美術史講義

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
板倉 聖哲 講師 4 2〜4 通年 2

授業の目的・内容

日本絵画は過去、もしくは同時代の中国絵画を常に様々な形で受け入れてきた。中でも南宋絵画は室町時代以来、「東山御物」を頂点として、水墨画の「古典」という地位に君臨してきたといっても過言ではない。
本講義では、前期において、日・中絵画を比較することで、日本画家の視点から中国絵画の享受の仕方を具体的に理解し、後期では、カノンとも言うべき南宋時代絵画を画院を中心に概観する。実見の機会が比較的容易に得られる日本もしくは米国・台湾所在の作品をなるべく採り上げ、その作品を詳細に見、様々な角度から比較・検討する作業からはじめていく。

授業計画

中国絵画の見方−比較から
「東山御物」−足利将軍コレクション
雪舟が見た中国絵画−古典性と同時代性
狩野探幽が見た東アジア−絵画史的な視点
狩野山雪が見た中国絵画−正統と奇想
伊藤若冲が見た東アジア1 花鳥
伊藤若冲が見た東アジア2 人物
南宋絵画の構図
李唐 両宋絵画を繋ぐ存在
10 高宗画院の政治性
11 院体画の精華 李迪とその世代
12 馬遠 南宋画院の伝統性とアイデンティティー
13 馬麟 皇帝のパトロネージ
14 夏珪 室町山水画の原型
15 禅宗教団と絵画
16 牧谿と玉澗 水墨画の古典
17 東アジアという視点
毎回具体的な作品を数点トピックとして採り上げ、作品を詳細に見ながら、様々な角度から比較・検討していく。

授業方法

基本的に講義形式で、スライド・パワーポイントを使用する。プリント配布。

成績評価の方法

レポート
第1・第2学期末にそれぞれレポート提出。

参考文献

板倉聖哲・島尾新 他「南宋絵画ー才情雅致の世界」展図録根津美術館2004
志賀太郎・山本泰一 他「室町将軍の至宝を探る」展図録徳川美術館2008
これら以外は授業時に随時提示する。

その他

日本人は古くから中国美術を愛好してきました。そのため、多くの優れた作品が日本に伝来しています。
日本絵画と接するとき、作品自体を鑑賞することが最も大切なことですが、画家が実際いかなるものに刺激を受けたのかを考える際に、中国・韓国の絵画の流れを知っておくと理解の大きな助けになることがしばしばあります。中近世日本の画家たちにとって南宋絵画は重要なカノンだったのです。この機会に、日本人が憧憬し続けた中国絵画の世界にふれてみてください。
連絡先(メールアドレス)itakura@ioc.u-tokyo.ac.jp