日本政治思想史Ⅰ
史論と儒学

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
中田 喜万 教授 2 1~4 第1学期 2

授業の目的・内容

政治学が前提とする近代の普遍的(であるはずの)原理が、西洋に固有の歴史の所産である以上、これだけではどうしても、日本を含めた非西洋文化圏の諸観念について説明しきれない部分が残ります。この講義では、そのような政治学の外側にあるものの考え方を、いわゆる政治学と比較しつつ、内在的に理解することをめざします。
研究史的事情により、およそ近世日本(ほぼ江戸時代)を中心に論じますが、そればかりに限定するつもりはありません。また、日本思想なる一個の完結した体系があるわけではないので、日本的と思われるものだけを恣意的にならべるつもりもありません。そもそも「日本」という概念自体、歴史上うつりかわっているのですから。ここでは広く何らかの意味で「日本」に関係する様々な思想を、様々な文脈の中で読み直すよう試みます。特に近世を考える場合、中国宋代以降の儒学の文脈を欠かすことができません。
ところで、現代日本からするとおよそ異質であろう近世日本の出来事が、時おり身近に思われてしまうことがあります。それが単なる自己投影でないとすれば、深刻な問題でしょう。自由と民主主義とを自任している現代日本政治の根底に潜む問題が、もしかして何かあるのか、考えてみることもこの講義の目的の一つ(ただし副次的)です。
そんなに肩肘張らずとも、昔の珍しい話は率直に面白く感じられます。好事家的関心の満足も目的の一つです。
第1学期には、ナショナリズムの文脈をはなれて日本史と儒学とを多角的に読む可能性があることを確認します。

授業計画

導入:日本政治思想史の成立
思想史の方法と対象
表象としての「日本」(1)「さくら」
同(2)国語、民族、国号、国旗、国歌、祝日など ~ナショナリズム論
歴史観の思想 (1)「国体」
同(2)「公家」と仏門
同(3)近世から近代へ
同(4)近世の史論と儒学 『大日本史』など
同(5)歴史観の比較(進歩か衰退か循環か)
10 儒学の基本概念(1)「気」 ~「鬼神」を含めて
11 同(2)「天」 ~「革命」を含めて
12 同(3)「道」 五常・五倫
13 同(4)「理」 宋学について
14 儒学の政治概念 ――「文明」・「礼楽」・「中華」
15 理解度の確認
進行が予定と異なることがあります。
講義内容に関する御質問・御意見・御感想等は随時受けつけます。

授業方法

講義形式。履修者が少人数の場合は適宜対話を交えます。

成績評価の方法

第1学期 (学期末試験) :試験を実施する

教科書

教科書は特に指定しません。自家製の講義資料集の冊子を配布します。

参考文献

法経図書センター6階に設けられた、担当教員の指定図書を参照してください。
講義ではそのつど関連する文献を指示します。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

3年生以上での履修を奨めます。前年度までに「西洋政治思想史Ⅰ・Ⅱ」を履修しておいてください。
可能な限り、金曜3時限「特別演習(日本文化とナショナリズム)」と同時に学んでください。