労働法2
  雇用関係の展開、労働組合の役割

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
橋本 陽子 助教授 2 2~3 第2学期 6

授業の目的・内容

高度な生活水準を達成した日本では、労働は、生計維持の手段であるだけでなく、個人の自己実現の場として、重要な価値を担っている。国際競争の激化に伴い、高付加価値の製品・サービスの提供が要請される企業にとっても、個々の労働者が最大限の能力を発揮できることが非常に重要となってきている。近年の日本経済の悪化に伴い、終身雇用の崩壊、能力主義、不安定雇用の増加、過労死・・・新聞等でしばしば報道される雇用に関する話題は決して明るいとはいえないが、このような経済・社会環境の変化を背景として、多様な規制によって、公正な労働市場の実現を目的とする労働法の役割は、ますます重要になるといえよう。この授業は、受講者の主体的な参加を前提とする演習形式で行うが、中心となる判例の検討にとどまらず、関連する諸問題を扱うことにより、幅広く、有機的に労働法の知識を身につけることを目的とする。

授業計画

労働組合・過半数代表者―中労委(セメダイン)事件・最判平成13・6・14労判807・5、トーコロ事件・最判平成13・6・22労判808・11
使用者の誠実交渉義務と中立保持義務―カール・ツァィス事件・東京地判平成元・9・22労判548・64、日産自動車事件・最判昭和60・4・23民集39・3・730
就業規則の法的性質―秋北バス事件・最大判昭和43・12・25民集22・13・3459、電電公社帯広局事件・最判昭和61・3・13労判470・6
労働協約の効力-朝日火災海上(石堂)事件・最判平成9・3・27労判713・27、朝日火災海上保険(高田)事件・最判平成8・3・26民集50・4・1008
仮眠時間と割増賃金―大星ビル管理事件・最判平成14・2・28民集56・2・361
賃金全額払の原則-日新製鋼事件・最判平成2・11・26民集44・8・1085
配転・出向・転籍(労働契約承継法も含む)―東亜ペイント事件・最判昭和61・7・14労判477・6、新日本製鐵(日鐵運輸)事件・福岡高判平成12・11・28労判806・58他
人事考課―マナック事件・広島高判平成13・5・23労判811・21
労働条件の不利益変更―第四銀行事件・最判平成9・2・28民集51・2・705、みちのく銀行事件・最判平成12・9・7民集54・7・2075
10組合活動の正当性―JR東日本(神奈川国労バッジ)事件・東京高判平成11・2・24労判763・34、国鉄札幌運転区事件・最判昭和54・10・30民集33・6・647
11年休と争議行為―津田沼電車区事件・最判平成3・11・19民集45・8・1236
12プライバシーの保護・セクシュアル・ハラスメント―E-mail閲覧訴訟・東京地判平成13・12・3労判826・76、福岡セクシュアル・ハラスメント事件・福岡地判平成4・4・16労判607・6
13過労死の行訴と民訴―横浜南労基署長(東京海上横浜支店)事件・最判平成12・7・17労判785・6、電通事件・最判平成12・3・24民集54・3・1155

授業方法

演習形式(基本判例に関する報告者による問題点の整理、分析を踏まえて、当該判例及び関連する諸問題について、受講者との質疑応答を中心に、授業を進めます)

成績評価の方法

第2学期末試験
平常点と試験(又はレポート)の成績

教科書

中窪裕也・野田進・和田肇労働法の世界第5版、有斐閣
菅野和夫・西谷敏・荒木尚志判例百選第7版、有斐閣

参考文献

菅野和夫労働法第6版、弘文堂