特別演習
地球環境ガバナンスⅡ

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
阪口 功 教授 2 2~4 第2学期 1

授業の目的・内容

※ この授業は第1学期の特別演習の続きで、以下同文です。
中央政府が存在しない、法による解決が期待できないアナーキーな国際社会において、我々は地球環境問題の解決に向けてどのように取り組んでいけばよいのでしょうか。地球環境ガバナンスとはこのような極めて実践的な課題に答えるための学問です。
第二次世界大戦後、経済活動のグローバル化と規模の急激な拡大により発生したグローバルな環境破壊に対応するために、既に数多くの地球環境条約が締結されています。それにもかかわらず、ほとんどの地球環境条約はコモンズの悲劇を回避することに失敗しています。半世紀前の鯨資源の乱獲の歴史はクロマグロでも繰り返されています。鯨やクロマグロは特別なケースではなく一般的なケースです。温暖化防止のための取り組みも一向に進んでいませんし、熱帯雨林の破壊や生物多様性の喪失は有史以来のスピードで進んでいます。
貿易、人権、開発など他の分野では同じアナーキーな国際社会にあってもそれなりの成果を上げています。地球環境問題ではなぜ保護管理の失敗を繰り返し続けるのでしょうか。この授業では、常にこの問いを念頭に置きながら、地球環境ガバナンスを妨げている構造的要因を理解し、国際機関、国家、NGO、企業、市民など多様なアクターの役割に着目しながら、問題解決のための糸口をともに学んでいきます。
授業では、まず地球環境問題の特性、国際社会の特性、国家の行動原理、NGOや国際機関の役割、国際制度の形成過程、制度の有効性を左右する要因など、について理論的に検討していきます(理論編)。続いて、生物多様性の保護や地球温暖化問題などの各事例を理論的な視座を持って学んでいきます(事例編)。第2学期は自由研究課題に取り組み、授業で学んだ理論を使いながら、分析能力の涵養に努めます。最終的には、個々の地球環境問題の解決に向けた問題提起能力を育成していきます。
NGO、国際機関、環境関連省庁、環境問題に積極的に取り組んでいる企業などへの就職を考えている人、この分野で将来研究者を目指す人、個人的にエコロジストとして環境問題に日々取り組んでいる人には特にお勧めです。これからこの問題について学んでいきたい人にもお勧めします。

授業計画

イントロダクション
国際制度の遵守・有効性問題と制度デザイン
レジーム複合体とレジーム間相互作用(環境と貿易の関係など)
プライベートレジーム(森林認証ラベル、水産認証ラベルなど)
海洋汚染防止レジーム
国際漁業管理レジーム
森林保護レジーム
砂漠化防止レジーム
水をめぐる国際制度(国際河川など)
10 国際感染症防止制度(マラリア、エイズ、ポリオなど)
11 国際機構改革と世界環境機関の構想
12 レポート報告
13
14 映像資料視聴
15 総括
英語文献も取り扱いますが、個々の英語力を勘案しながら文献を選定しますので、英語力に自信のない学生も歓迎します。

授業方法

日本語、英語の文献を輪読していきます。演習形式のため、発表の準備を十分にするだけでなく、他者の発表に対して建設的なまたは批判的な発言を積極的に行うことが求められます。

成績評価の方法

総合評価
・出席(10)、発表(30)、討論への参加(20)、期末レポート(40)に基づき総合評価します。
・演習形式のため討論に積極的に参加することが求められます。
・無断欠席、発表のすっぽかしは厳禁。
・1学期4回の欠席で自動的にアウト。遅刻は0.5回、無断欠席は2回の欠席として換算。
・レポートの未提出者には単位は出ません。

教科書

阪口功地球環境ガバナンスとレジームの発展プロセス国際書院2006
ガレス・ポーターほか入門地球環境政治有斐閣1998
信夫隆司編地球環境レジームの形成と発展国際書院2000
亀山康子地球環境政策昭和堂2003
初学者は、『入門地球環境政治』を事前に読んでおくことが望ましい。
余裕のある人は、『地球環境政策』と『地球環境レジームの形成と発展』にも手をつけておくこと。

その他

この科目を履修する学生は、「グローバルガバナンス論Ⅰ・Ⅱ」を履修することが望ましい。また、「環境政策論Ⅰ・Ⅱ」の履修も推奨します。なお、3、4年生の参加も大歓迎です。3、4年生については「国際政治Ⅲ・Ⅳ」とあわせて履修すると効果的です。