東アジアと日本の倫理思想

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
加藤 みち子 講師 4   通年 1

授業の目的・内容

東アジアの諸国と日本とは、儒教や仏教などのある程度共通の宗教思想の背景を持っている。そのため、キリスト教を背景とする欧米諸国やイスラム教を背景とする中東・東南アジア諸国とよりは、相互理解しやすいとなんとなく思いがちである。しかし、実際にはさまざまな意識のずれが存在し、それが社会的・政治的なトラブル—たとえば靖国問題のような—の契機にもなってきた。こうした問題の背景の一つは、「宗教」の問題であり、それを背景とした「倫理」意識のずれである。とりわけ問題なのは、特に日本側が「なぜそれが問題であるのかすらわからない」ということである。 
本講義では、以上のような問題を理解する手がかりとして、東アジアの宗教とそれを背景とした倫理思想についてまず紹介したい。そして現代日本社会の倫理をめぐる諸問題について検討していきたい。その上で「東アジア」という視点から倫理の問題にどう取り組みうるかを考えていきたい。具体的には、まず第1学期には東アジアの宗教思想、すなわち、仏教・神道・儒教・東アジアのキリスト教などを取り上げ、現代の問題を考える上で、これらの古典的宗教思想がどのようなものであるかを紹介していきたい。そして第2学期に応用倫理的諸問題を手がかりに、現代社会において「倫理」がどのような形で要請されるのかを考えていく。
単に知識を得るだけでなく、現代社会を生きる日本人として、倫理的な諸問題を自覚的に考える契機としてほしい。質問も大いに歓迎する。

授業計画

イントロダクションとガイダンス
仏教の倫理思想(1)−「苦」と「空」の宗教が「倫理」の役に立つのか?
仏教の倫理思想(2)−「慈悲」と「菩薩行」というアプローチ
仏教の倫理思想(3)− 因果と業(カルマ)論の役割
仏教の倫理思想(4)− 世俗内仏教としての「〜道」
神道の倫理思想(1)−「カミ」への「マツリ」からうまれる「ひとの道」
神道の倫理思想(2)−「正直」と「清浄」の倫理
神道の倫理思想(3)−三社託宣と伊勢参り
神道の倫理思想(4)−「まことの道」・「まことの恋」
10 儒教の倫理思想(1)−「親孝行」と「敬老」はなぜしなければならないか
11 儒教の倫理思想(2)−政治と社会はどうすれば「倫理的」になるか
12 東アジアのキリスト教(1)−日本にはなぜキリスト教徒が少ないのか
13 東アジアのキリスト教(2)−韓国にはなぜキリスト教徒が多いのか
14 第1学期まとめ
15 第2学期イントロダクション
16 「靖国問題」から考える東アジアの倫理思想(1)
17 「靖国問題」から考える東アジアの倫理思想(2)
18 人工妊娠中絶について考える「生」の倫理(1)
19 人工妊娠中絶について考える「生」の倫理(2)
20 「性」と「生」から考える現代の倫理(1)
21 「性」と「生」から考える現代の倫理(2)
22 ターミナルケアと「死」をめぐる倫理と東アジアの宗教思想(1)
23 ターミナルケアと「死」をめぐる倫理と東アジアの宗教思想(2)
24 「環境倫理」について考える—東アジアの宗教思想と自然観(1)
25 「環境倫理」について考える—東アジアの宗教思想と自然観(2)
26 「死刑」制度をめぐる問題について考える—東アジアの「罪と罰」(1)
27 「死刑」制度をめぐる問題について考える—東アジアの「罪と罰」(2)
28 最終回—現代日本を生きる人間として、「倫理」をどう考えるか?

授業方法

基本的に、講義形式で進める。授業中にアンケートなどもとめることがある。

成績評価の方法

レポート
出席はとらない。通年で一本のレポートにより評価する。

教科書

教科書は特に指定しない。必要に応じて、授業時にプリントを配布する。

参考文献

参考文献は、問題が多岐にわたるため、授業内で随時紹介する。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。