言語学特殊研究
敬語とポライトネス

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
三宅 和子 講師 4 D/M 通年 4

授業の目的・内容

社会生活を営む上で、人間関係を良好に保つために必要とされるポライトネスは、Brown & Levinson(1978/1987)によって理論にまで高められ、爾来世界中で参照されている。この理論では日本語の敬語はどのように位置づけることができるのだろうか。あるいは、この理論では敬語や日本語の対人関係の言語行動は十分に説明できるのだろうか。本講義では、B&L理論の発表以来四半世紀を通して議論を積んできた敬語とポライトネスの関係について、テキストや問題提起されている論文などをたどり、読み解き、ディスカッションしながら考察を深める。

授業計画

導入:ポライトネスと敬語の研究
ポライトネス論議の背景
続き
Brown & Levinsonのポライトネス理論
続き
敬意とポライトネス
続き
「距離」とポライトネス
続き
10 ポライトネスのコミュニケーション
11 続き
12
13 これまでのまとめ
14 批判されるB&Lのポライトネス理論-どのようなところが非難されているか
15 続き
16 Politeness: Some universals of language usageを読む
17 続き
18
19
20
21 アジア圏からの批判(Matsumoto, Y.)
22 アジア圏からの批判(Ide, S.)
23 アジア圏からの批判(Gu, Y.)
24 欧米での批判(Wierzbicka, A.)
25 欧米での批判(Watts, R.)
26 欧米での批判(Eelen, G.)
27 まとめ
実施内容に関しての詳しい説明は第1回目の授業で行う。基本的には、以下のような授業目標をもつ。
1)敬語とポライトネスの関係を捉えるカギ概念をつかむ。
2)敬語とポライトネスにおける重要な議論を理解する。
3)敬語とポライトネスの関連について、社会・文化・時代の変化における相違と関連づけて考える。

授業方法

第1学期は『ポライトネス入門』を主に使いながら、演習形式で、敬語、ポライトネス、そしてその2つがどのような関係で理解されているかの全体像をつかむ。適宜必要な文献を参照する。第2学期は、B&Lのポライトネス理論の問題点とされているところを丁寧に読んでいき、そこからあぶり出される敬語とポライトネスの概念の相違、ポライトネス理論の普遍性と限界を考えていく。後半には英語の原文を読む作業が増える。

成績評価の方法

レポート
評価の方法:発表40%、レポート50%、授業への貢献度10% で評価する

教科書

滝浦真人ポライトネス入門第1版、研究社2008年、ISBN:9784327377236
教科書のほか、日本語・英語の資料を授業時に配布する

参考文献

荻野綱男他敬語-理論と実践』(『日本語学9月号臨時増刊号』2005 Vol.24第1版、明治書院2005
滝浦真人日本の敬語論-ポライトネス理論からの再検討第1版、大修館書店2005
Brown, Penelope and Stephen Levinson, Politeness: some universals in language usage, 1st Edition, Cambridge University Press, 1987
Watts, Richard, Politeness, 1st Edition, Cambridge: Cambridge University Press, 2003
Eelen, Gino, A Critique of Politeness Theories, 1st Edition, St. Jerome Publishing, 2001

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。