労働法
雇用環境の変化と労働法

担 当 者 単 位 配当年次 開講期間 曜 日 時 限
橋本 陽子 助教授 4 3~4 通年 3

授業の目的・内容

仕事は、現代の豊かな成熟した日本社会において、単なる生計獲得の手段にとどまらず、個人の自己実現の場、さらに、地縁・血縁の絆がゆるくなる中で、社会とのつながりを認識する貴重な場となっている。なかでも、就労者の8割が従事する雇用労働は、使用者と労働者との間には交渉力の対等性が欠如していることから、労働法(労働保護法、労働契約法及び集団的労働法)による保護を本質的に必要とする。90年代以降の日本経済の長期低迷の中、失業率も5%台で高止まり、終身雇用の崩壊、能力主義、不安定雇用の増加、過労死・・・と、雇用をめぐる報道は決して明るいものではなく、労働法は、個々の労働者と使用者との間の法律関係を超えて、労働市場全体の公正な機能を確保するために、ますます重要な法分野となっている。また、多数の法律だけではなく、省令、指針に委ねられる規制も多く、全体像を正確に知ることが、非常に困難な分野でもある。この講義では、雇用環境の変化を踏まえつつ、労働法の基本的な知識をわかりやすく伝えることを目的とする。

授業計画

労働法の歴史・意義
労働法の基本概念(「労働者」「使用者」「労働契約」「労働組合」等)・1
労働法の基本概念(「労働者」「使用者」「労働契約」「労働組合」等)・2
労働関係の開始(募集、採用、試用)/職業紹介、能力開発・1
労働関係の開始(募集、採用、試用)/職業紹介、能力開発・2
男女平等と仕事と家庭の調和(均等法、育児介護休業法等)・1
男女平等と仕事と家庭の調和(均等法、育児介護休業法等)・2
非典型雇用(パートタイム労働、有期契約、労働者派遣)・1
非典型雇用(パートタイム労働、有期契約、労働者派遣)・2
10 外国人労働者
11 賃金・労働時間(時間外労働の法規制、柔軟な労働時間制度)・1
12 賃金・労働時間(時間外労働の法規制、柔軟な労働時間制度)・2
13 年次有給休暇、休職・1
14 年次有給休暇、休職・2
15 労働災害(労災保険法、安全配慮義務)
16 配転、出向、転籍(企業組織の再編と雇用関係の承継も含む)・1
17 配転、出向、転籍(企業組織の再編と雇用関係の承継も含む)・2
18 労働条件の変更(就業規則、労働協約の不利益変更と変更解約告知)・1
19 労働条件の変更(就業規則、労働協約の不利益変更と変更解約告知)・2
20 懲戒(懲戒権の根拠、懲戒処分の具体例)/職場におけるプライバシーの保護
21 労働関係の終了(解雇、合意解約、定年制)/引き抜き、転職、競業避止義務・1
22 労働関係の終了(解雇、合意解約、定年制)/引き抜き、転職、競業避止義務・2
23 労働組合(日本の労使関係の特徴、ユ・シ協定、チェックオフ)
24 団体交渉、労働協約
25 組合活動、争議行為
26 不当労働行為
27 雇用紛争処理制度
28 多国籍企業と労働法の適用
六法と判例百選を必ず教室に持参してください。

授業方法

講義形式。重要な論点については、問題演習を織り込みながら、知識をより確実なものにするよう努めます。皆さんの積極的な参加を期待します。

成績評価の方法

第2学期(学年末試験)
平常点(時々出席を取ります)と定期試験の成績

教科書

中窪裕也・野田進・和田肇労働法の世界第5版、有斐閣2003
ここでは一冊だけあげましたが、他にも良い教科書がたくさんありますので(最初の授業で紹介します)、いずれか一冊は購入し、講義の予復習に役立ててください。
菅野和夫・西谷敏・荒木尚志『労働法判例百選』第7版、有斐閣、2002年
労働関係法規集(2005年版)、労働政策研究・研修機構

参考文献

菅野和夫労働法第7版、弘文堂2005