので、この税金という観点から考えてみたが、個人の所得税の場合、個人単位での営業とも言える生活費というのは税金の対象となっているのである(すなわち全所得がそのまま納税対象となっている)法人の場合、どんなに利益を上げていても経営上営業上必要な経費として認められれば納税対象からは控除される。その結果、どんなに利益を上げていても多々のものが経費として計上されてしまえば納税対象としての利益が減少し税金を免れることができてしまうのである。しかし、行政からのサービスを受けているのは個人も法人も同じなのである。どちらかといえば法人のほうが多く行政サービスを受けているはずである、にもかかわらず個人の場合には所得に対し(源泉徴収課税まで使い)全所得に対して税金を課しているにもかかわらず法人は全く支払わないということがあったのである。これは行政サービスに対する税負担の均衡に反していると考えられる。
判決はあくまでも応能税であるとしている点から反対である。
そのほか、銀行は控訴審においては、地方税法にいう「事業の状況」という解釈につき経済的な理由を挙げており常態とはいえないとの主張をしているが、経済的な理由というよりも銀行の査定能力の低さから来ている銀行の自業自得奈面も多々あり、またその査定能力の低さからより経済的状況を悪くしているとの見解もあるように、常態であると捉え外形標準課税を導入することにより銀行にも税金を負わせるのは良いことだと思う。
しかしながら、本条例の場合には、あくまでも資本金五兆円を超える銀行のみを対象としているという点で憲法上の問題はあると思う。
本判決では憲法上の問題点について触れずに地方税法の解釈により条例が違法として無効だという見解を採っているが、私はこれには反対である。
地方税法の解釈について難しくてよくわからなかったが、それでも都議会が本来的にもつ課税権を侵害するような解釈をするのは間違っていると思われ、憲法上の平等原則に反するので条例が違憲であると考えるほうが良いと思う。
11.最後に・・・
単なる自分の興味からこの判決を検討してみようと思ったことを今更ながらに後悔している。
本件は、最初にも述べたように地方分権が進もうとしている現状において重要となる税収入確保の問題について問題を提起した事件という点、そして憲法上、地方税法上どの程度までの範囲で徴税権が認められ得るのか、を考える事件であると思う。
この事件を選んだことは大変後悔しているが、銀行がかかわっている点、地方分権にかかわる問題である点、いずれも自分自身の生活上無関係とはいえない事件と思った点から、読んでみたことには意義を自分自身勝手に感じている。
読み直してみても、もしこれをゼミで発表するとすれば、今までで最も恥ずかしい発表であっただろうと正直思う。
今回はこの程度の論文、というより判決紹介のようになってしまったが、これ以降もこの事件はおそらく上告されると思われるし、大阪でも同様の事件が起きていると聞いている点から、注目していきたい事件である。
(参考文献)
判例タイムズ(No.1099)
法令解説資料総覧246
税経通信57巻8号
税理45巻8号
東京都ホームページ
東京地裁ホームページ