英語文化コース演習G
18−19世紀イギリス文学を通して考える女性と教育

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
久保 陽子 講師 4 3〜4 通年 2

授業の目的・内容

18-19世紀のイギリス女性の歴史を、19世紀後半に発展した女子高等教育思想へとつながる流れの中で、主に文学作品を手がかりに考察します。女子高等教育思想は、実際にはほんの一部の中産階級の女性たちによって議論されたものでした。そこで目指された教育的バックグラウンドとは一体どのような意味を持っていたのでしょうか。第1学期では、女性にとってまだ門戸が固く閉ざされていた時代の状況を扱い、第2学期では、それが次第に開かれ、20世紀へとつながる入り口までを見ていきます。
この授業を通して、高等教育機関で今まさに学んでいる皆さんに、学びに対するより深い理解を得てもらいたいと願っています。女性と教育の歴史を学ぶことは、結婚史や家族史を学ぶこととも関わってきます。そこには当然、男性の存在も欠かせません。男子学生の受講・ディスカッションへの参加も大いに期待します。

授業計画

オリエンテーション(1);19世紀後半の女子高等教育改革運動
オリエンテーション(2);18世紀の女性と「たしなみ(accomplishments)教育」
ジェイン・オースティンの小説世界;結婚というゴールに向けて
〃 ;cleverなヒロインとは
〃 ;senseとsensibility
〃 ;中産階級の女性
コンダクト・ブック(社会的規範やマナーを説いたエチケット・ブック)の世界
〃 ;ハンナ・モアと福音主義
ブロンテ姉妹の小説世界;ガヴァネス(住み込みの家庭教師)
10 〃 ;ヴィクトリア時代の「余った女」たち
11 〃 ;女性と職業
12 〃 ;教養小説(ビルドゥングス・ロマン)として
13 第1学期のまとめ・課題レポートについて
14 オリエンテーション(1);課題レポートの評論会
15 オリエンテーション(2);課題レポートの評論会
16 ジョージ・エリオットの小説世界;宗教と社会
17 〃 ;福音主義的・清教徒的教育観
18 〃 ;個人主義的モラルと義務
19 家政読本の世界;ビートン夫人の家庭運営
20 〃 ;ビートン夫人のフェミニズム
21 オックス・ブリッジの女子カレッジ;ニューナム・カレッジとサマヴィル・カレッジ
22 〃 ;エミリ・ディヴィスとガートン・カレッジ
23 〃 ;エリザベス・ワーズワースとレイディ・マーガレット・ホール
24 20世紀へ;女子高等教育とヴァージニア・ウルフの『三ギニー』(1938年)
25 〃 ;女子高等教育とアイリス・マードックの『赤と緑』(1965年)
26 女子カレッジを舞台にした小説、Lawana Blackwell, Catherine's Heart(2002)
27 第2学期のまとめ・課題レポートについて

授業方法

テーマ毎に教員が概説しますが、基本的には、予め担当を決めて、個人またはグループによる報告(受講者数に応じて変化します)をしてもらいます。担当者は、扱うテキストに即して要約・注釈をつけ、社会的・文化的背景などを自由に調べ、レジュメを作成します。報告の後は、全員で質疑応答やディスカッションを行いますので、担当ではない学生も、自分の考えやディスカッションのテーマとなり得るようなポイントを整理した上で臨むようにして下さい。質問の仕方やテーマの提示の仕方などは、適宜、教員からもアドヴァイスします。小説や著述の抜粋部分の読みが中心ですが、映画化されている小説に関しては映像も参照します。

成績評価の方法

各学期末レポート、リアクション・ペーパー、出席
大体の目安は、出席(報告・レジュメの出来・質疑応答への参加度を含む)30%、リアクションペーパー30%、学期末レポート40%です。リアクションペーパーでは、授業で討論した内容をもとに自分の考えをいかに発展させ効果的に表現しているかを評価します。学期末レポートでは、適切な文献にあたった上でいかに実証的な文章が書けているかを評価します。

教科書

開講時に指定します。教員がその都度プリントで配布するか、授業開始後まとめてこちらで発注し授業内で販売する予定です。

参考文献

授業内に適宜提示します。

履修上の注意

履修者数制限あり。
第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

授業には毎回、英和辞書を持参してください。