特殊講義(わが国の途上国援助と人口問題)
  「人口政治学」への試み

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
尾崎美千生 講師 4 1〜4 通年 3

授業の目的・内容

20世紀後半に開発途上国で起きた「人口爆発」は、今後も毎年7000万人ずつ増え続き、国連は現在63億人の世界人口は2050年までにはあと約30億人が追加されると予測している。環境、食料、水、経済活動、紛争などあらゆる人間活動に関係するクロスカッテイングな人口問題は、21世紀最大の危機管理の対象と言える。他方、先進国で深刻な少子高齢化の波は途上国にも押し寄せ、新たな地球規模問題になりつつある。本講ではこうした人口問題を素材にわが国のODAなど援助政策を問い直し、日本の経験の国際協力への有効性を問う。

授業計画

オリエンテーション:2000年から2002年まで国際協力機構(JICA)で取りまとめた「人口と開発」に関する報告書を中心に本講座を開講するに当たっての問題提起を行う。
現地報告:講師が本年2月「人間の安全保障」の観点から視察した西アフリカのガーナの教育、保健医療に関するODA支援やNGO活動の状況報告を行い、直面する課題や各種プロジェクトの成果などを明らかにする。
「人間の安全保障」とは何か:ガーナ報告に関連して、ノーベル賞受賞者・アマルティア・セン教授と緒方貞子・前国連難民高等弁務官(現JICA理事長)を中心に主唱されている新しい開発理論「人間の安全保障」の内容を概説する。
国際援助の新潮流:「人間の安全保障」を含め、グローバリゼーションの進行に伴って起こってきた負の遺産・貧困と、ミレニアム目標など、これに対処するために新たな動きを見せている援助潮流に着目する。
「新ODA大綱国」:国際的な援助動向の中で、日本は何を目指そうとしているのか、昨年改定された「ODA大綱」の内容を吟味し、その戦略的意図を探る。
「いまなぜ人口問題か」:以上のゼネラル・スタディの上に、途上国支援の素材として世界の人口問題に入り、その緒論として「いまなぜ人口問題か」を考えてみる。
世界人口会議の論争点:10年に一度開催されてきた「世界人口会議」の流れを追い、その論争点を通じて人間開発の無視できぬ要素としての人口問題に注意を喚起する。マルサスとマルクス(悲観論と楽観論)
世界人口会議:「開発」か「家族計画か」(先進国対途上国)
世界人口会議:人口政策のパラダイム・シフト(フェミニスト・アプローチの有効性)
10世界人口会議:米国の人口政策とバックラッシュ(ブッシュ政権と単独行動主義)
11人類生存への三条件:第1学期講義の総括として人口をめぐる文明論を試みる。
12学期末試験
13第2学期は主として日本の援助政策に関して、国際援助場裏における「日本の経験」の有効性と限界を取り上げる。戦後日本の経済成長を助けた「人口ボーナス」の活用は可能か、日本型援助の可能性を探る。

第2学期の授業計画は、第1学期講義の進捗状況、援助に関する世界情勢の変化、新たな現場視察などを踏まえて、第1学期授業の終了時までに策定、通知する。

授業方法

特別の教科書は使用しない。必要に応じて参考書を推薦する。また必要に応じて参考資料をコピーして配布する。受講者の積極的な意見発表を歓迎する。

成績評価の方法

第1学期、第2学期とも授業の効果を見るために、定期試験を実施する予定。評価に当たっては出席状況や他のシンポジュウム見学によるレポートの提出などを加味して総合的に実施する。

参考文献

授業方法で既述の通り、必要に応じて参考書を推薦。

その他

授業を通じて、国際的な視野の涵養、レポートや自由なコメント発表による表現力の向上に意を用いたい。
自由意思による作文、小論文の添削指導を受け付けたい。