●美術史演習II
―視覚表象としての美術―
担 当 者
単 位 数
配当年次
学 期
曜 日
時 限
亀井 若菜 講師
4
2〜4
通年
水
4
この授業では、美術作品を「視覚表象」と捉えて、その歴史的、社会的、政治的な意味や機能を探る。具体的には、作品の表現の特質をよく見た上で、作家の側からだけでなく、誰が何のためにその作品を作らせたのか(注文主)、その作品は誰にどのようにはたらきかけ、それはどのように受容されたのか(観者)、ということを考えていく。さらには、過去の美術作品が現代の社会の中で、いかに享受され機能しているのか、ということも考察する。
人のアイデンティティは、表象に導かれながらその都度作られていくと考えられるようになった。表象は、人に、優越感や劣等感、差別的感情や抑圧的感覚を生じさせる。戦争や差別の絶えない社会で、視覚表象の機能や役割を考えることは急務であろう。ジェンダーや階級、国家、人種といった観点から、視覚表象についてともに考えていくゼミにしたい。
授業方法の欄参照。具体的な授業の計画は、参加学生の人数、学年などによって決めたい。
この演習の内容としては、以下の3つを考えている。
この授業の目的に沿って、例を挙げながら、視覚表象の分析の方法や問題を、講師が説明する。具体的には、講師の専門領域である日本の前近代の美術を中心に扱うが、その他にも、アジアや西洋の美術における女性や非白人の美術、戦争をめぐる表象、現代のメディアに表れるイメージ等を見ていきたい。
この授業の主旨に沿った内容の論文を講読する。
学生が、自らテーマや作品を選び(ジャンル、時代は自由)、先行研究を調べ、この授業の主旨に沿った形で口頭発表を行う。
第1学期、第2学期のレポート、発表、出席による。
鈴木杜幾子・千野香織・馬渕明子編『美術とジェンダー─非対称の視線』ブリュッケ、1997年
池田忍『日本絵画の女性像─ジェンダー美術史の視点から』(ちくまプリマーブックス)筑摩書房、1998年
萩原弘子『ブラック─人種と視線をめぐる闘争』毎日新聞社、2001年
イメージ&ジェンダー研究会『イメージ&ジェンダー』4号 彩樹社、2003年
亀井若菜『表象としての美術、言説としての美術史─室町将軍足利義晴と土佐光茂の絵画』ブリュッケ、2003年