特設演習(民法判例を読む)
判例の読み方の訓練

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
岡 孝 教授 4 1~2 通年 3

授業の目的・内容

判例の読み方を訓練する。とりわけ力点を置きたいのは、その事件の事実関係を整理することである。そのさい、さしあたり5W1Hに注意してまとめてもらおう。第1審、第2審、上告理由、最高裁の順番で判決を読んでもらう。多くの事件では公式判例集には第1審の判決の主文は書いてあっても、理由は省略されている。そこで、この場合には、第2審裁判所が証拠調べの結果認定した事実を中心に、その事件の事案(事実関係)をまとめることになる。昨年度の経験によると、とにかく簡単にまとめようとする傾向があり、好ましくない。不必要な情報をだらだらと引用する必要はないが、肝心の情報を見落としたのでは、判決の結論が理解できない。各判決の意義については、事案の整理後に説明をするので、受講生諸君はとにかく判決文を読んで事案の要約に集中してもらいたい。

授業計画

開講の辞/授業の進め方の説明/取り上げる判例の割り当て
具体例で事案の要約をやってみる:①最判昭35.3.18民集14-4-483(営業許可のない食肉販売の効力)
②最判昭39.1.23民集18-1-37(有毒あられ混入事件)
③最判昭36.12.15民集15-11-2852(不特定物売買における瑕疵ある物の給付)
④最判平13.11.27民集55-6-1311(566条3項の1年の期間と消滅時効との関係)
⑤大判昭10.10.5民集14-1965(宇奈月温泉事件)
⑥最判昭43.9.3民集22-9-1767(対抗力なき借地人の保護)
⑦最判昭45.12.11民集24-13-2015(612条2項の解除権の制限)
⑧最判昭44.7.4民集23-8-1347(非営利法人の目的の範囲)
10 ⑨最判昭62.12.15民集41-1-1(女児の逸失利益の算定)
11 ⑩最判昭56.1.19民集35-1-1(651条の解除権の制限)
12 ⑪最判昭36.11.30民集15-10-2629(事務管理を根拠に法定代理権を認めることはできるか)
13 ⑫最判昭44.4.25民集23-4-904(背信的悪意者排除)
14 ⑬最判平8.10.29民集50-9-2506(背信的悪意者からの転得者の保護)
15 ⑭最判昭45.9.22民集24-10-1424(94条2項類推適用)/まとめ(事案の要約のしかた)
16 ⑮最判平10.2.13民集52-1-65(未登記通行地役権の対抗力)
17 ⑯最判昭49.9.26民集28-6-1213(96条3項の善意の第三者と対抗要件具備の必要性)
18 ⑰最判昭38.2.22民集17-1-235(共同相続と登記)
19 ⑱最判昭37.6.22民集16-7-1374(明認方法の対抗力--立木の二重譲渡)
20 ⑲最判昭29.8.31民集8-8-1567(寄託動産の譲渡と対抗要件)
21 ⑳最判平12.6.27民集54-5-1737(盗品の取得)
22 ㉑最判昭34.7.14民集13-7-960(自治体の長の行為と110条類推適用)
23 ㉒最判昭42.4.20民集21-3-697(代理人の権限濫用)
24 ㉓最判昭46.4.20家月24-2-106(親権者と子の利益相反)
25 ㉔最判昭62.7.7民集41-5-1133(無権代理人の責任)
26 ㉕最判平5.1.21民集47-1-265(無権代理人が本人を共同相続をした場合の無権代理行為の効力)
27 ㉖最判昭36.2.16民集15-2-244(梅毒輸血事件:医療機関の注意義務)
28 ㉗最判昭45.7.16民集24-7-909(転用物訴権1)
29 ㉘最判平7.9.19民集49-8-2805(転用物訴権2)
30 まとめ
取り上げる判例なり順番は、学生諸君と相談の上差し替えたり、順序を入れ替えたりすることもある。報告者は事前にレジュメを作成して、メールで私に送信すること。それを私がG-portに掲載することで他の受講生への配布に代える。

授業方法

報告者以外も各自要約しておくこと。なぜある事実を重視するのかなどについて、質疑応答の形で詳しく検討する。最終的には、5W1Hにこだわらず、必要最小限度の要約を目指したい。例えば、その事件にとって「いつ」契約を締結したかが問題にならなければ、何年何月に売買契約を締結したなどを事案の整理に書き込むことは不要であろう。

成績評価の方法

学年末のレポート
担当判例のレジュメの内容、授業中の質疑応答における態度と学年末のレポートで評価する。

教科書

なし。判例のコピーは配付する。

参考文献

テーマごとの参考文献は授業中に紹介する。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

1.まじめに勉強したいという学生を希望する。できるだけ年度の初めに報告者を割り当てるので、事前に準備をすること。
2.報告者には、レジュメ案を提出してもらい、不足などがあれば加除修正をお願いする予定である。
3.無断欠席をする学生は履修をやめてもらうこともある。
4.質問は大歓迎である。原則としてメールでお願いする。アドレスは授業で知らせる。当方から連絡をしたときには、必ず返事を送信すること。
5.1年生が中心だが、2年生の受講も認める。