政治学科演習(現代の行政)

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
八木 俊道 講師 4 3〜4 通年 5

授業の目的・内容

現在の我が国は、厳しい内外環境条件の下において、先行き不透明な多くの課題に直面している。明日への展望を如何に拓くべきか、「行政」分野を中心に、政治、経済、社会、市民の生活と文化等関係する諸分野にも関心を広げ、国際と国内の枠を越え、また学際的なアプローチを含め、既往の伝統的枠組みへの複眼の分析評価、新たな改革への積極的な指向を研究の基調としたい。ゼミ生の自主的課題設定を尊重し、活発な討議の下に、共に「現代」を解明する意欲的な論議の場とすることを目指したい。
なお、学理の一層の深度化、知的関心の更なる触発は勿論のこと、ゼミ生諸君の論点整理における切り口の質や、対論におけるディベート能力の向上等、一段上のレベルへの挑戦を、と思っている。

授業計画

現代日本の統治構造。議院内閣制下の内閣のあり方と総理のリーダーシップ。与党と内閣。野党の体制と機能。
政策形成過程の現状と課題。政治権力中枢の体制と政党、団体等の関与。
行政改革の変遷と今日の主要課題。改革運動とその政治的、社会経済的背景。制度的課題、政策的課題、構造的課題。
財政構造の悪化と財政構造改革課題の取扱い。歳出合理化。税制改革。国債管理。
低迷する日本経済、経済のグローバル化、中国経済の追い上げの中における経済構造改革、経済再生の進め方。
規制行政の抜本的改革。電気通信、流通、物流、基準認証等規制改革政策の検証。
地方分権と地域の個性ある多様な発展のためのシナリオ。地域経済の活性化方策。
市町村合併の加速と関連施策。道州制の可能性。大都市制度の国際的動向。首都行政制度の枠組み。
厳しい地方財政事情と地方財政再建。地方交付税制度の今後。独自課税の可能性と地方の選択。
10行政情報公開と個人情報保護。住民参加とパブリックコメント等新たな行政制度課題。
11地球環境問題。地球温暖化と日本の対応。ODAにおける環境投資、環境技術分野の寄与。
12開発と環境アセスメント。ダムの取扱い。干潟の干拓問題。野生生物の生態系と自然環境保全。
13原発立地等迷走する原子力開発と安全管理対策。核燃料サイクルの帰趨。太陽光等クリーンエネルギー開発の可能性。
14高レベル廃棄物処理と処分用地の確保問題。ごみ処理の有料化と資源リサイクル問題。
15年金制度の破綻回避と給付の抑制、保険料率。公的年金制度の一元化の決着問題。401 k問題。
16医療保険制度の危機。診療報酬、薬価、検査、社会的入院等。介護保険の第一段階の評価。
17都市の再生。オープンスペース問題。景観対策と電線の地中化。公共事業の全般的見直し。
18道路特定財源の見直し。高速道路事業の見直し。陸、海、空の総合交通体系問題の今後の展望。
19「IT革命」の評価。Eコマース。パソコンリサイクル。郵政事業公社化の評価。
20不良債権処理と金融破綻対策に関する国の関与。護送船団方式の反省と金融システムの再生。いわゆる国有化。
21メガバンクの今後。地域金融機関の再編。資本市場。国際金融マーケットの今後の動向。
22デフレの進行と今後の産業経済政策。中小企業の再生と地域商店街問題。
23男女共同参画社会の実現。多様な職域開発。少子化の進行と子育て支援プログラム。
24雇用の悪化と緊急対策。人材派遣等、雇用形態の多様化。ワークシェアリング。将来の労働力不足と外国人労働。
25日本農業の再生と構造政策。農業のもつ多面的機能。食の安全とそのためのシステム。
26教育改革の経過。ゆとりかレベルアップか。大学改革。教科書。英語教育。産学協同。
27日本人の国家観と憲法改正問題。首相公選制。両院制。新たな時代の人権概念。
28テロと日本。巨大地震等大規模災害緊急時の危機管理制度と諸対策。有事法制。イラク派遣。

ゼミ生諸君の問題関心と意見を集約しつつ決定するつもりであるが、具体的には、次のような候補テーマからの選択を考えている。

授業方法

第1学期、第2学期とも、冒頭各2−3回程度、担当教員による総合講義。その後は、原則として、ゼミ生選択テーマに関し、各担当ゼミ生による報告と意見発表、ゼミ生全員による討議、報告者による討議の集約と総合コメント、担当教員による補足的コメントと必要に応じ関連資料解説等の順で進める。
そのほか、ゼミ運営については、極力、ゼミ生の意見を聞きながら進めて行くつもりである。
また、年に2回程度は、有力政治家、地方公共団体の首長、経済界の論客等をゼミのゲストに招き、ゼミ生とのフリーな論議を企画することとしている。
ゼミ旅行も、希望があれば実施する。

成績評価の方法

平常点による。筆記試験形式の期末試験は行わない。

教科書

日本の論点 2004文芸春秋社、2003年11月

参考文献

担当教員の最近の執筆論文をテーマに応じ配布。白書、統計等を随時資料配布。その他、ゼミにおいて、必要に応じ、参考文献リストをテーマごとに提示。