労働法1

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
橋本 陽子 教授 2 2〜3 第1学期 4

授業の目的・内容

高度な生活水準を達成した日本では、労働は、生計維持の手段であるだけでなく、個人の自己実現の場として、重要な価値を担っている。国際競争の激化に伴い、高付加価値の製品・サービスの提供が要請される企業にとっても、個々の労働者が最大限の能力を発揮できることが非常に重要となってきている。近年の日本経済の悪化に伴い、終身雇用の崩壊、能力主義、不安定雇用の増加、過労死・・・新聞等でしばしば報道される雇用に関する話題は決して明るいとはいえないが、このような経済・社会環境の変化を背景として、多様な規制によって、公正な労働市場の実現を目的とする労働法の役割は、ますます重要になるといえよう。この授業は、受講者の主体的な参加を前提とする演習形式で行うが、中心となる判例の検討にとどまらず、関連する諸問題を扱うことにより、幅広く、有機的に労働法の知識を身につけることを目的とする。

授業計画

本授業の趣旨・目的および授業進行上の方針・方法について説明
労働者の概念―横浜南労基署長(旭紙業)事件・最判平成8・11・28労判714号14頁ほか
使用者の概念―朝日放送事件・最判平成7・2・28民集49巻2号559頁ほか
指揮命令権―国鉄鹿児島自動車営業所事件・最判平成5・6・11労判632号10頁ほか
労働協約―都南自動車教習所事件・最判平成13・3・13民集55巻2号395頁、朝日火災海上(石堂)事件・最判平成9・3・27労判713号27頁、朝日火災海上(高田)事件・最判平成8・3・26民集50巻4号1008頁
就業規則―秋北バス事件・最大判昭和43・12・25民集22巻13号3459頁、第四銀行事件・最判平成9・2・28民集51巻2号705頁、みちのく銀行事件・最判12・9・7民集54巻7号2075頁
労働者の人権―福岡セクシュアル・ハラスメント事件・福岡地判平成4・4・16労判607号6頁ほか
雇用差別―丸子警報器事件・長野地裁上田支判平成8・3・15労判690号32頁、野村證券(男女差別)事件・東京地判平成14・2・20労判822号13頁ほか
採用内定の法的性質―大日本印刷事件・最判昭和54・7・20民集33巻5号582頁
試用期間の法的性質―三菱樹脂事件・最大判昭和48・12・12民集27巻11号1536頁
10 賃金―日新製鋼事件・最判平成2・11・26民集44巻8号1085頁ほか
11 労働時間―三菱重工業事件・最判平成12・3・9民集54巻3号801頁、日立製作所事件・最判平成3・11・28民集45巻8号1270頁ほか
12 休暇・休業―時事通信社事件・最判平成4・6・23民集46巻4号306頁、東朋学園事件・最判平成15・12・4労判862号14頁ほか
13 安全衛生・労働災害―横浜南労基署長(東京海上横浜支店)事件・最判平成12・7・17労判785号6頁、電通事件・最判平成12・3・24民集54巻3号1155頁
14 人事(配転・出向・転籍・昇進・降格)―東亜ペイント事件・最判昭和61・7・14労判477号6頁、新日本製鐵(日鐵運輸第2)事件・最判平成15・4・18労判847号14頁、アーク証券事件・東京地決平成8・12・11労判711号57頁
15 本授業のまとめ

授業方法

演習形式(基本判例に関するケースブックの質問に基づいて、受講者との質疑応答を中心に、授業を進めます)。適切な論述の仕方についても指導したいと思います。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):80%
授業に対する貢献度:10%
提出物:10%

教科書

荒木尚志・島田陽一・土田道夫・中窪裕也・水町勇一郎・村中孝史・森戸英幸ケースブック労働法第2版、有斐閣2008
森戸英幸プレップ労働法第2版、弘文堂2008
中窪裕也・野田進・和田肇労働法の世界第6版、有斐閣
水町勇一郎労働法第2版、有斐閣2008
上記教科書のうち概説書については、各自好きな本を選び、授業の予復習において熟読するようにしてください。授業では、とくに使いません。

参考文献

菅野和夫労働法第8版、弘文堂2008
菅野和夫・土田道夫・山川隆一・大内伸哉ケースブック労働法第4版、弘文堂2008
菅野和夫・西谷敏・荒木尚志労働判例百選第7版、有斐閣2002
菅野和夫『労働法(第8版)』弘文堂および『労働判例百選(第7版)』は、授業中に適宜参照しますので、必ず教室に持参してください。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。