※ドイツ演劇演習
演劇学入門(理論と実践)

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
平田 栄一朗 講師 4 D/M 通年 3

授業の目的・内容

ドイツの演劇学は1980年代にその対象を戯曲や歴史事象から演出(Inszenierung)や上演(Aufführung)にシフトチェンジし、この分野で世界を先導する優れた研究を積み上げてきています。この授業では、その一端に触れる機会を多く設けることで、演劇学の手ほどきをいたします。第一学期ではこの分野の第一人者であるErika Fischer-Lichteベルリン自由大学教授の入門書“Theaterwissenschaft“(2009)を読み進めることで、基礎知識をドイツ語の用語や概念を通じて身につけてもらいます。第二学期は演劇学の応用編とし、具体的な作品とその演出を取り上げて、上演分析を行います。上演分析は演劇学の中枢とされているもので、戯曲がどのように舞台化されているかを演出・美術・身振り・聴覚的効果などから探究します。この作業を戯曲と舞台作品の映像資料を基に行い、授業で発表してもらいます。この作業を通じて演劇学の応用に慣れると同時に、演出が舞台創造の中心である現代ドイツ演劇の特徴についての具体的な知識を増やすことも目指したいと思います。

授業計画

演劇学に関するオリエンテーションI
演劇学に関するオリエンテーションII
Aufführungの概念I
Aufführungの概念II
Aufführungsanalyse I
Aufführungsanalyse II ――『エミーリア・ガロッティ』の演出を例に
Aufführungsanalyse III ――『エミーリア・ガロッティ』の演出を例に
Theaterhistoriografie I
Theaterhistoriografie II
10 Theoriebildung I
11 Theoriebildung II
12 文化のAufführung I
13 文化のAufführung II
14 InszenierungとAufführung
15 第一学期の総括
16 上演分析と「演出演劇」に関するオリエンテーション
17 (以下は順不同です)シラー作、ニコラス・シュテーマン演出:群盗
18 シラー作、アンドレア・ブレート演出:ドン・カルロス
19 ゲーテ作、クラウス・ミヒャエル・グリューバー演出:ファウスト第一部
20 ゲーテ作、クリストフ・マルターラー演出:ファウスト第一部
21 クライスト作、ペーター・シュタイン演出:公子ホンブルク
22 ハウプトマン作、ヴァレンティン・イェーカー演出:ローザ・ベルント
23 シュニッツラー作、ミヒャエル・タールハイマー演出:恋愛三昧
24 ホルヴァート作、クリストフ・マルターラー演出:カジミールとカロリーネ
25 ツックマイアー作、カタリーナ・タールバッハ演出:ケーペニックの大尉
26 ブレヒト作、ハイナー・ミュラー演出:アルトゥロ・ウイ
27 ミュラー作、ロバート・ウィルソン演出:ハムレットマシーン
28 ベルンハルト作、クラウス・パイマン演出:座長ブルスコン
29 イェリネク作、ヨシ・ヴィーラー演出:雲。家
30 第二学期の総括
第一学期に用いるテクストErika Fischer-Lichte: Theaterwissenschaft (Verlag: UTB, A.Franke)をあらかじめ各自で購入してください。

授業方法

第一学期では“Theaterwissenschaft“を章・節ごと(10から15ページ程度)に分けて、担当者が該当箇所を毎回報告(30分程度)し、その後は皆で意見交換を行います。ドイツ語を一定量読むのは大変かもしれませんが、このような地道な作業を経ることで、演劇学の用語や概念が身につくはずです。第二学期では、レッシング・シラー・ゲーテなどから最近の劇作家の戯曲と演出作品(映像資料)をあらかじめ選んで分析し、その報告をしてもらいます。参加者の状況次第では、毎回一作品のペースでなく、二回に一作品をテーマとすることもありえます。なお対象作品は、戯曲がドイツ語圏のものを選びましたが、シェイクスピア、チェーホフなどの作品の優れた演出作品もあります。取り上げる作品は(できれば第一学期中に)相談して決めましょう。

成績評価の方法

発表・出席・授業参加の姿勢などを総合的に判断して評価します。

教科書

Erika Fischer-Lichte:, Theaterwissenschaft, UTB, A.Franke, 2009

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。