物性物理学3

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
栗原 進 講師 2 3 第2学期 2

授業の目的・内容

超伝導や超流動はマクロな量子現象とよばれる。原子・分子スケール以下のミクロな世界 
に限られる量子力学的秩序を、任意に大きなマクロ世界へ拡大して見せてくれる現象だから 
である。 量子力学的コヒーレンスの、この途方もない拡大の背後には、クーパー対の
ボース・アインシュタイン凝縮という機構がはたらいている。 超伝導状態が示す不思議な
現象とその理論的説明を、3年生にも理解できるように話すことを試みる。 

授業計画

§1.超伝導とは:その発見と研究の略史
   超伝導の二大特徴:完全導体性とマイスナー効果
   ロンドン理論:最初の現象論的理解、巨視的量子現象の概念
   巨視的波動関数の硬さとロンドン方程式
   ロンドン方程式と超伝導の二大特徴
   ロンドンの電流とオームの電流
§2.ギンツブルク・ランダウ理論:超伝導現象論の決定版
   秩序パラメーターと2次相転移
   自由エネルギー汎関数
   汎関数微分とギンツブルク・ランダウ方程式
   ロンドン方程式との関係
   第一種超伝導体と第二種超伝導体
§3.クーパー理論:微視的理論のヒント
   クーパーの問題設定:多電子系 → 2電子系 + 静かなフェルミ海
   相対座標に関するシュレーディンガー方程式
   シュレーディンガー方程式 → 積分方程式
   パウリ原理 → 引力系には必ず束縛解が存在!
   クーパー対の波動関数
   クーパー理論の示唆
   超伝導の微視的理論に必須の3要素
§4.電子・フォノン系の物理:電子間引力はどうして生ずるか?
   電子系の第二量子化表示
   電子場の演算子と反交換関係
   第二量子化の意味と利点
   単振動の第二量子化
   格子振動の基準座標表示と第二量子化
   第二量子化とハミルトニアン
   電子・フォノン相互作用ハミルトニアン
   簡単なファイマン図による相互作用の理解
   フォノン交換による電子間引力を導く
   対相関とBCSハミルトニアン
§5.BCS理論:超伝導理論の決定版
   シュリーファー:朝永理論からBCS基底状態に至る
   BCS基底状態の構造
   BCS状態の規格化と対状態の確率保存則
   エネルギーの期待値
   変分法による基底状態の決定
   ギャップパラメーターとギャップ方程式
   ボゴリューボフ準粒子 bogolon
   平均場近似
§6.ジョセフソン効果
   ゲージ対称性の自発的破れ
   2個の超伝導体の位相差は測定できるか
   トンネル接合とジョセフソンの摂動計算
   位相差に依存するエネルギー
   ジョセフソン効果
   ジョセフソン効果の意義
   ジョセフソン効果の応用

成績評価の方法

第2学期 (学年末試験) :試験を実施する
レポートと試験を両方考慮して成績を決定する。