※美学美術史特殊研究
「聖母子を描く聖ルカ」――図像の変遷とその意味

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
高橋 裕子 教授 4 2~4 通年 4

授業の目的・内容

キリスト教美術では、聖書に基づくキリストの生涯だけでなく、後世の「聖人伝」の主題も多数取り上げられています。その中で特に「聖母子を描く聖ルカ」に注目するのは、四福音書記者の一人である聖ルカが、ある時期から、画家でもあったとされ、画家の守護聖人となったことによります。人々にとって身近な「神」であった聖人たちのイメージには、それを生み出した人々の意識が反映されているため、聖ルカの図像の成立と変遷をたどることは、キリスト教美術を支えた理念、時代や地域の絵画観、画家の自己認識の、より深い理解に至るはずです。また、同一主題の多様な表現の検討を通じて、時代・地域・画家個人の特質を論じ、同時にそれらを超えた主題の伝統の問題にも考察を進めます。

授業計画

イントロダクション
「聖母子を描く聖ルカ」――伝説の成立と聖像論争
代表的作例の概観
ビザンティン美術における図像原型の成立
中世の西欧への伝説・図像の伝播と画家組合の結成
写本装飾画における聖ルカ像
ロヒール・ファン・デル・ウェイデン
ロベール・カンパンの失われた作品(?)
15世紀のドイツ、フランスの作例
10 ヤン・ホッサールト
11 マールテン・ファン・ヘームスケルク
12 「博識な画家」としての聖ルカ像
13 ルネサンスの画家の自己認識と聖ルカのイメージ
14 イタリア14~15世紀の聖ルカ像
15 ラファエロ(?)の作品(ローマ、聖ルカ・アカデミー蔵)
16 画家の団体――組合からアカデミーへ
17 「聖母子を描く聖ルカ」の作者としてのヴァザーリ
18 「出現」する聖母子
19 16世紀イタリアにおけるアルプス以北の美術の受容
20 ヴァザーリの北方絵画観再考
21 アペレスと聖ルカ
22 17世紀以降の聖ルカ像
23 「画家のアトリエ」
24 おわりに

授業方法

スライドを用いた講義。プリントを配布します。

成績評価の方法

第2学期末のレポート(授業に関連したテーマを各人で設定)によって評価します。

教科書

詳細については授業時に指示します。

参考文献

開講時および授業の際に紹介します。