美術史講義
西洋における風俗画の歴史

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
高橋 達史 講師 4 2~4 通年 3

授業の目的・内容

17世紀のオランダ絵画を中心とする西洋近世風俗画の源流と展開のあとをたどりながら、美術分野の序列の問題、視覚史料としての風俗画(および風俗版画)の可能性と限界についてさまざまな角度から論じることを通じて、美術作品における「詩と真実」もしくは「現実と虚構」の問題を自分自身で考える契機を提供するのを主たる目的として講義しますが、「写実性と芸術家の個性」の問題にも関心を抱いてもらうことを望んでいます。どの時代のものであれ風俗画はそれが生み出された時代や社会を反映していますが、定型的な主題が繰り返し取り上げられる一方、日常的に目にされていたにもかかわらずなぜか絵画化がなされずに終わった主題も多々あるので、「絵画化の法則」や視覚史料としての信憑性の問題も毎回のように取り上げるつもりです。履修者諸君が絵を好きになり美術鑑賞が自然なかたちで生活の一部となるなら幸いです。

授業計画

「風俗画」という概念をめぐって/西洋風俗画史における17世紀オランダの意義
「風俗画」概念の成立状況の再考察/18世紀のフランス絵画に対する17世紀オランダ絵画の影響
古代~初期ルネサンスにおける風俗描写(1) 《バイユーの刺繍不布》と『モーガン聖書』における風俗描写
古代~初期ルネサンスにおける風俗描写(2) ロレンツェッティ《善政の効果》および国際ゴシック期の絵画
古代~初期ルネサンスにおける風俗描写(3) 「月々の労働」の展開 カロリング朝~トレント「鷲の塔」壁画
古代~初期ルネサンスにおける風俗描写(4) ランブール兄弟『ベリー公爵のいとも豪華なる時祷書』とその影響
16世紀以降における月暦画と四季図の展開
「理想の愛/愛の園」の系譜 舞踊(ダンス)の描写の展開
農民風俗画の展開(1) 「農民版画」から17世紀まで
10 農民風俗画の展開(2) 18世紀から20世紀まで
11 最古の職業と「低俗な愛」の系譜
12 カラヴァッジョ派の風俗画 女占い師と賭博師をめぐる問題
13 西洋美術における「老いの描写」の歴史
14 「主婦の鑑」「母の鑑」としての女性像の確立
15 家庭における子供の躾と教育をめぐって
16 17世紀オランダにおける「室内画」の流行とその意義
17 フェルメールの風俗画の独自性と意義
18 17世紀オランダにおける「手紙」の主題の考察
19 19世紀の風俗画と17世紀オランダ絵画の基本的相違について
20 愛の駆け引きと音楽をめぐる主題の考察
21 市場の情景の描写の展開 風俗画と静物画の境界の問題
22 18世紀の風俗画の概観
23 家族肖像画と風俗画の境界線をめぐって
24 ホーガースと"narrative painting"の成立をめぐって
25 ヴィクトリア朝風俗画の新しさと”narrative painting”をめぐる問題
26 19世紀後半の「群衆風俗画」をめぐって
27 印象派およびポスト印象派の風俗画における類型と偏差をめぐって
28 風俗画における象徴と寓意の解読
29 定型主題と「描かれざる場面」をめぐって
30 予備日

授業方法

パワーポイントを用いた授業です。毎回プリントを配布するとともに、用紙を配って質問や感想を書いてもらい、次回の講義の参考にします。評価は70パーセントが試験の点数、30パーセントを出席点に割り当てます。

成績評価の方法

第1学期 (学期末試験) :試験を実施する
第2学期 (学年末試験) :試験を実施する

教科書

教科書は使用しません。毎週プリントを配布してそれに代えます。

参考文献

参考図書は扱っている問題ごとにそのつど教室で指示します。