英米文学演習
  アメリカ演劇と「男」の世界

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
水谷 八也 講師 4 2〜4 通年 2

授業の目的・内容

20世紀は良くも悪くもアメリカの世紀であったと言えるだろう。第二次大戦以後、また冷戦以後も、アメリカは敵(悪)を見つけ、それを裁こうとしてきたし、それは現在も変わらない。世界の正義たろうとするアメリカを動かしている原理とは一体何であるのか。この演習では、政治とはまったく異なる観点から、アメリカの「男性神話」を読み解くことにより、アメリカを動かしている原理を探ろうとする試みである。具体的には、数編の戯曲を読み、そこに共通する「男」のイメージ、ジェンダーの扱いを捉え、戯曲内部での人物の力学を考察する。さらにそこから見えてくるであろう「男性像」の源流を探っていく。その作業は独立戦争から、西部開拓を経て作られた「アメリカ」という国の成り立ちを探ることにもなるだろう。
しかしその第一歩として、非常に地道な作業ではあるが、まず英語のセリフを正確に理解することから始めたい。また第2学期にはレポートや論文の書き方の初歩的な指導も行う予定である。そして最後は自分自身の立場を確認しつつ、作品論をかけるようになることを目指す。

授業計画

まず第1学期はRobert Andersonの戯曲I Never Sang for My Fatherを精読し、戯曲内に散りばめられた様々なkey word, imageryから、主に父Tom Garrisonと息子Gene Garrisonの人物像を作り上げ、その対立、葛藤の本質を探る。夏休みにはこの戯曲の中で鍵となるテレビの西部劇ドラマに関してのリサーチをまとめてもらう。
第2学期はAndersonの別の戯曲Tea and Sympathy, Tennessee WilliamsのA Streetcar Named Desire, Cat on a Hot Tin Roof, Arthur MillerのDeath of a SalesmanなどとI Never Sang for My Fatherを比較し、共通した「男」の世界を抽出した上で、アメリカの「男性神話」に関して議論を重ねる。最終的には、すべての作業を統合してI Never Sang for My Fatherの作品論を書いてもらう。その過程で、資料や参考文献の使い方、また論文の書き方の初歩的な指導も行う予定。

授業方法

あらかじめ担当者を決め、学生による発表を中心に授業を進めるが、基本的に発言自由な授業なので、受講者は発表を聞くだけではなく、様々な読みを試みるためにも、特に第2学期は自発的に発言をして積極的に授業に参加することが求められる。

成績評価の方法

基本的に全授業の3分の2以上の出席をしている者を評価の対象とする。その上で、一年を通しての授業への貢献度(予習、発言回数・内容など)と、夏休み明け、学年末に提出してもらう二編のターム・ペーパーを総合して評価する。

教科書

Robert Anderson, I Never Sang for My Father, Dramatists Play Service Inc., 1996

参考文献

必要に応じて、授業の中で指示、紹介する。