日本経営史
  日本経済の成長とその担い手

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
鈴木 恒夫 教授 4 3〜4 通年 3

授業の目的・内容

日本経営史は、暗記物の講義ではありません。考える講義です。そのために、本講義では経済理論はもとより、簿記や戦略論、マーケティングそして技術や労使関係までも含む知識が必要です。そして、統計や資料を通じて、そこに何が起こったのか、どのような変化が生じたのか、その結果、どのような事態が生まれたのかを「見つける」作業を行います。歴史を理解するにのには、「あらゆる知識」が必要です。

授業計画

日本経営史の講義概要の紹介
(必要な知識・必要な心構えの説明。比較経営史への試みの紹介)
19世紀における産業・技術の発達
キーワードは、財の種類と経済発展(公共財・私的財・重要産業と担った企業)
19世紀の経済システムのうち、動力は蒸気機関、燃料は石炭、輸送は鉄道、生産システムは工場制機械工業であった。このシステムが当時、どのような影響をもたらしたか。また現在どう変化したのか。
インフラストラクチャーの整備(金融制度)
現在同様、明治維新以降、政府の最大の課題は、金融制度の整備であった。この整備の過程を考察する。
財閥系銀行、非財閥系大銀行、地方銀行、長期信用銀行、特殊銀行などの様々な金融機関の登場と役割について考察する。
一体誰が、このような銀行を設立したのか。そして、日本全国レベルで、銀行はどれだけ設立されたのか。
当時の、最大にして、みんなが設立した最大の業種は銀行業。銀行業は美味しい業種であった。
インフラストラクチャーの整備(鉄道と道路)
明治期以降、輸送機関、輸送方法にはどのようなものがあったのか。江戸時代、一体、様々な商品はどのようにして運ばれていたのか。
海運から内陸へ。内陸でも人が運んだり、大八車で運んだり、牛馬を使ったり、自転車の時代が来たり、そして鉄道の発達。
鉄道の発達で、何が変化したのであろうか。
インフラストラクチャーの整備(造船と海運)
海外との取引で必要なのは、外国為替銀行(横浜正金銀行)、総合商社(物産・商事)、そして海運業(日本郵船、大阪商船)と造船(三菱長崎造船、川崎造船)
政府は、これら海運業と造船業の育成に援助したのだろうか。どんな援助をしたのだろうか、
これら企業は、財閥系? それとも独立系?
鉄鋼で出来た船は、国産?それとも輸入船?
インフラストラクチャーの整備(鉄鋼)
第2次大戦後、2000年までわが国最大の産業であった鉄鋼業の発展を考察
政府、財閥、非財閥の誰が鉄鋼企業を設立したのか
原料と技術はどうのようにして入手したのか
政府はどんな援助をしたのか
現在、これらの企業は存続しているのか
インフラストラクチャーの整備(教育制度)
各国経済力の潜在的力量を図る尺度はあるのか?
学歴・教育年数が1つの尺度になる。しかし中身はどうか?
現在と比較して、教育の幅、選択の幅はあったのか。
財閥系企業はエリートが好きだった?
給料の面で学校間格差はあったか?
民間企業の進出(財閥系企業)
財閥の定義=財閥とは何か。
財閥の形成=どのようにして資金を蓄積したか
財閥の活動範囲
財閥のコーポレイトガバナンス
財閥系企業の成長メカニズム
商社の活動
現在は、商社再編の時代。では戦前期の商社活動はどうであったか。
に本訴商社のルーツは、総合商社、綿商社、機械商社、金属商社
企業集団と総合商社
商社の成長メカニズム(コミッション取引と見込み取引)
繊維産業での、商社の機能。
10民間企業の進出(綿紡績産業)
綿紡績企業の失敗と成功
大阪紡績(東洋紡)の成功とそのメカニズム
株主と経営者(彼らは商人? 地主? 財閥?)
成長戦略は何か
11民間企業の進出(石油産業)
地方では、どのような企業が勃興していたか
誰が会社を作り、経営者のなったか
鉄道の整備によって、事業はどう変化したか。
12経営者と労働者(機械工業・鉱山業・綿紡績業・製糸業)
労働者は、どんな生活をしていたか
明治期にホームレスはいたのか
賃金は、何で決まったのか
賃金は、上昇したのか
親方請負制度とは何か
等級賃金制とは何か
13近代産業の興隆(化学工業)
20世紀は近代産業が生まれた世紀である
化学の時代の登場(ドイツ・イギリス・アメリカ)
アンモニア(火薬・肥料)ソーダ(洗濯・人絹) 染料(ファインケミカルの誕生)
新興コンツェルンの登場(日窒・日曹・理研)
旧財閥の参入
アンモニア(肥料)を通じて細かく分析
14近代産業の興隆(自動車工業)
近代産業の登場(内燃機)石炭から石油の時代
自動車の輸入と国産化
軍用自動車補助法と民間自動車企業の誕生
アメリカ自動車の輸入
国産化に向かって
15戦時経済期の意義(産業政策・資金調達・コーポレイトガバナンスの変化)
商工省−統制会−企業、組織の整備
通産省−業界団体−企業の原型
資金調達の変容
メインバンク制の成立
経営者=生産責任者体制
16戦後復興期の意義(財閥解体・企業集団の形成・競争寡占の創出)
財閥解体と企業集団の形成(融資系列と株式持ち合い)
財閥解体と総合商社解体
ワンセット主義の登場(成長産業の囲い込み)
銀行の融資競争
17高度成長のメカニズム(早い参入・労使関係・シェア競争)
高度成長期のメカニズム
消費財産業の成長と輸出促進
メーカーのシェア競争(早い参入とトップシェア)
労働者の疑似「ストックオプション」
18繊維産業復活と成長
戦後の売上高ランキング推移
綿紡績・化繊の復活
合成繊維登場と普及
ファッションビジネスの登場
19鉄鋼産業の復活と成長
日本製鉄の分割(八幡・富士)
銑鋼一貫メーカーの成立
後発企業の進出
LD転炉の導入
20石油化学産業の成長
旧陸海軍燃料廠の払い下げ
旧財閥系と石油精製企業
合成繊維と石油化学
プラスチックと石油化
21自動車産業の成長
自動車企業のルーツ
四輪メーカーの乗用車生産
航空機・三輪・二輪メーカーの参入
部品メーカーとの関係
22家電産業の成長
ラジオの普及
白物の普及(洗濯機・冷蔵庫)
三種の神器
重電メーカーと弱電メーカー
23流通業の整備
日本の特徴(問屋機能)
デパートと小売店
商店街・アーケード・集積効果
スーパーの誕生
テレビの普及と広告(流行の同時性)
24アメリカナイゼーションの光と影
アメリカからの技術輸入
アメリカ文化の導入
アメリカに追いつけ、そして追い越せ
英語のギャップ

出来る限り、江戸末期から明治初期の時代から21世紀の時代まで、そして同時代のイギリスやアメリカとの比較を念頭において講義を進めたい。

授業方法

毎回、統計資料と講義内容のファイルを配ることとしたい。
統計や資料から何が判るか、そうやって当時の実態を想像する試みを実行してみたい。

成績評価の方法

第1学期はレポートを課し、第2学期は試験を実施したい。
出来るだけ出席を取ることとしたい。

教科書

教科書は用いない。無用とは思わないが不要である。

参考文献

毎回の講義内容に関して最適な文献を配布する。

その他

毎回、資料を配付し、出来る限り、資料の読み方を講義の中で議論していきたい。
歴史資料を用いて、戦略論、組織論を学んでいきたい。