※哲学特殊研究
ライプニッツ『モナドロジー』を読む

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
酒井 潔 教授 4 2~4 通年 3

授業の目的・内容

再来年(2014年)はG・W・ライプニッツ(1646-1716)が所謂『モナドロジー』(1714)を執筆してからちょうど300年にあたり、海外ではすでに記念学会などが計画され、同著再評価の機運も出始めている。もともと、最晩年のライプニッツが、知人に求められ、自らの哲学の要約としてフランス語で書き下したこの無題の短編は、番号を付した90個の段落が箇条書きに並んでいるだけの、いわば謎の文書である。しかし彼の死後まもなく母国語ドイツ語に訳され、その際の表題中にあった「モナドロジー」(Monadologie)という一語によって以後通称され、広く読まれるようになる。こうしてカントやドイツ観念論はもとより、フランス哲学、生の哲学(ニーチェなど)、論理学、さらには20世紀の現象学(フッサール、ハイデッガー)、社会学、文学(ベケット)などさまざまな分野に影響を与え続けてきた。だが、一見簡素な文体をまといながら、内容は多岐にわたり、かつそれぞれがきわめて独創的な着想に富むために、その全体像はにわかには把握し難く、明らかな誤解も決して稀ではないのである。
そこで本年度は、『モナドロジー』のテクストを精緻に読み解きながら、いわゆるライプニッツのモナド論的形而上学と呼ばれているものの特徴と、その哲学的議論の豊かなポテシャルともいうべきものを明らかにしようと思う。
具体的には、テクストとして、フランス語原文とドイツ語対訳(ハルトムート・ヘヒトによる新訳)を備えた版を用い、逐文逐語的解釈を遂行しながら、かつ必要な哲学史的説明を行う。そのうえでライプニッツの哲学的立場について考察を加え、かつ現代思想に対するアクチュアリティについても考えて行きたい。そして、たんなる唯物論(原子論)でも、観念論でもなく、さりとて単なる(デカルト的な)二元論とも異なり、またそれゆえにハイデッガーやベケットも終生注目し続けた「モナド論」の独特な可能性を明らかにしたい。
この授業は「特殊研究」であって、「演習」ではないが、しかし毎回予習をしてきてほしい。テクストはフランス語とドイツ語の対訳版を使用するので、少なくともフランス語またはドイツ語のどちらか一方を履修していることが理想である。しかし英語訳や日本語訳に依拠した参加も可能である。

授業計画

イントロダクション
Leibniz, Monadologie を第1節から読む
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15 第1学期に読んだ部分のまとめ
16 Leibniz, Monadologie を読む
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25 ライプニッツのモナド論〔まとめ〕(1)
26 ライプニッツのモナド論〔まとめ〕(2)
27 別のモナド論(1)
28 別のモナド論(2)(可能性と展望)
29 グループ・ディスカッション
30 1年間のまとめ

授業方法

まずは、演習に準じた形式で、『モナドロジー』を皆で一緒に読んで行く。そうしてわれわれなりの解釈を構築し、また、哲学史上の文脈や、現代哲学への関連などについて適宜説明する。また、グループ・ディスカッションを実施し、受講生が自分の意見を発表し、相互に意見交換する場を設ける。また、学年末には、1年間の講義で扱ったトピックスのなかから各自自由にテーマを選んで、レポートを書いてもらう。

成績評価の方法

平常点
訳読あるいは精読、プロトコル、グループディスカッション、学年末レポートなどを総合して評価する。

教科書

『モナドロジー』のフランス語原文、ドイツ語訳、英語訳、日本語訳については、第一回の授業時に指示する。

参考文献

酒井潔ライプニッツ』(人と思想清水書院2008
酒井潔・佐々木能章ライプニッツを学ぶ人のために世界思想社2009
酒井潔世界と自我―ライプニッツ形而上学論攷―創文社1987
佐々木能章ライプニッツ術工作舎2003
下村寅太郎ライプニッツ』(下村寅太郎著作集みすず書房
山本信ライプニッツ哲学研究東京大学出版会1953
それ以外の邦語文献、および欧語文献については、そのつど教室で指示する。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。