福祉
「福祉」とは何か

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
岡野 浩 講師・他 4   通年 2

授業の目的・内容

急速な少子高齢化、また経済の低成長の時代に入り、「福祉」の見直しが急務であることが叫ばれている。次々と到来する現実の諸問題は、個人にも社会にも否応無く具体的な対応や決断を迫ることになる(例えば、介護保険の導入や年金・医療保険制度の根本的な見直し等)。しかし、基本的な価値観としてキリスト教的伝統・文化を共有する欧米社会とは異なり、その思想的・宗教的伝統を異にする我が国の場合、「福祉」という概念そのものは空洞化・形骸化されていると言わねばならない。「福祉」を単なる行政や制度上の問題としてのみ捉えるのではなく、ましてや、個々人の善意や献身に委ねるのでもなく(また同時に、安易な「自己責任論」をも克服しつつ)、今こそ、人間が―共に生きる―という「人間共生論」の視座から「福祉」概念の内実について考える必要があろう。そして、そのような新たな可能性を提示する勇気と努力が私たち一人一人に求められているのである。
そこで本講義では、現代日本における貧困・低所得者福祉、エイズ問題、老人医療、高齢者福祉と経済政策、女性福祉、児童福祉、障害児・不登校問題、医療保険と財政等を主なテーマとして取り上げる。受講者は各分野第一線で活躍する講師陣の講義を通じて、私たちが生きるこの社会の―現実(それは時にあまりにも過酷なものではあるが)―を直視して欲しい。一年間を通じて、現代日本における福祉または社会福祉の現状を各テーマについて検証し、その問題点と展望を実践的な観点から明らかにしてゆきたい。

授業計画

本講義の立場と方法、及び一年間の授業計画(日程、テーマ等)について
               岡野浩(学習院大学文学部哲学科)
貧困・低所得者福祉を考える(1)ホームレス問題の現状とその支援
               大迫正晴(東京都特別区人事、厚生事務組合)
貧困・低所得者福祉を考える(2)生活保護の現状と課題
               大迫正晴(東京都特別区人事、厚生事務組合)
エイズを巡る諸問題(1)   池上千寿子(NPO法人ぷれいす東京)
エイズを巡る諸問題(2)   池上千寿子(NPO法人ぷれいす東京)
老人医療と福祉(1)     高橋龍太郎(東京都老人総合研究所)
老人医療と福祉(2)     高橋龍太郎(東京都老人総合研究所)
老人医療と福祉(3)     高橋龍太郎(東京都老人総合研究所)
高齢者福祉と介護保険制度(1)馬場純子(専修大学文学部)
10 高齢者福祉と介護保険制度(2)馬場純子(専修大学文学部)
11 老人問題の現場から(1)   奥川幸子(対人援護職トレーナー)
12 老人問題の現場から(2)   奥川幸子(対人援護職トレーナー)
13 女性福祉(1)        堀千鶴子(城西国際大学福祉綜合学部)
14 女性福祉(2)        堀千鶴子(城西国際大学福祉綜合学部)
15 婦人保護事業の現場から    武井かおる(横浜市女性福祉相談員)
16 家族福祉から「共生」を考える 酒井潔(学習院大学文学部哲学科)
17 児童福祉(1)        鈴木公基(鎌倉女子大学家政学部)
18 児童福祉(2)        鈴木公基(鎌倉女子大学家政学部)
19 児童福祉(3)        鈴木公基(鎌倉女子大学家政学部)
20 障害児・不登校・行動福祉(1)小野昌彦(奈良教育大学教育実践綜合センター)
21 障害児・不登校・行動福祉(2)小野昌彦(奈良教育大学教育実践綜合センター)
22 障害児・不登校・行動福祉(3)小野昌彦(奈良教育大学教育実践綜合センター)
23 医療・保険          遠藤久夫(学習院大学経済学部)
24 1年間のまとめ・・・「共生社会」のあるべき姿を求めて(1) 
               岡野浩(学習院大学文学部哲学科)
25 1年間のまとめ・・・「共生社会」のあるべき姿を求めて(2) 
               岡野浩(学習院大学文学部哲学科)
現代における福祉の実態(制度、活動)と今後の課題とを、それぞれ具体的なテーマや現場にできる限り密着しながら明らかにしてゆきたい。そのため、特にホームレス支援、老人問題、婦人保護事業、児童福祉等についてはそれぞれソーシャルワーカーの方にも話して頂く。そうした多様な<実践>の諸問題に触れながら、又同時に「福祉」概念そのものの意味についても<哲学・思想史的>な反省を加えつつ、「人間共生」の理念へ向けて再検討し、再構築することが出来ればと願っている。

授業方法

講義方式を基本とする。受講生には、「福祉」のいわば−最前線で−日々活動する講師陣と接することの出来るこの貴重な機会を最大限に活用して欲しい。質問は大いに歓迎する。毎回かなりの量の資料(プリント)が配布され、またスライド、ヴィデオ等も多用される。

成績評価の方法

第2学期 (学年末試験) :試験を実施する
学年末に試験を実施する(第2学期授業の各講師が出題する問題の中から、1題を選び回答する方式を採る。配布資料およびノートの持ち込みは可。)成績は、レポート(夏季休暇明けに提出)と学年末試験の結果を綜合して評価する。

参考文献

一番ヶ瀬康子新・社会福祉とは何かミネルヴァ書房
広井良典日本の社会保障』(岩波新書岩波書店
アーサー・グールド著、高橋・二文字・山根訳福祉国家はどこに行くのかー日本・イギリス・スウェーデンミネルヴァ書房
秋山智久・高田真治社会福祉の思想と人間観ミネルヴァ書房
花村春樹「ノーマライゼーションの父」N・E・バンク・ミケルセンーその生涯と思想ミネルヴァ書房
上に挙げたものは、オーガナイザーから差し当たり推薦する文献である。この他各講師からも適宜指示される予定である。