※心理学特殊研究3
犯罪者行動の心理学

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
越智 啓太 講師 2 2~4 第1学期 5

授業の目的・内容

犯罪心理学には、大きく分けて、犯人や非行少年の鑑別や矯正に関する臨床心理学的な研究と、犯罪が生じてから犯人を捕まえるまでの過程、いわゆる捜査過程、に心理学的な知識を用いる研究がある。本講義では、このうち、後者のものを主に扱うつもりである。特に、犯罪者の行動パタンについての研究と行動パタンからの犯人の割り出し、動機の割り出しなどに関する比較的新しい研究を紹介する。具体的には以下の犯罪について取り扱う。(1)連続殺人 FBIによる連続殺人の犯行タイプの分類から、最近のより洗練された統計的手法を用いた研究まで、具体的な事例をもとに検討する。(2)大量殺人 アメリカの学校における銃乱射事件や、ファストフード店や会社での銃乱射事案などについて、犯人の行動パタンとその分類について検討する。(3)児童を対象にした性犯罪 児童を対象にした性犯罪について、その犯行パタンの問題から、裁判における被害の立証の困難性、捜査の困難性の問題まで取り扱う。(4)ストーキング 犯人のタイポロジーと行動パタンを中心として、精神医学者やFBIなどによっておこなわれた古典的な研究から、最近の研究まで検討する。(5)テロリズム、主に人質交渉と突入状況をとりあげ、テロリストの行動の推定と対策についての問題を検討する。

授業計画

犯罪心理学の枠組み
犯罪心理学を構成する犯罪原因論、捜査心理学、矯正心理学などの分野を概観し本講義の対象である犯罪者行動研究の位置づけを行う。
連続殺人(1)
連続殺人の概念、連続殺人捜査の困難性、典型的な事例
連続殺人(2)
連続殺人犯人のタイポロジー、FBI方式のプロファイリング
連続殺人(3)
ホルムズの動機による連続殺人の分類、女性による連続殺人の特性
連続殺人(4)
多変量解析を用いた連続殺人の分析、リバプール方式のプロファイリング、リンク分析
大量殺人(1)
大量殺人の概念、典型的な事例
大量殺人(2)
大量殺人犯人のタイポロジー、動機の分類
大量殺人(3)
大量殺人への対策、学校における銃乱射事案の分析と対抗策
子どもに対する性犯罪(1)
子どもに対する性犯罪者の特性とタイポロジー
10 子どもに対する性犯罪(2)
子どもに対する性犯罪への防犯手法、環境的防犯対策
11 子どもに対する性犯罪(3)
子どもに対する性犯罪者の矯正、監視
12 ストーキング(1)
ストーキング犯罪の特性とタイポロジー
13 ストーキング(2)
ストーキング犯人のエスカレーションと危険性の予測、防犯手法
14 テロリズム(1)
対テロ戦略における心理学の役割、テロリズムの特性とテロリストのタイポロジー
15 テロリズム(2)
テロリストとの交渉、人質交渉、突入の意志決定と危険性の査定

授業方法

授業は講義により行う。

成績評価の方法

第1学期 (学期末試験) :試験を実施する
毎回授業終了後にコメントや質問を記入させ、内容が優れているものには得点を加算する。

教科書

教科書は使用しない。授業中にいくつかの映画や小説を引用する。引用する映画・小説のリストは授業時に配布する。

参考文献

越智啓太犯罪心理学』(朝倉心理学講座18朝倉書店2006年、ISBN:4-254-52678-4

履修上の注意

第一回目授業に必ず出席のこと。

その他

扱うテーマが犯罪という不快なものであり、また、授業では犯罪に関連した話や不快な資料も使用する可能性があるので、受講に当たっては、各自の興味や適性を考慮すること。