※哲学演習
認識論の歩み

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
下川 潔 教授 4 D/M 通年 2

授業の目的・内容

今年度から「認識論の歩み」という演習をはじめる。3年もしくは4年かけて、近代のデカルトから現代のクワイン、ローティ等に至るまでの西洋哲学における認識論の歩みが、懐疑主義とどう関係しているかをしっかりと押さえながら、17世紀から21世紀までの認識論の基本テクストを読み、認識論の諸問題を考察したい。特定の認識論の内部にはいり、そこで打ち出される様々な主張を学び検討するだけでなく、認識論の問題がどれほど懐疑主義によって形成されているか、また、伝統的認識論の放棄や改造を主張する批判的立場がいかなるものであるかも考察したい。このようなやり方で、曲がりなりにも近現代の基本テクストの多くをカバーして、認識論の領域とその境界線を見通すことができるようになることを目指す。
今年度の演習は、この「認識論の歩み」の第一部に相当する。この第一部では、近代認識論の背景として宗教改革とそれに伴う懐疑主義の復活、ならびに科学革命を考察したうえで、懐疑主義を克服し確実性を確立しようとしたデカルトの試みとそれに対する批判的応答、さらに、ロックの経験をベースとした建設的で穏健な懐疑主義とバークレーの非物質主義による懐疑主義克服の試みを考察する。
来年度の第二部では、ヒュームにおける懐疑主義と自然主義、リードの常識主義、カントによる超越論的観念論による懐疑主義克服を考察し、その先の第三部(や第四部)では、現代哲学に目を転じて、ムーア、ストラウド、グレイリング、クワイン、ローティ、ネーゲルその他のテクストを取りあげる予定である。もちろん、それぞれの年度での演習は独立した一つのまとまりをもつものであるから、一つの年度だけ履修しても十分な収穫が得られるはずである。

授業計画

授業方法の説明、プリント配布、宗教改革と近代における古代懐疑主義の復活
宗教改革と近代における古代懐疑主義の復活
古代懐疑主義
モンテーニュ
デカルトによる懐疑主義克服の試みとその批判的評価
−『省察』の読解と批判−
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13 第1学期のまとめ
14 王立協会の科学者たち
15 ロックの経験論と穏健な懐疑主義
−『人間知性論』の読解と批判−
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20 バークレーによる懐疑主義克服の試み
−『ハイラスとフィロナスの三つの対話』の読解と批判−
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26 第2学期のまとめ
演習開始時により詳しいスケジュール表を配布する。学習効果を上げるために、原典と翻訳を組み合わせて使用するが、原典読解のためにかなり時間をかけてほしい。

授業方法

この演習に参加する人は、(1)古典的テクストの原典またはその英訳(プリントで配布)の読解のための予習をする(毎回、全員が予習する)、(2)テクストの邦訳は、自分で全体を一通りきちんと読み通す、(3)適宜演習で指定する論文または著書について、レジュメを作成しレビュー(要旨報告と批判的検討)をおこなう、ということが必要。これら三つのことを平常時にやってもらう。こうすれば学年末には容易に論文が書ける。
私は、取りあげたテクストの内容に解説を加えるが、そのほかに、テクストの歴史的背景や、演習で取りあげないテクストについて解説を加える。

成績評価の方法

平常点と学年末論文

教科書

デカルト著、山田弘明訳省察』(ちくま学芸文庫筑摩書房2006
バークリ著、戸田剛文訳ハイラスとフィロナスの三つの対話』(岩波文庫岩波書店2008
原典やその英訳からの抜粋はプリントで配布する。ただし、邦訳のうち『省察』と『ハイラスとフィロナスの三つの対話』はともに文庫本で比較的安価に入手できるので、これら二冊は必ず購入すること。