美術史講義
中国絵画史概説

担 当 者 単 位 配当年次 開講期間 曜 日 時 限
板倉 聖哲 講師 4 2〜4 通年 4

授業の目的・内容

中国絵画の大きな特徴の一つとして、中唐時代以降、水墨(モノクローム)の山水画が画壇を主導するジャンルになったという現象が挙げられる。こうした現象は世界的に見ても稀で、それ以後、五代・北宋時代に至って、水墨山水画は黄金時代を迎えることになる。 
本講では、まさに水墨山水画の黄金期である五代・北宋時代、それに続く南宋時代の絵画を具体的に見ていくことで、東アジア絵画のカノンともいうべき宋時代絵画の様相を概観したい。実見の機会が比較的容易に得られる日本もしくは台湾所在の作品をなるべく採り上げ、その作品を詳細に見、様々な角度から比較・検討する作業からはじめていく。

授業計画

中国絵画の特徴とは?
溌墨という事件
江南系山水画の展開 董源と巨然
華北系山水画の隆盛 李成と范寛
郭熙「早春図」の達成 南北の総合
小さきものへの眼差し 趙令穣の「小景」画
徽宗の画院改革 南宋絵画への射程
蘇軾周辺の芸術ネットワークの表象 喬仲常「後赤壁賦図巻」
李唐 両宋画院をつなぐ画家
10 李迪 南宋院体画の達成
11 「文姫帰漢図」をめぐる地域性と政治性の表象 
12 馬遠 画院画家の自己意識
13 馬麟 皇帝とのコラボレーション
14 禅宗教団における画事
15 牧谿の活動とその評価
16 玉澗「瀟湘八景図」の史的位置
17 宋から元へ 再現主義から表現主義へ
毎回具体的な作品を数点トピックとして採り上げ、作品を詳細に見ながら、様々な角度から比較・検討していく。

授業方法

基本的に講義形式で、スライドを使用する。プリント配布。

成績評価の方法

レポート。中国絵画、一点もしくは数点を採り上げ、論じたものを提出。詳細は授業時に指示する。

参考文献

板倉聖哲・島尾新 他「南宋絵画ー才情雅致の世界」展図録根津美術館2004
本書は2004年に開催された展覧会の図録で、これ以外は授業時に随時提示する。

その他

日本人は古くから中国美術を愛好してきました。そのため、多くの優れた作品が日本に伝来しています。そのもっとも良質な作品群が南宋絵画であり、それらは世界的なレベルから見ても最高峰といえます。そして、それらの作品は中近世日本の画家たちにとってもっとも重要なカノンだったのです。講義では中国絵画のみならず日本絵画・西洋絵画との比較をしていきます。是非、日本人が憧憬した中国絵画の世界にふれてみてください。
連絡先(メールアドレス)itakura@ioc.u-tokyo.ac.jp