※心理学特殊研究3(社会心理学特論2)

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
宮田 加久子 講師 2 M 第1学期 2

授業の目的・内容

電子メールや電子掲示板など、インターネットは、人と人、組織と組織をつなぐメディアとして機能しています。そこで、インターネットでのコミュニケーションの特質を考えた上で、インターネットを通じた社会ネットワークの維持や形成、協力を促進することを通じての社会的ジレンマの解決、そしてエンパワーメントについて、社会関係資本(social capital)の理論を用いて解説をします。具体的には、第1に、従来の対面コミュニケーションによる社会ネットワークと、電子メールや電子掲示板を通じた社会ネットワークでは、形成過程やその関係性の質にどのような違いがあるのかを比較し、ネットワーク社会での人間関係の変容について検討します。第2に、インターネットによって形成・維持される社会ネットワークを活用することの効果を検証します。特に、個人の消費行動の意思決定過程(ミクロレベル)、社会ネットワーク内でのソーシャル・サポートの授受(メゾレベル)、さらには社会的マイノリティのエンパワーメント(マクロレベル)という3つのレベルでの影響を考えます。そして、第3には、メディアを利用して積極的に社会に関わることのできる層とできない層との格差が経済的格差や文化的格差を引き起こすのかという問題について、議論をしたいと思います。その上で、受講者の皆さんがこれらのメディアをクリティカルに捉え主体的に利用するためのメディア・リテラシーの育成を目指します。

授業計画

インターネット研究の系譜:今までのインターネットに関する社会心理学の研究内容とその研究方法を概説します。
社会関係資本とは何か1:社会関係資本とは、「信頼や互酬性の規範が成り立っている網の目状の社会ネットワークとそこに埋め込まれた社会的資源」を意味しており、社会関係資本の充実した社会では経済が効率化し市民参加が促進されるため、政治学や公共経済学で盛んに研究がされています。その理論についてレビューします。
社会関係資本とは何か2:社会関係資本の理論から、インターネットの利用が社会関係資本にどのように影響するのかについてのモデルを提示して解説をします。
インターネットでつなぐ社会ネットワーク1:インターネットのコミュニケーションとしての特徴を説明した上で、従来の対面コミュニケーションによる社会ネットワーク(対人関係)と、電子メールや電子掲示板を通じた社会ネットワークでは、形成過程にどのような違いがあるのかを、いくつかの調査結果を引用しながら解説します。
インターネットでつなぐ社会ネットワーク2:インターネットでつながる社会ネットワークの関係性の質(紐帯の強さや信頼性)とネットワーク構造、さらにはその機能について論じます。
オンラインでのソーシャル・サポート1:だれがどのようなサポートをオンラインで交換しているのか、その実態を、様々な実例を交えて説明します。そして、家族や友人など強い紐帯の人々の間でのサポートの授受を扱ってきた従来の研究結果との相違点を検討します。
オンラインでのソーシャル・サポート2:オンライン・コミュニティにおいて、今まで会ったこともないような人々にもサポートを提供するのはなぜでしょうか。サポートの提供の動機付けから、オンライン・コミュニティにおける互恵性の規範の形成とその機能について考えます。
消費者行動におけるインターネットの利用:インターネットを介した他者からの情報が意思決定過程に及ぼす影響をについて、消費者行動の側面から検討します。
インターネットにおける信頼の形成:オンライン上で出会う他者が信頼できるかどうかを人々はどのように判断しているのでしょうか。また、信頼をどのようにして形成しているのでしょうか。インターネット・オークションの実験や調査結果を紹介しながら、オンラインでの信頼の重要性を一緒に考えていきます。
10 インターネットを用いたエンパワーメントと市民参加:インターネットを通じて人と人、組織と組織がつながることで、社会はどのように変わるのでしょうか。インターネットのマクロレベルの効果を、マイノリティのエンパワーメントと一般市民の社会参加という2つの文脈で検証します。
11 デジタル・ディバイド:「インターネットを利用して積極的に社会に関わることのできる層とできない層との格差が経済的格差や文化的格差を引き起こすのか」等のデジタル・ディバイドの問題を検討します。
12 メディア・リテラシー:デジタル・ディバイドを解消するためのメディア・リテラシーの必要性について説明します。その上で、メディアの特徴を理解した上で、それらを通じて情報を取捨選択し、情報を解釈する能力、自己提示として自ら情報を発信する能力、メディア操作技能の3つの要素から成る広い意味でのメディア・リテラシーを身につけるためにはどうしたらよいのかを、一緒に考えたいと思います。

授業方法

授業は毎回パワーポイントで作成したスライドを用いて進めます。また、授業毎に前回の授業内容のポイントを復習してから進めますが、その折に受講生に質問をしたり、授業内容に関連して意見を求めることが多くあります。

成績評価の方法

評価は、レポート(80%)および質問紙調査への回答(10%)、出席(10%)の総合点によって行います。レポートでは、インターネット利用とその効果について受講生が授業内容を踏まえて自分なりの問題意識や仮説を設定し、それをインタビュー、内容分析、質問紙調査などの方法で実証していくことを重視します。

教科書

宮田加久子きずなをつなぐメディア:ネット時代の社会関係資本NTT出版2005

参考文献

宮田加久子インターネットの社会心理学風間書房2005
Barry Wellman and Caroline Haythornthwaite, The Internet in everyday life, Blackwell, 2002
Robert Kraut, Malcolm Brynin, Sara Kiesler, Computers, phones, and the Internet: domesticating information technology, Oxford University Press, 2006
参考論文は、授業の中で紹介する。