思想史
西洋近代思想史

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
下川 潔 教授 4   通年 3

授業の目的・内容

社会システム系の総合基礎科目であることを考慮し、西洋近代における倫理・法・政治の基本原理にかかわる思想の歴史として、「自然法と自然権」の思想史を概観する。言い換えれば、政治権力に対して人間の自然本来の法と権利を武器にして人間の尊厳を擁護しようとした近代西洋思想を歴史的に学ぶ。対象とする時代は主に17世紀と18世紀であり、対象とする地域は主にブリテン、西欧、アメリカであるが、自然法/自然権思想の内容やその意義を理解するために、それ以前の自然法/自然権思想の系譜や、それ以後の自然法/自然権批判や現代の人権思想にも言及する。
主な思想家を時間的な順序に従って解説するが、概して次のようなトピックをカバーする。(1)人間の基本的権利とは何であり、それは何を根拠として成立するのか?人間の権利を成立させるのは、政治権力か、神か、人々の利益か、人間相互の合意か?(2)人身の自由、財産所有権、信教の自由などの基本的権利は、いかなる根拠によって自然本来の人間の権利と見なされうるのか?(3)政府を作る目的はなにか?政府と自然権の関係は?(4)政府の法に従う義務はあるのか、あるとすればそれはなぜか?(5)圧政に抵抗する権利はあるか?また、いかなる方法で抵抗するのが許されるか?(6)本来あるべき権利と、法によって事実認められた権利を峻別すべきか?実際に権利が法的に認められていない場合であっても、人間の扱われ方を権利のボキャブラリーで語ることに何らかの意義はないか?
予備知識のない人にも分かるように、主要思想家の生涯と時代背景を手短かに説明し、実際に主要著作の重要な箇所を主に抜粋で読み、思想内容の解説をする。第1学期の授業では、序論として古代と中世の自然法の伝統からはじめ、17世紀のグロチウス、ホッブズ、プーフェンドルフ、ロックを主に考察する。第2学期には、ロックの思想遺産から始め、18世紀アメリカのジェファソンらの自然権思想を一瞥し、ヒュームにかなりの時間を割き、最後に、ベンサムとミルの自然権批判とそれに対する反批判を考察したい。
取り上げる思想家の著作の中には翻訳されていないものもあるし、日本語で読める良質の解説書もあまり多いとは言えない。しかし、近代の自然法/自然権思想は、人間の生き方と共同体のあり方についての基本問題を非常に包括的に扱っており、この思想の形成には法学者のみならず哲学者も加わっている。しかも、この思想は後の社会科学の母体となったものである。それゆえ、この思想は、総合基礎科目の素材としても、また哲学や社会科学の入門コースの素材としても、ふさわしいものであると言えると思う。

授業計画

導入−授業方針の説明、自然法/自然権の観念を示す幾つかの事例
古代・中世における自然法思想のルーツ
近代自然法/自然権思想のはじまり(1)−グロチウス
近代自然法/自然権思想のはじまり(2)−ホッブズ
近代自然法/自然権思想の継承と発展(1)−プーフェンドルフ
近代自然法/自然権思想の継承と発展(2)−ロック
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13 ロックの遺産と18世紀の自然法/自然権論者−ジェファソンほか
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15 自然法思想の世俗化−ヒューム
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19 自然権批判−ベンサムとミル
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22 まとめ−自然法/自然権思想の価値
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24 調整日
上の授業スケジュールは変更することもある。それは授業の際に知らせる。

授業方法

講義形式で解説を加えるが、自宅で古典的テクストを読むことが要求される。論文作成にあたっては、ノート、プリント、教科書以外に図書館の参考文献を使う必要が生じる。

成績評価の方法

少なくとも学年末に1回論文を提出してもらうが、第1学期末にも課題を提出してもらうかもしれない。但し、受講者数が多い場合には、論文を提出してもらう代わりに、持ち込み不可の試験をおこなう可能性もある。出席も大事だが、授業中に質問したり積極的に意見を述べた人には高い評価を与える。

教科書

ジョン・ロック著、鵜飼信成訳市民政府論』(岩波文庫岩波書店
現在入手可能な上記の文庫本1冊は必ず購入してほしい。他の資料はプリントして配布する。

参考文献

授業中に適宜紹介する。