東アジア世界
魯迅と毛沢東の思想と行動

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
丸川 哲史 講師 4   通年 1

授業の目的・内容

近代中国においては、「革命」という手段をもってネイション形成が試みられた時期があった。その中で、魯迅は伝統的な知識人からの脱皮を試みる精神革命の担い手として登場し、また毛沢東は、マルクス主義的な実践を近代中国において土着化させようとした、と言える。両者の立ち位置は違ったものであったが、共通するテーマがあった。それは例えば、知識人の「思想改造」というテーマであった。本講義のねらいは、両者の思想と行動を比較することを通じ、中国が通過せねばならなかった特異なネイション形成にかかわる「痛み」を理解し、今日の現代中国の歴史的基礎を確認することである。

授業計画

ガイダンス
魯迅の幼少期の経験とその後のテーマ化
日本留学における衝撃
辛亥革命の経験とその挫折、「阿Q正伝」の解読
『吶喊』のその他の作品解読
五・四運動とは何か? 魯迅及び毛沢東
一九二〇年代の魯迅、北京時代
一九二七年の反共クーデタ前後の魯迅の変化
上海時代の魯迅
10 日本における魯迅研究(竹内好を中心に)
11 日本における魯迅研究(丸山昇、伊藤虎丸、丸尾常喜など)
12 実弟、周作人に関して(木山英雄の仕事など)
13 中国における魯迅の扱われ方(一九八〇年代まで)
14 中国における魯迅研究(一九八〇年代以降)
15 小まとめ
16 毛沢東の幼少期から青年期まで
17 毛沢東にとっての五・四運動前後とその経験
18 一九二〇年代における毛沢東(農民運動)の思想
19 一九二七年クーデタ以降の毛沢東(長征まで)
20 長征以降の毛沢東
21 新中国成立以降の毛沢東(「十大関係を論ずるなど」)
22 文革期における毛沢東、その革命思想と現実の進展の矛盾について
23 文革期後期から改革開放にかけての中国と毛沢東評価の変化
24 一九八〇年代における中国、及び第二次天安門事件
25 一九九〇年代、鄧小平「南巡講話」以降の中国
26 日本における毛沢東受容の持つ意味
27 現代中国にとって毛沢東とは何であったのか?
28 現代中国における「思想改造」の意味
29 魯迅の死の持つ意味と毛沢東の死が持つ意味
30 まとめ

授業方法

教科書、参考書、プリント、映像資料など利用しつつ、講義を進める。

成績評価の方法

第1学期 (学期末試験) :試験を実施する
第2学期 (学年末試験) :試験を実施する

教科書

丸川哲史魯迅と毛沢東以文社2010年、ISBN:9784753102785
鈴木将久・丸川哲史竹内好セレクションⅡ アジアへの/からの眼差し日本経済評論社2007年、ISBN:4818819069
授業時に指示する。

参考文献

竹内好阿Q正伝・狂人日記』(岩波文庫岩波書店ISBN:400320252X
竹内好魯迅評論集』(岩波文庫岩波書店ISBN:4003202589
金冲及その他毛沢東伝 上みすず書房ISBN:4622038064C1023
金冲及その他毛沢東伝 下みすず書房ISBN:4622038072C1023
汪暉思想空間としての現代中国岩波書店ISBN:4000234242
授業時に指示する。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。