● 労働法２

高度な生活水準を達成した日本では、労働は、生計維持の手段であるだけでなく、個人の自己実現の場として、重要な価値を担っている。国際競争の激化に伴い、高付加価値の製品・サービスの提供が要請される企業にとっても、個々の労働者が最大限の能力を発揮できることが非常に重要となってきている。近年の日本経済の悪化に伴い、終身雇用の崩壊、能力主義、不安定雇用の増加、過労死・・・新聞等でしばしば報道される雇用に関する話題は決して明るいとはいえないが、このような経済・社会環境の変化を背景として、多様な規制によって、公正な労働市場の実現を目的とする労働法の役割は、ますます重要になるといえよう。この授業は、受講者の主体的な参加を前提とする演習形式で行うが、中心となる判例の検討にとどまらず、関連する諸問題を扱うことにより、幅広く、有機的に労働法の知識を身につけることを目的とする。

１	本授業の趣旨・目的および授業進行上の方針・方法について説明
２	懲戒・内部告発―関西電力事件・最判昭和58・９・８労判415号29頁、大阪いずみ市民生協事件・大阪地堺支判・平成15・６・18労判855号22頁
３	解雇・整理解雇―高知放送事件・最判昭和52・１・31労判268号17頁、東洋酸素事件・東京高判昭和54・10・29労民集30巻５号1002頁
４	辞職、合意解約、定年、雇止め―大隈鐵工所事件・最判昭和62・９・18労判504号６頁、日立メディコ事件・最判昭和61・12・４労判486号６頁ほか
５	労働組合と団体交渉―三井倉庫港運事件・最判平成元・12・14民集43巻12号2051頁、シムラ事件・東京地判平成９・３・27労判720号85頁ほか
６	組合活動・争議行為―御國ハイヤー事件・最判平成４・10・２労判619号８頁、大成観光事件・最判昭和57・４・13民集36巻４号659頁
７	不当労働行為―紅屋商事事件・最判昭和61・１・24労判467号６頁、オリエンタルモーター事件・最判平成７・９・８労判679号11頁
８	合併・営業譲渡・会社分割―タジマヤ事件・大阪地判平成11・12・８労判777号25頁ほか
９	国際的労働関係―ルフトハンザ事件・東京地判平成９・10・１労判726号70頁、改進社事件・最判平成９・１・28民集51巻１号78頁
10	職務発明、競業避止義務―オリンパス光学工業事件・最判平成15・４・22民集57巻４号477頁、フォセコ・ジャパン・リミテッド事件・奈良地判昭和45・10・23下民集21巻９・10号1369頁
11	労働市場と法規制―東京エグゼクティブ・サーチ事件・最判平成６・４・22民集48巻３号944頁、大誠電機工業事件・大阪高判平成15・１・28労判869号68頁ほか
12	労働紛争の処理―第二鳩タクシー事件・最大判昭和52・２・23民集31巻１号93頁、国鉄団交拒否事件・東京地判昭和61・２・27労民集37巻１号123頁ほか
13	労働条件の変更―スカンジナビア航空事件・東京地決平成７・４・13労判675号13頁ほか
14	職場におけるプライバシー―日経クイック情報事件・東京地判平成14・２・26労判870号83頁ほか
15	本授業のまとめ

演習形式（基本判例に関するケースブックの質問に基づいて、受講者との質疑応答を中心に、授業を進めます）。適切な論述の仕方についても指導したいと思います。

第2学期（学年末試験）：80％

授業に対する貢献度：10％

提出物：10％

荒木尚志・島田陽一・土田道夫・中窪裕也・水町勇一郎・村中孝史・森戸英幸『ケースブック労働法』第2版、有斐閣、2008年
森戸英幸『プレップ労働法』第2版、弘文堂、2008年
中窪裕也・野田進・和田肇『労働法の世界』第６版、有斐閣
水町勇一郎『労働法』第2版、有斐閣、2008年
上記教科書のうち、概説書については好きな本を選び、授業の予復習において熟読するようにしてください。授業では、ケースブック以外はとくに使いません。

菅野和夫『労働法』第8版、弘文堂、2008年
菅野和夫・土田道夫・山川隆一・大内伸哉『ケースブック労働法』第4版、弘文堂、2008年
菅野和夫・西谷敏・荒木尚志『労働判例百選』第7版、有斐閣、2002年
菅野和夫『労働法（第８版）』（弘文堂）および『労働判例百選（第７版）』（有斐閣）は、授業中に適宜参照しますので、教室に持参してください。